監禁は(進藤side)
わんわん泣いた澄は、その内くすんくすんってなって、最後は俺の腕の中でトロトロ、眠くなって膝がカクンってなるので抱っこしてベッドに横たえるとすうっと寝てしまった。
はあ、可愛い…
どうしよ、この可愛いのに振られたら…。
そう思うと居ても立っても居られなくて、とりあえず澄のバッグを冷蔵庫に、靴をベッドの下に隠す。
いざとなったらまた全裸にして、縛って、閉じ込めて、謝り続けよう。多分途中で我慢出来なくてセックスしちゃうけど…
俺は相変わらずクズの思考回路で、澄の頭をそうっと撫でた。
「…好きだ」
「愛してる」
「本当はずっと…」
…その先を俺は言えない。
逃げ続けていた俺が、絶対に言ってはいけない言葉な気がした。
少なくとも、今は。
寝てる間に澄に逃げられないように、澄の手と自分の手をネクタイで縛って寝た。
「おのれ」
澄はまた、変な寝言を言って自分でビクッとなって起きてた。
「…」
目をぱちぱちさせてる。
俺はすぐ起きて、澄の上に覆い被さるようにして腕で閉じ込めた。
「おはよ」
「…おはよ…」
澄はちょっとぼうっとしてる。
「また寝ちゃった…今、夜?何時?」
「五時。…澄、俺、別れないから」
「え?…う、うん」
決死の覚悟でそう言ったら、澄があっさり頷く。
「…許してくれるの?」
とつい聞いてしまって、
「いや!許せ、ないよな。今のなし。あの…」
と慌てて言葉を重ねると、澄が笑って、
「許してやろう」
と言った。
「え!」
「ねえ、これ…なに?手…ネクタイ?」
「あ、これ手錠的な…寝てる間に澄が逃げないように。」
「うえ」
「…なあ、ゆる、許してくれんの?」
「うん」
俺が縋るように澄を見下ろすと、澄は
「…卒業式の呼び出しのこと、覚えててくれたし…」
とポツリと言った。
…そんなことで…。
俺、あの時、しまったって思ったんだよ。
なんで告白なんて考えるんだよって、心の中でお前を責めたんだ。
ずっと、お前の気持ちを知ってて…付き纏ってたんだ。
「…でも、たまに、泣いちゃうかもだし、怒るかも」
「俺の前だけにして」
俺は迷わずそう言った。
「いくら泣いても怒ってもいいから、全部俺に見せて」
「う、うん…なんか、恥ずかしいな」
澄が顔を赤くして言う。そして、
「ねえ、これ、取っていい?」
と手首の枷を振った。
一瞬、ほんの一瞬だけど、凶暴な欲望に頭を支配されそうになる。
澄をここに縛り付けて、大学にもどこにも行かせないで、毎日俺だけが澄を見て、澄も俺だけを見て、毎日澄を抱く。澄が俺のクズな記憶を消すまで、抱いて抱いて、ぐずぐずに優しくして、俺のことしか考えられなくなるまで、
「進藤…」
澄が呼んでハッとする。
「あ、ごめん」
「今すっごい怖い顔してた」
「マジ?」
じゃあ、やめよう、監禁。
次の日の月曜は全カリだけで、WEB受講ありのやつ。
二人で別のデバイス使って一緒に受けた。
その後、澄を家まで送った。
「…え、ここ?」
「そう」
澄の家は、10年前に亡くなったお祖父さんの家だそうで、下町のような所の、家と家の間に挟まっていた。
…てか、これは、かなり。
「ボロいでしょ」
澄が言う。なんでそんな得意げ?
「…これ、強く蹴ったら壊れんじゃないの?」
「まさか」
澄が行って、鍵を開けて中に入れてくれる。
ドアを開けると目の前に急勾配の階段と、右手にドア。
「散らかってますけど…」
恥ずかしそうに澄が言うけど、そこじゃない。
「澄…うちで同棲しよう」
「なんで!しないよ!」
澄が真っ赤になる。
「だってこんなとこ、危ねーって」
「住めば都って、言うでしょ」
「じゃあ俺がここに住んでいい?」
「だめ」
即答されると、面白くない。
「なんで?」
「親に顔向け出来ない」
と澄が口をとんがらせて言う。親ね…。
「こっちが台所で、ダイニング」
と右手のドアを開けた。
「…土間だ!」
台所が土間。キャンプ用みたいな小さいテーブルと椅子が置いてある。
「嘘でしょ…これ、冬寒いぞ」
「もう寒いんだよー。ここ、おじいちゃん昔、自転車屋さんやってたから、それでなの」
「それでシャッターか…」
外から見ると、ガレージかと思った。
「2階で寝てるの?」
「うん、行く?」
勿論行く。
急勾配の階段を澄が先に登っていく。上は続きで2部屋和室があって、真ん中にコタツが置いてあった。
「おー、おこた」
澄は何やら、慌てて洗濯物を片付けてる。
「どこで寝てんの?」
階段を登る澄のスカートの中が丸見えだったので、押し倒したくなった。
「ここだよ。布団敷いて」
「どこに布団入ってんの?そこの押入れ?」
「うんそう…なんで開けるの?」
押し入れを開けて布団を敷く。
「なに?なんで布団敷くの?」
「抱きたくなった」
「なんでー!?」
逃げようとする澄を捕まえて、抱っこして布団に横たえる。
「だめ!だめ!絶対だめ」
顔を真っ赤にして逃げようとする澄のスカートを捲って、お尻を揉む。
「なんで?」
「だって、だってここ、壁薄いの!」
俺は動きを止める。
「近所の人おじいちゃんの代から知り合いなの!」
「んー…」
したい。
「じゃあ、…声、我慢しような」
と言って、澄の口を塞ぎながらセックスした。
「こんなのあんまりだ…」
と和室の布団の上で全裸でうつ伏せになって泣く、非常に唆る澄の横で、その身体を撫でながら、俺はこれからのことを考える。
家はボロいけど、二人で住むのに広さは十分だな。
当面は通いで我慢するけど、遅くとも年末年始には、澄のご両親に挨拶に行って、どうにか丸め込んで同棲の許可をもぎ取ろう。
澄の両親に同意を貰えれば、うちの親は何とでもなるだろう。
結婚を前提に付き合ってるって言えば、卒業と同時に入籍する根回しにもなる。
変な虫が付かないように、澄が行く飲み会は俺もなるべく顔出そう。
あのデカい害虫のいるサークルはどうするかな。澄は辞めたがらないだろうし、俺が入るか。大舘、しぶとそうだしな。
とりあえず明日、ご近所に挨拶に回ろ。
(別れなきゃ、いいんだぞ)
義姉の魔法の言葉は確かに効いてた。
「…進藤…なに考えてる?」
と澄がヨロヨロと服を掻き集めながら言う。
「ん?澄のこと」
と言って、俺は澄の手元の服を取り上げる。
「ああっ」
「ずっと一緒にいような、澄」
そう言って、俺はまた澄を組み敷いた。
おわり。
いつもいいね、ブクマ、誤脱報告ありがとうございます。




