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The Outsider  作者: 橘樹太郎
第2章:邪竜と黄金色の竜
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第2章:邪竜と黄金色の竜 第9話:共闘

前回までのThe Outsider

 スレイとベアトリスの旅に謎の風来坊、ハンスも合流して雷撃の魔女と対峙するが・・・

 暗闇で彼女は目覚め、目の前にいる"それ"と向き合う。大きい姿で、翼の生えた四足歩行の生き物で、黄金色に光る(はだ)を持つ(ドラゴン)だった。

 その(ドラゴン)は後ろ足で立つと、彼女を翼で包み込んで、自身の内側へと入れた。

 それは彼女を見つめるだけで何もせず、暗闇の中で光らせる紅い瞳は、まるで───

 その夢を見て目覚めたベアトリスは、周りの風景を見る。何処かの部屋にいて、彼女自身は綺麗に整えられたベッドで眠っていたようだった。

 部屋はクローゼットや机などといった家具が置かれており、部屋の隅にはスレイがいた。

「スレイ・・・さん?」

 彼女がそう訊くと、スレイはゆっくりと頭を上げてから気付いた。

「ベアトリス・・・?」

 彼は驚くように目を見開くと、彼女に近づいて抱きしめた。

 急に抱きしめられて彼女は困惑するが、彼の涙声を聴いて、彼女は納得した。

 彼女自身、意識を失う直前に何があったのか憶えていない。ただ知っている事は、前も同じような出来事があったような気がするという感覚だった。

 そんな2人の前に『コホン』と咳払いをする人物が現れ、ベアトリスはその人物に驚いた。

「貴女は・・・」

 ベアトリスの前に現れたのは"雷撃の魔女"と呼ばれる女性で、彼女は敵の筈だった。

「・・・ごめんなさい、お邪魔しちゃった?」

 彼女にそれを指摘されると、2人は抱き合うのをやめて、お互い顔を背けながら恥ずかしそうにした。

「ごめん・・・」

「いえ・・・大丈夫です」

「ほーんと、2人は鈍感なのね。スレイ君、ちゃんとその()のエスコート、お願いね」

 2人は彼女から案内されてダイニングルームへと向かい、そこで経緯(いきさつ)を話した。

 しかし、ベアトリス自身も身に覚えがないようで、光魔法のアロウを出した直後の事は完全に分からなかった。

「〔あの時、俺が見たベアトリス(彼女)は・・・〕」

 スレイにとって、あの時見た彼女の顔が脳裏に焼き付いており、それについて考え込んでいた。

 取り憑かれているのか、それとも彼女自身が持っている能力が無意識の内に発動したのか───それが彼にとってよく分からなかった。

 考え込む彼をよそに、イシュメラはテーブルに料理を置いた。

 彼女は2人に微笑みながら『朝食よ』と言って置いたものは、パンとオムレツにベーコンとサラダだった。

「私の手作りよ、毒は入ってないから」

 彼女はそう言い、2人は驚くように沈黙していた。

 その一方で、ハンスは家の前で座っていた。

 胡座をかいてメタルクラブ(自身の武器)を肩に乗せる彼を見て、ある人物はそれを茶化した。

「私の家に用心棒はいらないんだけどなぁ・・・」

 彼の横から顔を出したのはイシュメラで、彼女に気づくや否や舌打ちをした。

「朝食よ、風来坊さん」

「・・・お前が信用ならん」

「ふふっ、まだ信用ならないの?」

 そんな事を言われて、少し黙った後に口を開いた。

「・・・お前は何者なんだ?」

「何者って・・・魔女よ、それも雷撃の魔女。そう言う貴方は?」

 逆に訊かれて彼が黙り込むと、彼女は質問を変えた。

「なら、どうしてあの子達に付いて行くの?」

「アイツらと一緒に襲撃されたからな、俺も命を狙われてる」

「それでも、言っちゃ悪いけど彼等はまだ素人よ。それも駆け出しのね。そんな彼等に付いて行くのは、貴方にとってお荷物になるのでは?」

 その言葉を言った後、彼女は再び微笑んで言った。

「実は寂しいんでしょ、今まで孤独(ひとり)で旅をしてきたから」

「馬鹿なのか?」

 彼女から変に指摘されて、彼は苛立った声を出した。

「冗談よ。でも───貴方も私も同じようなするの」

「どうしてそう思う?」

「私にも言い難い"秘密"があるから───かな?」

 そう言われて彼は呆れた表情をした。

「あ、朝食冷まるからすぐ来てね」

 彼女はハンスに片目でウインクして家に戻っていった。

 家に戻り、スレイとベアトリスは朝食を食べており、そんな2人をイシュメラは笑顔で見ていた。

「・・・どうしたんですか?」

「2人共可愛くてね、そんなにお腹空いてたんだね」

 それを彼女から言われて、2人は照れるように赤面する。そんな所にハンスが来た。

「あら、来てくれたのね」

 イシュメラはそう言ったが、彼は無言で睨みながら座った。

「ふふっ、怖い表情(かお)しちゃってね。そんな表情(かお)してると料理が不味くなるわよ?」

 信用できないと睨む彼と、あまり動じない彼女の間に火花が散って見えたスレイとベアトリスは、少し気まずそうになっていた。

 ハンスが食事を終え、彼等は今後の話をしていた。

 スレイはイシュメラに旅の目的を話してはいるものの、彼女は苦笑いしていた。

「・・・ごめん、もう一回言ってくれない?」

「あっ、えっと・・・」

 案の定、彼女は何を言っているのか分からず、彼は説明に戸惑っていると、思わぬ人物が口を開いた。

「───この坊主の言ってる事は無茶苦茶だが、本当らしい。俺達はトハの村でスケアクロウ(案山子野郎)と戦った」

スケアクロウ(案山子野郎)・・・確かに"普通なら"村に魔物は出ない筈ね」

「あと、スケアクロウ(アイツ)は誰かにコイツらを殺すよう命じられたらしい。何でかは知らんが」

 ハンスがそう言うと、イシュメラは相槌を打った後に笑みを浮かべた。

「ふーん・・・面白そうじゃない。私も暇だったし、貴方達の冒険を手伝ってあげようかな」

 彼女からそう言われて、3人は驚きの表情を見せた。

「待て、お前も付いてくる気か?」

「まぁそうなるわね」

「お前は信用できない」

「だったら冒険(たび)の中で信用を勝ち取るわ」

 再び一触即発の事態に陥るが、ベアトリスがハンスに対して耳打ちした。

「イシュメラさんが仲間になってくれれば、この先で物理耐性を持つ敵が現れても苦戦しないと思います・・・」

 そう言われて、彼は睨むように彼女を見るが、本意で睨んだ訳じゃないのかすぐに表情を変えた。

「・・・・・運が良かったな」

 彼は溜め息を吐きながら、信用できない魔女へと言い放った。

「やった、貴方達の仲間として信用してもらえるよう頑張るわ、宜しくね」

 雷撃の魔女としての異名を持つイシュメラが仲間になり、スレイ達は4人で行動することになった。

 彼等が次に向かう目的地(ところ)は、大陸の砂漠地帯にある"黄昏の神殿"という建物で、これは手帳が次に指し示した文章から割り出した結果でそうなった。

 手帳の件はハンスやイシュメラに話したものの、2人は完全に理解できないような表情をしていた。

 それもその筈、手帳のページへ勝手に文字が浮かび上がる事自体、魔法が存在する世界でも不思議なようで、イシュメラは特に興味を持っていた。

「その手帳───何かが取り憑いているのか、それとも魔法的な作用で動いているのか不思議ね・・・」

 そうは言うものの、実際に浮かび上がったところを見た事がない彼女の中には不審な気持ちがあった。

「〔スレイ君(この子)、その手帳で目的を決めてるなんてハッキリしないわ。一体その手帳には何が───〕」

 そう思うものの、急に考えづらくなった彼女は途中で考えるのをやめる。どうして考えづらくなったのか彼女自身も不思議に思ったものの、結局分からずじまいだった。

 目的地へ向かおうとするスレイに対して、ベアトリスがどうやって向かうか訊くと、彼は悩むような表情をする。イシュメラはそんな彼にある提案をした。

「このまま歩くと時間が掛かるから・・・"トラベルサークル"を利用して最寄りの所まで転移(テレポート)してもらいましょう」

 トラベルサークルとは、転移用の魔法陣の事で、これを利用する事により、別の魔法陣へ瞬間移動する事が可能───つまり、最短で"黄昏の神殿"へと向かえる唯一の手段だった。

 外に出た4人は、トラベルサークルの上に立つ。転移魔法の詠唱はイシュメラが行っており、彼女は大陸の各地にあるトラベルサークルが記された巻物(スクロール)を持っていた。

 無言の詠唱が続く中、4人が立っている魔法陣の縁が光り始めた。

 詠唱が終わると同時に、魔法陣が完全に眩い光に包まれた後、その場には誰もいなくなっていた。

 スレイが目を開くと、そこはどこかの洞窟で、周りには他の3人がいた。

「やった、成功よ」

 安心はするものの、外の状況が気になった一同はすぐに外へ出た。

 外に出ると空から眩しい光が4人を出迎える。辺りには木々があり、そこは林の中だった。

 彼らが歩き始めようとしたその時、ハンスは途中で立ち止まった。

「どうしましたか?」

 ベアトリスが訊くと、彼は何かを探すように視界を動かし、そのまま走り出した。

「ちょっと、どうしたの!?」

「ハンスさん!」

 彼が急に走り出した事に3人は、驚きながらもその後を追う。そして、彼は途中で立ち止まってその場で隠れた。

 他の人が訊こうとすると、彼は『静かに』というように、手に拳を作って少し上げた。

 それでも不思議そうにするスレイだったが、目の前で声が微かに聴こえる。その声はどうやら戦っているような声だった。

 近くの木陰に隠れて向こうの光景を見ると、どうやら冒険者の一行が魔物と戦っており、一行に死傷者は出ていないものの、数の多さから苦戦しているようだった。

 このまま見過ごす事も可能だったが、スレイはそれが出来ずに助ける事にした。

「・・・助けよう」

「なら、指示お願い」

「えっ?」

 唐突にイシュメラが指示を仰ぎ、彼は唖然とした。

「えっ、ってなるのは分かるけど、貴方がリーダーっぽいから任せるわ」

 それを言われて戸惑いを見せる彼は、ハンスを視界に捉えるものの、彼は帽子を抑えながら言った。

「・・・俺もお前に雇われた身だからな。指示はお前に任せるが、好きにしていいなら好きにやらせてもらう」

 大人2人から指示を仰がれて更に困るが、その隣にいたベアトリスは彼の背中に触れた。

「スレイさんは自信を持って大丈夫です、もし何かあれば私達がフォローするので」

 彼女からもそう言われて、彼は深く深呼吸して覚悟を決めた。

「ハンスさんとベアトリスは前線で冒険者さん達と一緒に戦い、イシュメラさんは空から援護をお願いします」

 彼がそう指示すると、3人はそれに従って行動を始める。ハンスとベアトリスは斜面を下って冒険者達に合流し、イシュメラは箒に跨って彼等の上に飛んだ。

 指示をした当の本人はその場でライフルを構えて魔物を撃つ。卑怯な戦法だと彼は思いつつも、戦略の内だと強引に解釈してその役割に徹した。

 対象に照準を定めて引き金を引く───銃弾は次々と魔物に命中し、残りの魔物はイシュメラや冒険者の魔法や、ハンス達の攻撃で倒されていった。

 そしてしばらく経ち、その場にいた魔物が全滅したところで、スレイは坂を下って仲間と合流した。

 イシュメラは彼より既に降りてきたようで、彼女が助けた冒険者のリーダーを話していると思ったが、そうではなかった。

 彼女はスレイ達4人の中で一番社交的だと思ったのだが、何故かよそよそしくしており、何やら気まずそうな雰囲気だった。

 スレイが冒険者のリーダーに話しかけようとした瞬間、彼はその顔を見て驚愕し、腰に備えた剣を引き抜こうとした。

 その冒険者のリーダー、それは───クーデリア公国の騎士で、リデア王女救出の際に立ち塞がった男、ガレストルだった。

 スレイは睨みつけるように臨戦体制を取り、ガレストルは腰の剣を抜かずに彼を見つめるだけだった。

 2人以外の人達は、彼等の間にある因縁を知らない為か困惑しており、それぞれに話しかけた。

「ガレストルさん、あんたこの子と何かあったのか?」

「ああ、ちょっとな・・・」

「スレイさん、大丈夫ですか・・・?」

「あっ・・・」

 そんな気まずい状況に対して、ガレストルはスレイに付いてくるよう言い、彼は素直に従った。

 2人が話を聞かれないように遠くへ行くと、残りの者達はそれぞれ話を始める。ハンスはイシュメラの不審な様子に対して詰問した。

「なぁ、お前・・・さっきの態度はなんだ」

「さ、さぁ・・・私そんな態度取ってた?」

 とぼけるように誤魔化す彼女に対し、苛立ちを見せるハンスを、ベアトリスが宥めた。

「ハンスさん、怒っちゃダメです・・・」

 彼女からそう言われて、彼は葛藤を見せながらも詰問するのを諦めた。

「・・・もし、変な動きを見せたら只では済まないと思え」

 そう言って彼は機嫌悪く立ち去り、イシュメラは安堵の溜め息を吐いた。

「・・・ありがとね、ベアトリスちゃん」

「大丈夫ですよ、ただ───」

 ベアトリスも気になっていたものの、あまり言うべきではないと思ったのか、訊くのをやめた。

 一方で、スレイとガレストルはその場に倒れていた丸太に座って話をしていた。

「───私はもう騎士(ナイト)ではないんだ」

 スレイはその言葉に驚いた反応を見せるものの、彼はそれでも無言を貫いていた。

「まだ、信用ならないようだな・・・無理もない」

 ガレストルからそう言われて、スレイはやっと口を開いた。

「・・・貴方はあの任務に対して、疑問を(いだ)かなかったのですか?」

「・・・勿論、(いだ)いていたさ」

「ならどうして・・・」

「命令は絶対だからな、君も王に仕えている身なら分かる筈だ」

 それを言われてしまい、納得してしまったスレイは、その言葉に反論する事が出来なかった。

「───君に何故その命令が降ったのか教えよう」

 ガレストルはそう言って、クーデリア公国での現状を交えながら事の経緯(いきさつ)を話した。

 今から一ヶ月前───クーデリア公国では、大公による演説が行われようとしていた。

 公国では貴族主義が強く、貴族制度によって人生が決まるようなものである為、どれだけ実力があろうと、出自が平民なら騎士止まりであった。

 代々続いてきたこの政策に対し、現大公であるラモンは憂い、長く続いていたこの制度を撤廃する事に決定。周りから反対こそはあったものの、ガレストル達平民達からの支持や、ギルバート侯爵などの彼と同じく考えている一部の貴族の後押しもあってか、宣言まで踏み込む事ができた。

 ようやく貴族主義が終わろうとしていたその頃───鳴り響いた一発の乾いた音と共に、大公が壇上にて倒れた。

 彼が倒れた直後、辺りは騒然となり、その場にいたガレストルとギルバートはすぐに倒れた大公に駆け寄ると、彼の胸部に銃創があった。

 ガレストルはその時、建物の上でローブ姿の人物が去っていく姿を目撃する。すぐさま他の者にも伝えて追いかけたようだが、懸命な追跡は水の泡となってしまった。

 その後、ラモン大公の傷は治癒したものの、当たりどころが心臓に近かった事からなのか、彼はそのまま寝たきり状態になってしまった。

 大公が意識不明の重体となり、国内では平民と貴族での対立がより一層強くなり、銃を使用しているアストリア王国へ使者を送り込んだ。

 大公暗殺の凶器に使われた銃は回収できなかったものの、代わりに彼から摘出された弾丸からアストリア王国の関与が浮上し、犯人捕縛の為に協力要請をしたのだが、その時送った使者は無惨な姿で送り返された。

 その使者の腹部には張り紙がナイフと共に刺さっており、その貼り紙に書かれていた事は見た者にとって悍ましく感じるものだった。

『我々の国へ近づくなら、コイツと同じようにしてやる』

 最初は一部の人間がやったものだと疑ってはいたが、国内の治安も悪くなっていた事により、アストリア王国内に主犯がいるとして調査を始めた。

「───その時に決まった任務が、"アストリア王女の誘拐"だ」

「なんでそんな事を・・・」

「貴族達は王国ぐるみでやっていると思い込んでいるようで、もし我々がやらなければ、"ディガン騎士団"に任せると言われてな・・・」

「その騎士団に任せるのはダメなんですか?」

「ああ。その騎士団は懲罰者で構成されていて、こういう任務には最適だが、もし彼等が王女を確保した場合・・・何をするか分からない」

 スレイはその単語を聞いて、ゾッとするように心を震わせた。

「・・・でも、俺は貴方達も信じられない」

「それでいい」

 ガレストルはそう言って立ち上がると、彼に手を差し伸べた。

「・・・君達の協力には感謝する、何かお返しがしたい」

「そんな、俺たちは・・・」

 スレイはそう言われて悩むものの、『考えさせてほしい』とだけ言ってその手を取った。

 2人が話を終えて仲間の元へ帰ると、それぞれ互いに自己紹介は終えていたようで、彼等は改めて紹介してもらった。

 パーティの前衛、囮役として守る重騎士(アーマーナイト)のブラン。髭を生やしており、何処となくバートンに似ていた。

 斥候や後方での援護を担当する陽気そうな弓使いのデレク、ヒーラー担当のシスターであるメイア、魔導士の少女アンナと槍使いの少年ゴードンは姉弟で冒険者をしていた。

 自己紹介が終わり、スレイ達はガレストル達に案内されて近くの町に来る。しかし、イシュメラはこの町に見覚えがあるような目で町を見ていた。

「ここは・・・」

「イシュメラさん、心当たりでも?」

「ここは"カイゼル町"と言って、公国随一の技術者であるカイゼル伯爵が治めていた領地よ」

「よくご存じですね」

 ガレストルからそう言われて、イシュメラは少し焦りを見せた。

「あはは・・・ありがとうございます」

 そんな彼女に対して、ハンス以外の人達は不思議そうにしていた。

 ガレストル側の冒険者達とは別れ、スレイ達は彼の家へと招待されたが、ハンスとイシュメラは彼の誘いを断って宿屋で泊まることにした。

 スレイとベアトリスが彼の家に入ると、彼の妹が出迎えてくれた。

「兄さんおかえりなさい───あら、その子達は?」

「ただいま、"エイミー"。この子達は、さっき助けて貰ったスレイ君とミス・ベアトリスだ」

 2人はエイミーに頭を下げて挨拶すると、彼女は笑顔で挨拶を返してくれた。

 彼女が夕食の準備をしている中、彼等は雑談に花を咲かせようとしていた。

「ガレストルさんはエイミーさんと2人暮らしなんですね」

「ふふっ、兄さんが料理すると火事なっちゃうから」

「エイミー・・・」

「あっ、ごめんなさーい」

「お恥ずかしい話、私は家事が苦手でな・・・」

 それを聞いてスレイも共感する。彼も自分1人で家事ができるか怪しいところだった。

「そういえば君達の関係は?」

 スレイがどう言おうか迷っていると、先にベアトリスが口を開いた。

「───私はスレイさん(この方)に救われて以来、恩返ししようと一緒に行動しています」

「そうなのか、スレイ君?」

「は、はい・・・」

 ベアトリスのしっかりとした答え方に驚いて動揺していたスレイは、ガレストルから確認されても自信なさそうに答えていた。

 料理が完成し、4人は夕食を食べながら会話していた。

「そう言えば、君達の仲間の1人の・・・」

「どなたですか?」

「魔導士の格好をした綺麗な女性についてなんだが───」

「兄さんがそんな事訊こうとするなんて意外ね」

「違う違う、勘違いしないでほしいんだがあの女性・・・何処かで見たような気がするんだ」

「ガレストルさんが?」

「ああ、私がまだ騎士になって間もない頃なんだが───」

 ガレストルが過去の話を始める。どうやらイシュメラに似たような少女が過去にいたようで、彼女は大公の娘の"イザベラ"という名前だった。

「───多分、私の勘違いだったかもな」

「もぅ、兄さんったら」

 そんな話をしているうちに料理を食べ終え、そのままくつろいでいると、誰かが玄関扉を叩いた。

 ガレストルが扉を開くと、そこにはデレクがいて、彼は焦るように事情を話した。

「やべぇよ旦那、そこの人の"連れ"と"フェン"が酒場の外で喧嘩し始めたんだよ!!」

 それを聞いて一同は驚き、スレイとガレストルがその酒場へ行く事にした。

 酒場の前へ辿り着くと、そこにはハンスと拳法服を着た青年が殴り合いをしており、イシュメラは腕を組みながら呆れて見ていた。

「イシュメラさん、何が・・・」

「さぁ・・・ハンス(あの人)は知らないけど、もう1人は酔っ払ってるわ」

「ガレストルさん、フェンさんって一体・・・」

「ああ、彼はある冒険者の一行に属していてな。彼らは何処に───」

「他はめんどくさいから関わらないだけだよ」

 2人が振り向くと、そこに居たのは黄色いレインコートのような服を着た不気味な仮面の人物で、少年とも少女ともとれる中世的な声で話していた。

「君は?」

「ボクは"ラオネ"、よろしくね───ちなみに、"ザンガ"と"アレヌア"も『ほっとけ』って」

「それでいいのか・・・」

 彼等はそのまま喧嘩を見届ける事にしたが、その2人の殴り合いは荒々しくも見応えあるもので、武闘会を観ているような感覚だった。

 本当に酔っ払っているのか分からない程にしばらく殴り合っているが、最後は相打ちで勝負が決まって、彼等はその場に倒れた。

 それから次の日になり、町の冒険者ギルドにて話があるようで、ガレストルからの誘いもあってか、スレイ達も参加した。

 建物の中には冒険者が既に集まっており、その中にはガレストル率いる冒険者一行の他にフェンやラオネの他に着物を着た侍の男と赤髪のエルフの少女がいた。

 ガレストルが侍の男にスレイ達を紹介し、男も自己紹介をした。

「俺の名は"ザンガ"、フェンが世話になったようだな」

 『世話になった』という単語にフェンはビクッと静かに驚く。どうやら彼もザンガには頭が上がらないようだった。

 ザンガに続いて、他の3人も挨拶をしていった。

 フェンは格闘士で、一行(いっこう)の中では前衛を担当し、ラオネは暗殺者(アサシン)のようで、情報収集を得意とし、アレヌアは弓使いで、斥候を担当しているようだった。

 ザンガ達の自己紹介が終わると、フェンがハンスに向けて言った。

「アンタ、昨日はありがとよ。珍しく骨のある奴と戦えてよかったぜ」

 しかし、彼はその感謝に対して鼻であしらった。

「つれねぇなぁ・・・」

 お手上げだと両手を軽く上げているフェンをよそに、ザンガはスレイ達に話しかけた。

「俺の仲間はこんなもんだ。曲者(くせもの)ばかりだが、よろしくな」

 彼からそう言われたものの、スレイ達もそんな感じなので彼等も人のことが言えなかった。

 冒険者達がそれぞれ話をしている中、1人のギルド職員が静かにするよう指示を出し、周りが話を聞く態勢になったと同時に彼は話を始めた。

「皆さん集まったようなので、これから依頼の話をします。では、会議室の方まで来てください」

 そう言われてスレイ達が付いて行き、会議室に入ると、依頼についての話が始まった。

 彼等が依頼された事、それは───"町外れにある洞窟と、それを守る野営地の制圧"だった。

 遅れてしまい申し訳ありません。

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