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彼我師 ~藍編~  作者: 貴浪
黒よりいでし藍
12/26

黒よりいでし藍 八

 帰って来た珠黄を見て、白玄は何も言わなかった。

 戸口に立つ道生と七星に、

「すまなかったな。埋め合わせは今度させてもらおう」

 と、静かに言った。

 道生は小さく頷き、七星を促して大人しく帰って行った。

 戸が、そっと閉まった。

 身を縮こまらせる珠黄を余所に、白玄は何事もなかったかのように鍋の準備を始めた。土間で鍋に水を入れ、野菜を刻む。

 白藍は、そんな二人を壁にもたれかかり黙って見ている。

 懐から煙管を出すと、白玄が目ざとく見つけた。

「高藍、吸うなら外に出ろ。鍋に匂いが移る」

 肩を竦めた白藍は、仕方ないとばかりに戸口へと向かう。

 そして戸口に手をかけると、ふと思い出したかのように肩越しに振り返って白玄へと言った。

「あんたさ、言いたい事はちゃんと言った方がいいぞ」

 鍋を手に土間から上がろうとしていた白玄は眉をひそめた。

「何が言いたい?」

 白藍は軽い調子で続ける。

「見つけにいかないのは師匠としてのけじめだろうが、見つかって安心したんならその感情を真っすぐ珠黄にぶつけろよ。そいつはまだガキだからさ、ちゃんと感情を表に示してやらないと分からないぜ。あんたから愛されているのかどうかが」

 何か言いかけた白玄に構わず、白藍は外へと出た。

 白藍に出来るのは、こんなことくらいだ。

 壁にもたれて煙管をふかす。

 まだ降り続いている雪が、白藍の肩に舞い降りた。

 しばらくして、珠黄の泣き声が聞こえてきた。

 その合間に、白玄のなだめるような低い声がぼそぼそと響く。

 白藍は小さく笑って空を見上げた。

 どうやら、自分の二の舞にすることは避けられたようである。


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