第2章:邪竜と黄金色の竜 第14話:焦燥
前回までのThe Outsider
スレイ達が黄昏の神殿にて魔王軍の襲撃に遭った一方で、アストリア王国とクーデリア公国の間で戦争が本格的に始まった。
黄昏の神殿での惨劇から2日が経ち───スレイはベアトリスに看病されていた。
一方的な虐殺となったあの戦いが終わり、鎧の形態が解除された後、スレイは意識を失っていた。
最初はすぐ目覚めるだろうと楽観視していたものの、それからしばらく経っても一向に目覚める気配は無く、ベアトリスも無言になっていった。
ハンスとイシュメラもスレイの事は心配だが、神殿でのベアトリスの呼ばれ方が気になっており、2人はレイラを問い詰めた。
「なぁ、お前は何か知ってるのか?」
「・・・何も?」
レイラは知らない振りをするが、イシュメラは威圧するような目で彼女を見た。
「参りました・・・話すわ」
とうとう心が折れたレイラは、真実を話し始めた。
「ベアトリス様・・・いや、イリステア様は黄金色の竜であり、竜人。そして邪竜ファルヴァウスの娘でもあります」
「いつからそれを?」
「黄昏の神殿へ向かう前の黎明時に」
「なら、どうして黙ってたの?」
「話がややこしくなるし、どう考えても話すタイミングが無かったじゃない!」
「確かに・・・いきなり言われても理解できなかっただろうし、今聞いてもよく解らないわ」
「魔王軍については知っていたのか?」
「いえ、魔王軍は知らない。"昔の残党"かと思ったけど・・・」
「昔の残党?」
「ええ。それは邪竜がエヴォルドを征服した時の事よ───」
レイラは、まだ産まれてもないだろう2人に昔の話をする。邪竜がある天星人を影から操ってエヴォルドを征服したものの、1人の青年と黄金色の竜であるイリステアに阻止されたのだと言うその話は、ある種のおとぎ話として語られていたが、彼等のその後までは描かれていなかった。
「・・・でもこの話には続きがあって、結ばれた2人は名前を変えて生活したのよ」
「なんでわざわざ名前を変える必要があったの?」
「さぁ・・・英雄扱いされて持て囃される事にうんざりしたのか、それとも追っ手とかに警戒していたか・・・真意は分からないけど、ひっそり暮らしたかったのは確かだろうね」
「なら、それと神殿での事がどう繋がる?」
「それが分からないから困るの・・・イリス様が"転生してあの姿になって前の世界から来た"って言うのも───」
「───待て、今前の世界から来たと言ったか?」
ハンスが特定の言葉に反応し、2人は彼の方を不思議そうに見た。
「どうしたの?」
「イシュメラ、彼なんかおかしくない・・・?」
レイラの言う通り、ハンスの眼光はさらに鋭くなり、まるで狼のように彼は歯を食いしばった。
それはまるで、怒りや憎しみを感じている様子で、彼は拳を強く握りしめていた。
「どうしたの・・・?」
いつもの無愛想で苛々しているだけの雰囲気とは違うと感じ取ったイシュメラが恐る恐る声をかけるが、彼は葛藤しているかのように苦しい表情を見せた。
「〔───クソっ・・・天星人・・・アイツらを・・・〕」
そんな時、ベアトリスが部屋から出て来て、3人は彼女に反応した。
彼女の表情は焦燥を通り越して絶望したように青白くなっており、とても責められる状態では無かった。
「ハンス、やめて───」
イシュメラが宥めようとするが、ハンスは無言でベアトリスの前に立ち、怒りや憎しみを抑えながら静かな声で言った。
「───おい、お前とスレイは天星人なのか?」
ハンスからそう言われ、ベアトリスは静かに首を縦に頷く。しかし彼はまだ彼女の前に立ち塞がった。
───2人の間には一触即発の気配が漂っており、イシュメラは再び宥めようと声をかけようとするが、ハンスはベアトリスに背を向けて外へと出て行った。
「ちょっと───! あぁ、もう・・・ベアトリスちゃん大丈夫・・・?」
外に出て行ったハンスよりもベアトリスを優先させたイシュメラを補う様に、レイラは外に出て行こうとした。
「何処行くの?」
「ハンスの所に。貴女はイリス様をお願いします」
「あっ、待っ・・・」
イシュメラは俯いているベアトリスに対して、気まずさを感じていた・・・彼女はどう話すべきか悩みながらも口を開いた。
「・・・ベアトリス、貴女のせいじゃないのよ? だから気に病む必要は───」
「───分からない」
「えっ?」
「───分からないんです・・・私のせいなのは分かっている・・・でも、実感が湧かない・・・」
「実感?」
「はい・・・私はレイラさんに、自分の正体について聞きました。そして、全てを知った・・・でもそれは私の勘違いでした。実際、狙われているのが私だけなら大人しく自分の身を引き渡せば───」
「───いいえ、それは違うわ」
ベアトリスの言葉を遮り、イシュメラは彼女に話した。
「貴女を引き渡しても、アイツ等は私達を殺していた」
「・・・どうしてそう思うのですか?」
「だって、貴女を捕らえるだけなのに、あそこまで貴女に酷い事をするって事は、結局のところ生きて帰す保証は無かったって事よ」
ベアトリスはその言葉を聞いて再び俯いた。
「しかもね、貴女達2人にハンスを放っておけないのよ」
「えっ───?」
「私にもよく解らないけど・・・まぁ、これも運命かもね」
「・・・それ、答えになって無いです」
雑な答えとなってしまったが、ベアトリスの表情には穏やかな笑顔が戻っており、イシュメラは心の中で安堵していた。
一方その頃───ハンスは、オアシスにある木の幹に背中を付けて座っていた。
そんな彼の元にレイラがやって来て、彼女は恐れもせずに声を掛けた。
「どう? その木陰で休むのは?」
彼女の声を聞いて、彼は舌打ちする。1人でいたかった所を邪魔されたからだろうか。
「舌打ちは嫌だなぁ・・・吸血鬼だって傷つくよ?」
「・・・何しに来た?」
「何って・・・察して欲しいなぁ」
「謝らせに来たのか?」
「うんまぁ・・・近いかも」
無言になるハンスに対して、レイラは気になる事を訊いた。
「───何で、天星人が憎いの?」
「・・・お前に言う必要は無い」
「私に言わなくて良いけど、貴方がその態度をイリス様に取り続ける容赦しない」
「・・・まるで信者だな」
「私の事は何とでも言えばいい───でも、イリス様とスレイ君かイシュメラには本当の事を言った方が良い」
レイラもハンスとは反対の木の幹に背中を合わせて座り、話を始めた。
「───私ね、元々はこの大陸の出身じゃなくて別の大陸の出身だったんだよ」
「・・・何処のだ?」
「"エブア大陸"───"ユーレンシア大陸"の近くにある大陸の出身よ?」
「───馬鹿にしてるのか?」
ハンスからの答えを待っていたかのように、レイラは笑った。
「それを言うって事は、貴方ユーレンシアの出身ね?」
「嵌められたか・・・」
「別に嵌めてないわ。貴方がそう思ってるだけ」
「・・・で、何が言いたい?」
「───私ね、元々は王女だったんだ。弟もいて小国ながらも安泰だったけど・・・ある奴が家族を殺して私を吸血鬼にしたせいでそこからは人生滅茶苦茶になって・・・自殺しようと人生奪ったそいつを道連れにして太陽に当たったけど・・・何故か私は灰にならなかった」
「───それに同情して慰めてくれと言うなら見当違いだ」
「そうじゃなくて、貴方が天星人と言う言葉を聞いて怒りを感じていたのは、誰か身内が殺されたからじゃないの?」
「・・・俺に家族はいない」
「なら差別意識でもあったの?」
それを肯定するようにハンスが「ああ」と言って頷くと、レイラは呆れて立ち上がった。
「見損なった・・・そこまで話にならないとは思わなかったよ」
「お前には差別意識が無いとでも?」
「何とでも言いなよ」
しかし、呆れたような態度を取っても、レイラは彼を怪しんでいた。
「〔やはり本心を言わない・・・ハンス、別に貴方の本心はどうでも良いけど、イリス様やあの子達を理不尽な目に遭わせるのだけはやめてね〕」
───彼女が立ち去った後、ハンスは帽子で表情を隠しながら歯を食いしばって地面の砂を強く握り締めた。
───雨の中、地には何十、何百もの死体が転がり落ちている。雨は服や刃についた血と混じって流れ落ちた。
血の落ちる先には大事な人達・・・両手には誰のか分からないほどの血が溢れていた。
───鎧があれば、洗血の鎧甲があれば護れる───何処からともなく誘惑が聞こえた。
───それからスレイが目覚め、彼は辺りを見渡す。そこがレイラの家なのはすぐに判ったものの、彼は安心できずに服を着て荷物をまとめた。
部屋から出て来たスレイを見て、家内にいたベアトリスとイシュメラは唖然とした表情で彼を見た。
「スレイ・・・? 目覚めたのね、良かった・・・身体は大丈───」
イシュメラが気遣おうとするが、彼は目の前の2人を見なかった事にして家から足早に出て行った。
胸騒ぎ───何故か胸騒ぎがする。自分の友人達が危険な目に遭っているのではないか・・・彼は謎の焦燥感に駆られていた。
あの夢が現実で起きるとは限らないものの、生々しく感じていた。
「〔戻らなきゃ・・・〕」
そんなスレイを呼び止めるように、イシュメラは彼のところへ駆け寄って肩に触れるが───
「俺に触るな!!」
突然の怒鳴り声にビクッと驚くイシュメラ。それもその筈、神殿を出てからしばらく意識を失っていた間に人が変わった様だった。
「えっと・・・落ち着いて。何があったの?」
「・・・知り合いが危険な目に遭ってるかもしれない・・・だから俺がこの力で・・・」
スレイが両手を見ると、その手は籠手に変化しており、それはイシュメラにも見えていた。
「〔見てない内に変化を・・・!?〕」
しかし、変化しているのは手だけでは無い・・・薄らと鎧が見えており、スレイの瞳は禍々しい程に赤くなっていた。
異様な雰囲気を察したイシュメラは、身の危険を感じてゆっくりと後退りをするが、スレイは危害を加えたい訳では無いのか、先を急いでいた。
少しずつ鎧が彼の身に装着されそうになるが、そんな時に"ある者"が立ち塞がった。
そう、ハンスだ。彼は獣になりつつあるスレイに動じず、その前に立ち塞がった。
「───邪魔をするなら無駄な事だ」
いつもの敬語は無くなり、高慢な言動になるスレイを見て、ハンスは哀れみを感じながらも力に溺れる様に呆れた。
「・・・粋がる程、力を付けたってか? 悪いがそれは鎧の力だ」
「何とでも言え、俺はこの力で───」
「───あの嬢ちゃんはどうする?」
ハンスにそう言われて、スレイは悩む様に俯きかけるが、すぐに顔を彼に向けた。
「貴方とイシュメラさんが守れば良い───でも、この力があれば誰でも護れる」
完全に自惚れてしまったスレイにハンスは「おい」と言って再び顔を向かせた後───頬を殴った。
強い衝撃で頬を殴られるものの、スレイはすぐに立ち直った。
「───やめてください、傷つけるつもりはない」
「───良い加減にしろ」
スレイの胸倉を掴み、ハンスは彼に憎しみの目を向けた。
「正直、お前達が天星人だと聞いて殺したくなった。特にお前だ、スレイ。今のお前は"あの屑"と一緒だ」
「なんとでも言えば良い、俺はこの力で大事な人達を───」
「自分の身すらまともに護れない奴が、他人を護れると思うな!!」
ハンスが怒鳴りながら言った言葉に、その場にいた2人は動揺するものの、スレイは俯きながら口を開いた。
「俺は・・・自分の事なんてどうでもいい。他の人さえ無事で幸せなら───」
「───やめてください」
スレイの言葉を遮ったのはベアトリスだった。彼女は他の3人が気付かない内にこちらへと来ていたようだ。
「・・・スレイさん、私はジョッシュさんやレーヴァさん達も大事ですが、貴方も大事な人です。だから、自分をどうでもいいと思わないでください───」
そう言って、ベアトリスはその場で泣き崩れ、それを見たハンスはスレイの胸倉から手を離した。
「ベアトリス・・・」
解放されたスレイは、呆然とした心境でその場に座り込み、彼の近くにはイシュメラが寄った。
「スレイ、私を見なさい」
スレイがイシュメラの顔を見ると、彼女は話を始めた。
「───どうしても行きたいのなら行きなさい、そこは貴方の意志を尊重するわ。ただ、自分をどうでも良く思うのはやめなさい・・・貴方を大切に想う人があそこにいるのだから・・・」
2人は泣いているベアトリスに視点を移した後、話をした。
「俺は・・・俺は───」
上手く話せない───口を開いて声を出したいのに、何かを言えば目から零れ落ちそうになる───しかし、それでも彼は重い口を開いた。
「───俺は、前世に大事な人がいた。でも、何もしてあげられなかった・・・最後まで・・・ずっと───」
「そうだったのね・・・」
「───この世界でも、大事な人を失いたくない・・・怖い・・・自分が生きてて良いのか不安になる程に───」
涙が溢れる・・・抑えたいけど抑えられない───しかし、そんな彼を彼女は抱き寄せた。
「───気が済むまで泣きなさい。貴方の辛さを理解する事は出来ないかもしれないけど、知る事は出来るから・・・もし辛かったら誰かを頼ってもいいのよ?」
───自分が情けないと思いながらも、子供の様に泣く。声が擦り切れる程に、彼は哭いた───
その後、4人はレイラの家に戻る。彼女は何処に行ったのか分からないが、とにかく先程の光景は見られずに済んだようだ。
スレイも普通に戻ったが・・・彼は恥ずかしさと気まずさに襲われていた。
「あ、あの・・・」
気弱そうな声の彼に、イシュメラは満遍の笑みで反応した。
「なあに?」
「・・・服、濡れてませんか?」
「えっ? ああ、別に慣れてるわ。貴方が鼻水を垂らしてもね」
そう言われて彼は恥ずかしさで表情を隠し、イシュメラは口を隠して笑った。
しかし、彼女はスレイを見て安心と疑問を感じていた。
「〔鎧が装着されなくて安心したけど・・・スレイ君は眠っている間に何かを見たのかしら? 今思うと公国もどうなっているか───〕」
「───イシュメラさん?」
スレイから声を掛けられ、イシュメラは少し取り乱す様に反応した。
「どうしたんですか?」
「いえいえ、ちょっと考え事をね」
2人がそんなやり取りをしている一方で、ベアトリスはハンスに感謝した。
「あの・・・ハンスさん」
「・・・何だ」
「・・・慰めて頂き、ありがとうございます」
「慰めた覚えはない・・・」
ハンスの真意は分からないものの、ベアトリスはその言葉に無邪気そうな笑顔で返す。しかし、そんな彼女を見て、彼は驚愕した表情を浮かべた。
「・・・ハンスさん?」
「・・・あ、ああ。どうした?」
「急に驚いた表情をしていたので、どうしたのかなと・・・」
「"お前の事じゃない"、気にするな」
「は、はい・・・」
意味深な言葉を言われるものの、ベアトリスは彼の言う通りに気にしなかった。
「あの・・・」
そんな2人の間にスレイが気まずそうに入り、両者から見られた。
「スレイさん、どうかしたんですか?」
「いや、実は・・・」
そう言って彼は2人に頭を下げて謝った。
「さっきはすみません・・・もう少しで傷付けるところだった・・・」
そう言われて、ベアトリスは驚くものの、ハンスは舌打ちもせず、帽子を深く抑えた。
「・・・もう過ぎた事だ、気にはしてない」
「私も、スレイさんが大丈夫そうで良かったです」
2人の言葉に、彼は嬉しそうに頭を下げた。
「ありがとうございます・・・」
そんな中、レイラが家に帰って来た。
「あら、皆さんお揃いで。スレイ君もう大丈夫?」
「はい、もう大丈夫です!」
「威勢が良くなったね、スレイ君。"イリス様"は?」
スレイは、"イリス様"という呼び方に疑問を示した。
「レイラさん、なぜその名を?」
「あっ・・・」
それもその筈、スレイはその名を聞いた事がある・・・しかもそれは、この世界へ降り立つ直前に聞いた名前と同じだった。
「ベアトリス、君は・・・」
スレイがベアトリスに視点を移すと、彼女は表情を曇らせた。
「すみません・・・自分にも分からないのですが───」
彼女がそう言いかけるものの、レイラが静止した。
「ちょっと待って」
「何で止めるんですか?」
「スレイ君、悪いんだけど貴方達に会いたい"お客さん"が居てね。だから後にして」
そう言われてしまい、スレイはやむを得ず指示に従った。
5人が外に出ると、そこにいたのは、傘帽子を被った白い婦人服の剣士だった。
「あなたは・・・」
剣士は傘帽子を外し、素顔を見せる。その素顔は、黒い長髪の和風な女性だった。
「───また会ったな、銃使いの兵士よ。私は"カルラ"、お前"達"に会わせたい人がいる」
カルラという女性は凛々しくそう言い、4人はそれぞれ疑問を示した。
「"達"って、この4人ですか?」
「いや、お前とそこのお前だけだ。そっちの2人は付いて来ても構わん」
彼女が会わせたい人物はスレイとイシュメラに用があるのか、2人は顔を合わせてお互いに疑問を示した。
「ちょっと待って、私とスレイに会わせたい人って?」
「付いて来れば分かる」
そう言ってカルラは傘帽子を被って案内しようとするが、ハンスが声を掛けて彼女の足を止めた。
「なぁ、お前は信用できる人間なのか?」
「ああ、私に付いて来ればな」
「お前が敵じゃないという保証は?」
そう言われて、カルラは溜め息を吐いた後、4人の方を再び振り向いた。
「───その2人に会わせたい人物の名は"モルドレッド"。かつて、クーデリア公国にいた騎士だ」
ハンス以外の3人はそれぞれ反応を示す。スレイとベアトリスは疑問を示し、イシュメラは驚きの声を出して取り乱した後、見抜かれそうな平静さを装った。
変な声を出したイシュメラを他の人が凝視する。それもその筈、彼女は明らかにその人物を知ってるかのような驚き方だった。
「なぁ・・・」
「な、なあに?」
「お前・・・何か隠してないか?」
「べ、別に?」
「嘘つくな」
「べっ、別に良いでしょ・・・」
ハンスから問い詰められているイシュメラは窮地に陥るが、カルラがその間に口を割った。
「とにかく私に付いて来い。話はそれからだ」
同行を淡々と催促され、ハンスは問い詰めるのをやめるが、彼はイシュメラを鋭い眼光で睨んだ。
一行はカルラに同行するが、レイラは付いて行かない事にした。
「えっ、レイラさんどうして・・・」
「私は、砂漠が好きだからね」
彼女はそう言い、一行は無理矢理納得して別れの挨拶を告げた。
「では、レイラさん───」
ベアトリスはレイラに抱きつき、抱きつかれた本人は予想外の行為に動揺していた。
「えっ、ええっ・・・!?」
抱きつかれたあまり、レイラはスレイ達を見るが、ハンス以外の2人はそれぞれ祝う様に反応した。
「短い間ですが、ありがとうございました」
「───私も、会えて良かったです。では、イリス様。お気を付けて」
そう言ってレイラもベアトリスを抱き返した。
その後、一行はレイラに見送られて砂漠を後にし、森へと戻って行った。
砂漠から森へと戻ってきたスレイ達。久々の自然地帯に一行は何故か安心感を抱く。森にも魔物はいるが、もう暑さに悩む事は無いだろう。
歩いていく中、スレイはベアトリスが何故"イリス"と呼ばれているか訊こうとしていたが、彼女の辛そうな表情が頭に浮かんで言い出す事が出来なかった。
ハンスはイシュメラの隠し事を怪しむ程に睨んでおり、彼女はそんな彼からの熱い視線に肝を冷やしていた。
そんな一行をカルラは先導しており、彼女はそんな後ろの状況など、どうでもよく思っていた。
そして歩く事数刻置き───ある拓けた場所に着く。そこには大きなテントと焚き火跡があり、そこが誰かの野営地だと言うのは容易に想像できた。
「ほら、連れて来たぞ」
カルラがそう言うと、テントからはのっそりと大柄の男が出てきた。
赤い模様が入った黒い鎧に、ボサボサで肩まで掛かった少しボサボサした黒髪、そして髭を蓄えた強面の顔───初対面で見た人からはやさぐれた印象を覚えるが、彼がまさしく自分の知っている人物だと、イシュメラは感じていた。
「よぉ、イシュメラ───いや、"イザベラ"」
遅くなり申し訳ありません、少しでも見て頂けたら嬉しいです。




