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想定外
「た……竹殿? これは、一体……」
龍は目の前に広がる光景を前に動揺を隠せないでいるようだ。
「僕はずっと待っていたんです」
俺はそう言いながら、ゆっくりと龍の方を向く。
「この塔に忍び込む隙ができるのを、ずっと、ずーっと待っていた。…今日は、忘れ物を思い出したと言っただけであっさり通してもらえました。これも華の婚約者になったからですね」
「な……え、は……?」
俺は、何が何だか理解できていなさそうな龍の顔に刃を向けて続ける。
「いろいろと事情がありましてね……僕の目的には、あなたの存在が邪魔なんですよ。だから――今ここで、暗殺する」
もちろん、これらは全て事前に用意したセリフ――台本だ。ここで殺せなかったとしても別に問題はないんだが…… もし仮にここで殺せるのなら、その方が好都合でもある。
「死ね」
俺はそう言いながら、超法則『超人』で間合いを詰めようとする。
だが。
(……あれ?)
超法則『超人』は、発動しなかった。




