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The Outsider  作者: 橘樹太郎
第1章:始まりの3年間
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第1章:始まりの3年間 第7話:気を取り直して

前回までのThe Outsider

 スレイは、ジョッシュから誘われて城下町へ遊びに行った。

 休みが終わった後、銃士隊訓練生は再び養成所へと戻ってきた。

 休み明けという事もあり、身体が鈍っている事を視野に入れていた教官達は、基礎訓練から始めるよう決めていた。

 それから基礎訓練が終わった後のこと、スレイ達訓練生に与えられた訓練は、銃の組み立て作業であった。

 今回の教官は、バートンという髭面で強面の男で、クレイグと同じように銃士隊創設時からいて、彼と同等の実力を持っているとされていた。

「ミッシェル、真面目にやれ!」

「は、はい!」

「ベック、部品を落とすな!」

「す、すみません!」

 案の定、バートンの訓練は他の教官と同じで厳しく、スレイも叱られた。

 それから次の日になり、今度は射撃訓練を行う。そして今度も彼が教官を務める事になっていた。

「これからお前たちには、射撃訓練をしてもらう。決して他に銃口を向けるなよ」

 そう言われて、スレイ達は訓練を始めた。  

 最初は拳銃から始めたが、構え方などにも注意を払っているのか、バートンは一人一人の構えを修正していた。

「構え方によっては、反動で手を痛めたりする可能性がある。十分に注意しろよ」

 構え方について終わった後は実弾射撃を行った。

 テーブルの上に置いてある銃弾が10発まとめられている挿弾子(クリップ)を取って拳銃に装填する。どうやら銃の上から装填するようで、撃鉄やコッキングを引くと排莢口が開く。そこにクリップを差し込み、クリップに付いている弾を装填口に押し込む。押し込み終わったら弾倉を抜いて、後ろのコッキングを再び引くと、排莢口が反動で閉まるという仕組みだ。

「中々入っていかない・・・」

「おい、スレイ!」

 弾を入れるのに手間取るスレイを見兼ねて、バートンが彼の拳銃を取り上げてすぐ装填してから返した。

「戦場では一瞬の遅さが命取りになる、その事を忘れるなよ」

「あ、ありがとうございます!」

 スレイはバートンに頭を下げた。

 その後の実際に射撃訓練をしたが、発砲後の反動に驚く訓練生も多く、的の中心に当たらなかったり、弾が外れたり弾詰まりして撃てなかった人もいた。

「銃は弓と違って、弾を使い回す事はできない。実戦では標的にしっかり狙うんだ」

 バートンがそう教えて訓練は終了した。

 訓練終了後、彼はスレイを呼び止めた。

「スレイ、クレイグから聞いたんだが・・・お前は天星人だったな」

「はい」

すると、バートンは右腹部のホルスターから銃を引き抜く。その銃は先程使用した拳銃とは違う形状だった。

「この銃を知っているか?」

 スレイは見覚えのあるように感じたが思い出せない。

「すみません、分かりません」

「そうか・・・」

「その銃がどうかしたのですか?」

「いや・・・これはある天星人が置いて行った物で、"リボルバーマグナム"と呼ばれていた銃なんだ」

「うーん・・・」

 何故か聞き覚えがあるスレイにとっては、どうでもいいと言える話ではなかった。

「すみません、よく思い出せなくて」

「いや、良いんだ・・・こっちも呼び止めて悪いな」

「いいえ、大丈夫です。もし何か思い出したら教えます」

「ああ、すまない」

 スレイは一礼してから再び歩き出した。

 そして次の日、射撃訓練の内容は拳銃からライフルへと変わる。拳銃とは射程距離が違い、少し重かった。

「ライフルは拳銃よりも数百"メートル"先のものを撃てる。」

スレイはバートンのある言葉に違和感を感じる。それはまるで、"以前の"自分が知っているかのような違和感だった。

 訓練生は続々とライフルでの訓練を始めるが、的の距離は拳銃の時よりも遠くにあるせいか、中々命中しない生徒もいた。

 射撃訓練が終わった後、彼はふと、ジョッシュにある質問をした。

「どうした?」

「この世界でも、距離は"メートル"なのか?」

「ああ・・・それがどうした?」

「いや・・・」

「なんならベックに聞いてみな。あいつ物知りだから」

 スレイはジョッシュに言われた通り、ベックという訓練生の所へ行った。

 彼がその訓練生の元へ来た。彼は眼鏡をかけて本を読んでいた。

「や、やぁ」

スレイが笑顔で手を小さく振って挨拶する。ジョッシュとは打ち解けたものの、中々に人見知りが治らなかったのだ。

「あ、スレイ君。どうしたの?」

「いや、メートル法って"この世界"でもあるんだなって思って」

 自分がこの世界の住民ではないように言うスレイにベックはすぐ答えた。

「この世界では、天星人から得た知識や技術で生きているようなものだから、メートルが伝わるのもそれでじゃないかな」

「確かに・・・」

 そう聞いたスレイは一応納得したようだった。

 スレイがベックに感謝し、帰ろうとすると、急に彼は呼び止めた。

「君も天星人だよね? もし何か思い出したら教えて欲しいな」

 スレイはその言葉を聞き、彼に振り返って彼に頷いた。

 それから何日か後の事、座学でもメートル法や様々な雑学について学ぶ。

 スレイにとって、他の所でも聞いたかのような違和感ばかりがあったが、記憶を取り戻しつつあるのかもしれないと思った。

 それからしばらくして、ある訓練が始まる。その訓練というのは、射撃訓練と変わりないが、撃つ対象が違った。

「今日は実践として射撃訓練を始める。各訓練生は動物を見つけ次第、狩るんだ。そして、仕留めた獲物にはすぐ防腐薬をかけるのを忘れるな。そうしないとすぐ腐るからな」

 バートンの言った通り、訓練生はそれぞれ散開しながら狩りを始める。非情な訓練ではあるものの、訓練生はそれぞれ臨んだ。

 スレイは一人、狩る対象となる動物を探しながら森を歩いていると、一匹の鹿がいた。スレイはすかさず肩に掛けていたライフルを構えるが、何故か標準が合わない。

「〔震えが、止まらない・・・〕」

 彼は標準が鹿にあった場所で撃つが、見事に外してしまい、その銃声を聞いた鹿は逃げてしまった。

 それからしばらくして、訓練生はバートンのいた所へと戻ってきた。

 だが、訓練生で狩りができた者は、ジョッシュやヴィルト、覆面姿の少年など数名だけだった。

 訓練終了後、暗い顔をしていたスレイを見つけて、ジョッシュは声を掛けた。

「おい、大丈夫か?」

「あ、ああ・・・」

「そんな顔してたら大丈夫じゃないだろ、どうした?」

「実は・・・」

 スレイはジョッシュに今日の訓練について話すと、その話を聞いて、彼は少し驚いていた。

「あの時は魔物を撃てたのにどうした!?」

「いや、あの時はジョッシュが襲われそうになっていたから・・・」

「───お前がいた世界で、どんな生活をしていたか分からないが・・・銃士隊になる以上、これは避けて通れない」

「分かっているつもりだけど・・・ジョッシュは、動物を撃つのが嫌じゃないのか?」

「俺の場合好き嫌いって訳じゃないからな・・・ヴィルトは撃つ事が好きかもしれないからあれだけど」

 ジョッシュは少し溜息をついてからスレイに言った。

「・・・生きる為に撃つんだ。嫌かもしれないが、生きている以上、避けられない事だってある。ただ、それに対してどう行動するか決められるのは自分だけだ。そうだろ?」

 彼からそう聴いて、スレイは俯いた顔を上げた。

 それから数日後、もう一度遠征での射撃訓練があった。訓練生は動物を狩る為に散開する。スレイは再び鹿を見つけ、ライフルを構えた。

 ライフルを構えたまでは良いが、手が震える。襲ってくる魔物と違い、うまく標準が合わなかった。

「〔このままだと、前と同じだ・・・〕」

 彼は一度、引き金から指を離し、静かに呼吸してからもう一度狙いをつけた。

 バン、という乾いた発砲音がその場に響き、鹿は倒れた。一発の薬莢が草むらに落ち、銃口からは微かに煙が見えた。

「・・・仕留め(やっ)たか?」

 彼はすかさず仕留めた鹿に近づいた。鹿は首に当たったようで、傷口からは血が出ている。

 彼は倒れた鹿の隣に座り込む。彼にとって、無害な動物の命を自分の手で奪う事は初めてだった。

「おっ、スレイ!」

 後ろから声が聞こえ、彼はが後ろを振り向くと、そこにはシェイルがいた。

「ああ・・・」

 シェイルは彼の近くに倒れている鹿を見つけて言った。

「凄いな、まさか鹿一頭仕留めるなんて」

 しかし、当の本人は俯いたままだったので、シェイルは彼の状態に気づいた。

「・・・あんまり考えな込まない方が良いぜ」

「・・・分かった」

 シェイルは鹿に防腐薬をかけた。

「鹿運ぶの手伝うよ───別にオレの手柄にしたい訳じゃないからな!」

 彼はシェイルと一緒に仕留めた鹿を運んだ。

 それから訓練終了後、訓練生達が仕留めた獲物は馬車で運ばれ、訓練所の食事として出すようだった。勿論、彼の仕留めた鹿も肉として出てくる。

「鹿肉のローストビーフか!」

 食堂の何処かで訓練生が喜ぶように言った。

 彼の席にも鹿肉が置いてあり、それが自分の仕留めた鹿かどうかは分からなかった。

「・・・いただきます」

 彼は静かに手を合わせながら言った。

 最後まで見て頂き、ありがとうございます。

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