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幼馴染カップル大好き侍

はじめまして。深夜テンションが暴発したので投稿です。多分一週間に一回のペースです。

 ここは日本の政令指定都市郊外にあるダンジョン『常盤』。宝箱から出るアイテムは安価なものが多いが、比較的モンスターのレベルも低く、初心者のみでパーティを組んでも余裕をもって挑めるダンジョンとして一時期話題となった。現在はダンジョン攻略資格者、通称『探索者』を育成する組織『一輪』の教習所として用いられる場合が多いが、一輪を卒業した後もレベル上げの為に常盤をはじめとした初心者向けダンジョンを訪れる探索者は多い。


 しかし、いついかなる時もアクシデント、予想だにしない事態は起こる。そしてそれはこの初心者向けダンジョンとされている常盤でも


「くそ、ここまでか……」


「しっかりして!もうすぐ出口だから!」


 片足を引きずるように歩く青年と青年の腕を肩に回して庇うように歩く少女。青年は身体のあちこちから血を流し、足元も覚束ない。


「まさか、このダンジョンでゴブリンが徒党を組んで襲ってくるなんて」


「いつもなら多くても五体程度だってのに、なんで今日に限って二十体も一気に出やがったんだ」


 そんな悪態を吐いてみるものの、追ってくるゴブリンの数が減る訳でも無い。二人は歩を止めることなく歩く。


 しかし、彼らの努力も全て無駄となる。


「あいつら……もうここまで!」


「畜生!もう簡易トラップも無いってのに!」


 彼らの後方からゴブリンが群れをなして追ってくる。子供程度の全長しかない体躯に成人男性程の筋力を持つゴブリンだが、その知性は高くない。人間の半分以下、犬や猫と同程度の知能指数のゴブリンが徒党を組むのは多くないとはいえある。しかし、それでも二、三体で組むのがせいぜいであり、二十体となれば原因究明の為に討伐隊が組まれる程である。


 しかし、今の二人にそんなものを待っている余裕はない。ゴブリンは二人を取り囲み、下卑た笑いを浮かべてにじり寄る。


「鹿野、俺が囮になる。だからお前は逃げろ!」


「嫌よ!元はと言えば私が誘ったんだから私が」


「お前を死なせたくないんだ!」


「そんなの私だって同じよ!」


 二人の意見は平行線のままどちらも譲らない。その間にもゴブリンは二人の逃げ道を塞いでいく。もう無理だと二人は寄り添うように抱き合った。


「鹿野、いや穂乃花。俺本当はお前が好きだった。昔も、今もそれは変わらない」


「……やっと言ってくれた。遅いよ……バカ」


「気づいてたのかよ。恥ずいな、俺」


「そんなこと無いよ。私も大好き。これからだってずっと」


「穂乃花……」


 最後故なのだろうか、互いの本心を打ち明け後悔なく逝きたいという願いなのか、二人の間にあった溝はようやく埋める事ができた。しかし、そんなお涙頂戴の三文芝居はゴブリンには理解できるはずもない。しびれを切らしたゴブリンは雄叫びをあげて襲い掛かる。


「穂乃花あああああああああああ!!!」


「圭吾おおおおおおおおおおおお!!!」


 ゴブリンに襲われた者の末路はフィクションでも現実でも無残なものである。男は殺され、女は犯され、その尊厳を踏みにじられる。二人は目を瞑り、最悪の時を覚悟した。


 しかし、いつまで経ってもゴブリンは襲ってこない。いったい何があったのかと目を開けるとそこには一人の男がいた。三度笠を被り、現代日本に似つかわしくない和装をした男は日本刀をゴブリンたちに向けている。


「あ、あなたはいったい?」


 男は二人に一瞥すらしない。しかし男は一息ついて答えた。


「拙者」


「せ、拙者?」


「幼馴染カップル大好き侍」


「「…………」」


 自分を侍とするロールプレイ(ダンジョンでは自分をゲームの主人公として演じる人は一定数いる)なのか『拙者』と呼んでいる上、訳の分からない事を命の危機真っ只中に言われれば絶句もする。助けてもらって悪いが、二人の胸中はまた荒れた。


「あ、あんたいったい何言ってんだ?」


「義によって助太刀いたす」


「いや聞けよ!」


 ふざけた様子の男だが、その戦いは初心者ダンジョンに来るようなレベルではなかった。二人を巻き込まないように大技を繰り出さず、ゴブリンを屠っていく。ものの数十秒で二人を取り囲んでいたゴブリンの群れは全滅した。


「あ……あっという間に……全滅?」


「義は果たした。これにて」


「ま、待ってください!な、何かお礼を!」


「礼はいらん。強いて言えば」


 男は二人を見つめ、慈愛を込めた声音で伝える。


「拙者は願おう。汝らがこれからも、睦まじくある事を」


「俺達が」


「仲睦まじく……」


「「……はい」」


 それを聞くと、男は去っていった。その後、二人は男の情報を入手しようとSNSで探し、その男を見つけた。この国一の探索者であり、多くの探索者のピンチを救ってきた英雄であり、助けた人がカップルだったことからこう呼ばれている。


“カプ厨侍”と。



設定とかアイテムの説明でも

【簡易トラップ】

ダンジョンでドロップしたアイテムを加工したスイッチ一つで起動するトラップ。大抵はスタン効果やフラッシュで目くらましをするなど初心者探索者はお世話になるが、上級者になる時には倉庫の肥やしになる。

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