久々の休息
クシアは現在、森の中で夜営の準備を進めていた。
消滅した都市国家を後にしたクシアは、自身の闇の回復具合と月体国が海の向こうにあることを考慮した結果、今日中に月体国に移動することは不可能だと判断した。そこで、近くにあった森の中で一晩過ごしてから次の日の早朝に海を渡り切ってしまおうと考えたのだ。
「早朝になった頃には闇もある程度回復する。そうなりゃ後は超法則『超人』で海を泳いでしまえばいい。……というわけで、カースには夜の見張りをしてもらう」
『アンタの体力を少しでも多く回復させるため、でしょ?』
「あぁ。大仕事の後だし、ぐっすり寝てぇってのもある」
『まぁ私は別にいいけどね。でも見張りって必要なの? こんなところに人が来るとは思えないけれど』
「念のためだ。今、誰かに敵対されると流石に厄介だからな。もし誰か近づいてきたら俺を起こさずに抱えて移動しろよ?」
『あら、逃げてもいいの? 私としてはやっちゃってもいいんだけど?』
「今だけはやめとけ。俺がまともに動けねぇんだから」
『…動きたくない、の間違いでしょ』
「ハハッ違いねぇ」
クシアはケラケラと笑いながら床に汚い布を敷き、その上に寝っ転がる。
「じゃ、そろそろ寝るわ。後は頼んだぜ」
『ハイハイ』
クシアはそう言ったのち、久しぶりに深い睡眠へと入っていった。