第1章:始まりの3年間 第11話:青春とダンス
前回までのThe Outsider
スレイ達は2泊3日の野戦訓練を終え、帰って来た矢先にバートンからの指示で王都へ向かった。
スレイ達は、バートンから言われた事に驚きながらも、荷物を持って王国へと向かっていた。
「なぁ・・・」
ジョッシュが他の四人に語りかける。その表情は面倒を押し付けられて嫌がっているような表情だ。
「俺たちの成績が良いとして、何で王国銃士隊と競わなくちゃいけないんだよ・・・」
「"練習試合"みたいなものじゃないかな」
「練習試合?」
彼は、スレイの言った事が分からず首を傾げた。
「多分、スレイは合同演習って言いたいんじゃないか?」
「あっ、そういうことか」
シェイルがスレイをフォローしたおかげで、彼は理解できた。
そして馬車は跳ね橋を通過し城門前に着く。荷台の中からでも門が開く音が聴こえた。
馬車が城の領内に入り、五人は馬車から降りると、外にはクレイグが待っていた。
「皆、野戦訓練ご苦労だった。訓練所で聞いている通り、これから数日間は王都に滞在してもらう」
クレイグの話で彼等は、少し驚いて騒つく。王国銃士隊と競い合う他に、王都で滞在する事になるとは誰も思わなかっただろう。
城の扉が開かれてスレイ達が通過する。エントランスにはスレイにとって見覚えのある人物が立っていた。
「貴殿等を心より歓迎します」
彼等を出迎えたのはアストリア王国の宰相であるトラヴィスで、彼は一礼した後に、スレイと一瞬目を合わせると穏やかに微笑んだ。
スレイがトラヴィス以外の方を見渡す。彼の左右には執事やメイドといった使用人や衛兵がいて、相当な手厚い歓迎だった。
「ではこちらにどうぞ、陛下が会いたがっています」
トラヴィスにそう言われて、スレイ達は彼等に付いて行った。
スレイ達はトラヴィス達に案内されて玉座の間へと着く。中に入ると、中央の玉座には王様が座っており、左隣には女王様が座っていた。
「国王陛下、銃士隊候補生の中でも特に優秀な部隊を連れて来ました」
トラヴィスがそう言って王様が頷く。スレイ達は横一列に並び、王様や女王様に跪いて一礼した。
「この度はお城にご招待頂き、光栄です」
左端にいたジョッシュが王様に感謝の言葉を述べる。王様の目の前にいたスレイは緊張のあまり、心臓の鼓動が早まっていて、心の中でこの状態から早く解かれるよう、彼は祈るしか無かった。
「〔こんな時、あの声が聴こえればな・・・〕」
野戦訓練の時以降、あの女性の声は聴こえなくなってしまった。
スレイに何か警告をしようとした矢先に途絶え、それ以降は全く音沙汰がない。最初は驚いたものの、その声に励まされ、この世界でも生きていけるような自信も貰った。
もし、直接会って姿を見る事になったら感謝したいな───と彼はふと思っていた。
王様への謁見が終了し、五人は玉座の間から退出する。天星人としてこの世界に来たスレイも王様に会うのはこれが初めてだった。
彼等は気疲れした様子でトラヴィス達に付いて行った。
トラヴィスに案内されて着いた先は、王国の客間だった。
「こちらが貴殿等が泊まる部屋になります」
トラヴィスは手で扉の先を示しながら言う。縦に奥行きがあるその部屋は綺麗に清掃されており、横一列には毛布などが整えられたベッドが置いてある。
「お気に召しましたか?」
トラヴィスの言葉にスレイ達は溢れ出る喜びを隠しながら感謝した。
「くれぐれも粗相が無いようにな」
トラヴィス達が離れる際に、クレイグが五人に釘を刺すように言い、彼等は敬礼して意志を示した。
大人達が出て行った後、スレイ達は自分達が泊まる部屋を見渡す。ジョッシュは自分のだと定めたベッドに座った。
それは窓際で、城外を見渡せる最高の位置だったが、一人は不満を露わにした。
「ジョッシュだけズルいぞ!」
「おいおい、早い者勝ちだぜ?」
再び言い合うジョッシュとシェイルにヴィルトは呆れながらも扉近くのベッドに目を配る。しかし、そのベッドにはディミトリが座っていた。
「こりゃあ、参ったな」
ヴィルトは止むを得ず、ディミトリの隣にあるベッドで寝ることにした。
五人は自分が寝るベッドを定め終わる。中々決められず最後に残ったスレイは、ジョッシュとシェイルの間のベッドで寝ることに決まった。
「ご愁傷様」
ヴィルトに肩を叩かれながら言われ、彼は落胆する。二人が嫌いなわけではなくても、野戦訓練の時に聞いたいびきと寝相の悪さで地獄を味わったばかりだ。
「はぁ・・・」
彼は諦めにも近い溜息を吐きながら、自分の荷物を整理し始めた。
それから数刻置いて───王国の使用人がスレイ達の所へ訪れる。どうやら城の中を少しだけ案内してくれるようだった。
スレイ達は使用人から城の要所要所を案内して貰う。浴場にトイレ、食堂や談話室まで見せて貰った。
スレイが特に驚いたのは、この世界に風呂場やトイレがあるという事だった。
風呂場は王族所有のものだから当たり前だとは言え、この世界にトイレまであるとは思わなかった。これも他の天星人が授けた知識なのだろうか───と彼は思いながら前の世界について考えていた。
前の世界───それは現在とは違う景色だった。
無機質な長方形の建物が並び、道路と呼ばれるコンクリート状の道には、自動車という馬を使わない乗り物が何台も走っていた。
道の両側には様々な人が歩き、それぞれ何処かへと向かう。スレイになる前は道行く人々の一人で、銃士隊のような行動的な現場職ではなく座り仕事だった。
「〔今思うと、きつい銃士隊よりなら、前みたいな座り仕事の方が良かったのかな〕」
スレイは一瞬そう思ったが、来た頃に仕事を選ぶ余裕が無かったことや、いつでも辞める事ができた筈なのに辞めなかった事もあってか、すぐに心の中で見方を変えた。
「〔こんな体験もありかな〕」
それから昼になり、スレイ達は城の食堂で昼食を食べていた。
食堂内は清楚で、煌びやかさとは程遠い殺風景だった。それでも出てくる料理は豪華そのもので、村や城下町では滅多に食べないような物ばかりだった。
「ローストビーフ盗むなよ」
「はいはい」
ジョッシュがヴィルトに向かって釘を刺すように言う。スレイはその光景を不思議そうに見ながらもシェイルと料理の話をしていた。
ディミトリは素顔を晒すまいとマスクの下に食べ物を入れている。城は厳重な警備が敷かれているとはいえ、彼が素顔を隠すままでここに居れるのは、クレイグさんが話を通したからだろうか、とスレイは思った。
食事を済ませた後、ディミトリを除いた四人は浴場へ入る。彼はトイレに行ったのか、部屋にはいなかった。
浴場に着いた四人はタオルを腰に巻いて体を洗い流す。その時、風呂に入っていたジョッシュがある事を言った。
「なぁ、ディミトリってどうして素顔・・・ってか素肌をあんまり晒さないんだ?」
スレイはその言葉に身を震わせる。この些細な一言に動揺した彼は、誤魔化そうか本当の事を言うべきか迷っている───その時だった。
「王国銃士隊ってどんな奴らなんだろうな」
ヴィルトが何気なく話題をすり替える。ジョッシュも気になっていたのかそれに対して頷き、ディミトリについての言及はやめた。
彼がディミトリについて知っているのかは分からないが、スレイはひとまず安心した。
「銃士隊が設立してからあまり日が経たないうちに設立したって聞いた事があるな」
「銃士隊と王国銃士隊って何が違うんだよ?」
「銃士隊はヴァートレスの村が委託されて設立された部隊で、王国銃士隊は王族専用の親衛隊の一部隊ってことだな」
ジョッシュから解説を受けて、シェイルは『へぇー』と納得したように言った。
それから少しして、浴場から出た四人は寝室へと戻ってそれぞれ眠っていた。
そんな中、他の人がいないことを確認したディミトリは浴場へと向かった。
それから日が昇り、スレイ達は起きる。ディミトリも戻ってきており、彼等は身支度を済ませて食堂に向かった。
食事を済ませた後、クレイグから付いて来るよう命じられた。
五人が付いて行った先は、王城にある闘技場で、見覚えのある人物とライフルを肩にかけた同年代ぐらいの五人がいた。
「ディランさんか!」
「ジョッシュ、それに他の人も元気にしてたか?」
スレイ達は久々にディランと会う。しかし、ライフルを持った五人はそんな彼等を歓迎していないようだった。
「あの人達は?」
「見るからに"王国銃士隊"だろう・・・」
彼等は銃士隊と似ている格好だが、騎士の籠手や騎士の兜などと言った、所々上品な部分があった。
彼等は不審者を威嚇する犬のようにスレイ達を睨みつけている。相当歓迎されていないようで、睨んでいる五人のうち、リーダーらしき少年がこちらに声を上げた。
「貴様らより我々が優れていると証明してやる!」
声高らかに啖呵を切るが、スレイ達は恨みを買った覚えはない、と言うように困って呆れた表情をしていた。
「こいつら・・・!」
「アルバート、よせ」
血気盛んになっている五人組をディランが咎めて静止する。流石の彼等も彼の事は尊敬しているのか、すぐ指示に従った。
「まるで犬だな」
ジョッシュが嘲笑しなが呟いて、一触即発の事態になりかけるが、クレイグの鉄拳制裁が彼の頭上に当たり、そのまま座り込んで痛みに悶絶する。それをスレイとシェイルが心配して駆け寄った。
「では、我々はここで」
「では、数時間後に会おう」
ディラン率いる五人の若者がその場から立ち去っていく。その時、ジョッシュに向かって彼等が仕返しのように嘲笑した。
挨拶が終わってから、ジョッシュは不貞腐れていた。
「自業自得だ」
「だってよ親父、アイツらに敵対心向けられてるんだぜ?まるで見下されてる気分だ」
「向こうも同じだろうさ」
クレイグの言葉に疑問を示すジョッシュだが、頭の痛みを和らげる方が最優先だったせいか、詳しくは訊かなかった。
それから数時間経って、王都にある闘技場に着く。そこは、王国での武闘会や大規模な戦闘訓練をする為に使用されている場所だった。
スレイ達が到着すると、王国銃士隊の面々が待っていた。
彼等は敵意を剥き出しにするように睨みつけている。それに対してジョッシュやシェイルも睨み返していた。
睨み合っていた途中で、両者はクレイグから話かけられる。流石に、王国銃士隊の方も分かっていたのか、睨むのを止めてクレイグの方を振り向いた。
「これから、銃士隊候補生達による合同訓練を始める。内容は両部隊があそこに見える建屋を制限時間以内に攻略できるかどうかを見定める」
そう言ってクレイグは闘技場の中央にある建屋を指す。建築物としては3階建てで、宿屋のような造形だった。
その後、それぞれ建物の中に入り、内部を確認した。
内部は更に宿屋の造形を感じ造りで、1階には管理人室や食堂、風呂場の3部屋、2階、3階には客間として6部屋が配置されていた。
「合同訓練本番までに5日ある。それまでに攻略できるようにしろ」
クレイグから最後にそう言われたが、スレイ達は「余裕ではないか」と腹を括っていた。
それから5日間、スレイ達とアルバート達で交互に訓練を始める。建物の構造を理解できればすぐにでも攻略できそうな感覚を一同は覚えるが、本当にこれだけなのかとスレイは感じていた。
「あのさ」
「どうした?」
スレイが近くにいたシェイルに話しかけた。
「訓練って本当にこれだけなのかな・・・」
「どうしたんだよ急に」
「建物自体は入り組んでないし、狙うのも的だけなら、どっちの部隊も簡単に攻略することができるんじゃないか、と思って」
「まぁ、確かにそうだけど・・・」
シェイルは彼に同調しようとしたが、途中で我に返り自分の思った事を口にした。
「ほら、攻略にかかった時間と部隊の連携でも見るんじゃないか? それで得点付けるとか」
「あっ、確かに・・・」
スレイはシェイルから言われたことに納得すると、笑いながら彼の肩を叩いてこう言った。
「スレイ、最近自信でもついてきたんじゃないか?」
「えっ?」
「だって、さっきの会話聴いてるとこの訓練が物足りない感じに聞こえるぞ?」
「そうかなぁ・・・」
スレイは謎の胸騒ぎを覚えながらも、一旦その気持ちを抑えることにした。
そして次の日、本番前日にスレイとジョッシュはレーヴァと出会う。彼女は城に用事があったようだった。
「二人共久しぶりね」
「ああ、お前の方は?」
「いつもと変わらずよ」
彼女はそう言って二人に笑って見せた。
「そういえば今って、王国銃士隊と合同演習してるんでしょ?」
「そうだよ」
何気なく『ふーん』と相槌を打ちながら、彼女はある事について訊いた。
「もしかして、王国銃士隊のリーダーってアルバート"君"でしょ?」
「えっ、お前知ってるのか!?」
二人は彼女が"アルバート"の名を言ったことに驚く。しかも"君付けで言った為か、ジョッシュの方はかなり驚いていた。
「お前アイツとどういう関係なんだ!?」
「アイツとどういう関係って・・・彼はこの王国に住んでからの私の幼馴染よ」
「俺じゃなくてか?」
「ジョッシュもだけど、貴方は村で一緒だったじゃない」
ジョッシュがレーヴァにアルバートとの関係性を問い詰めていると、スレイが思いついたように口を開いた。
「ええと、ならアルバートが俺たち銃士隊を目の敵にしてる理由って・・・」
「あっ、もしかしたらジョッシュの事を"幼馴染"って答えたからかもしれない・・・」
「どういうこと?」
「数日前に『銃士隊の合同訓練がある』ってアルバート君から情報を聞いた時に、彼からジョッシュについて訊かれたから、"村にいた時の幼馴染"って言ったのよ。そうしたら彼、急に不機嫌な顔し始めてね・・・」
「多分それ・・・」
スレイが不思議そうな顔をする彼女に自分が思った事を言うと、彼女は顔を赤くして驚いた。
「えっ、アルバート君が私の事が好きなの!?」
「どういうことだよスレイ!?」
「二人共落ち着いて、俺の推測だから・・・」
二人はスレイに言われて落ち着いた。
「お前阿呆みたいな推測するな・・・」
「ごめん・・・」
そんな彼等のやりとりを遠くから見ていた人物は、拳を握りながら何処かに去っていった。
そして本番当日───演習には国王や女王、大臣の他に、グレートヘルムを被った謎の人物とその隣にいる綺麗な女性も来ていた。
「なぁ、隣の美人さんはともかく、あの不気味なバケツ頭の奴は誰だよ」
「さぁ・・・誰なんだろうね」
スレイとジョッシュが小声でそんな話をしていると、背後にクレイグが迫って2人の頭上を掌で叩いた。
「無駄話をするな」
スレイはすかさず謝ったが、ジョッシュにはバケツ頭の人物が気になっていた。
「親父、王様の隣にいる人は誰なんだよ」
「ああ、彼は"イングベルト"さんだ。王都郊外にある錬金術研究所の所長で、銃や弾の製造や量産などを指揮している」
「てっきり、銃とかはカルヴァンさんが作っているのかと」
「あの人はあの人で別だからな」
彼が話し終えると、王様が立ち上がって場内にいる者達に語りかけた。
「双方共に安全かつ誇り高い演習が見れると期待している」
王様からの挨拶が終わり、演習はスレイ達が先行して行う事となった。装備を整える彼等に、クレイグが5本分のポーションを配った。
「もう給水ですか?」
「もし演習に支障が出たらどうすんだよ?」
「違う、これは一時的に耐久力を上げるポーションだ」
「攻撃してくる相手がいないのに、何でこんなものを・・・」
「後で分かる」
クレイグが不敵な笑みを零し、スレイ達は渋々と飲んだ。
そして、装備を整えた後、演習が開始された───彼等は建物の中に入っていき、2分も経たない内に制圧し、建物の入り口前に集合した。
「楽勝だったな」
そんな事を言っていると、一角にある落とし格子が開き、その奥からは大地を響かせる音が聴こえてくる───まるでその音はこちらに近づいている様に大きくなっていった。
そこから出てきたのは岩石の塊のような物体だった。
首のない大型の何か───それが何なのかはスレイ以外の現地民にはよく分かっていた。
「"ゴーレム"かよ・・・!」
スレイ以外の面々は銃を構え始め、彼もゴーレムという単語を聴いてライフルを構えた。
すると、クレイグがこちらに来て、彼等にある事を伝えた。
「今から行う演習は、魔物との対峙を想定したものとする。弱点は自分達で見つけ、そこを狙えばゴーレムの動きは停止する。制限時間は1時間だ、健闘を期待する」
そう言って彼は去って行き、スレイ達は再び戦闘態勢を取る。それぞれ緊迫した思いを胸に、ゴーレムと対峙していた。
「なぁ、弱点はどこだと思う?」
「訓練の座学だったら魔法が効くって聞いたぞ」
「誰か魔法使える人は?」
スレイは無意識のうちにディミトリを見たが、彼は首を横に振った。
「誰もいなそうだね・・・」
そんなスレイ達を見ながら、クレイグとディランは話をしていた。
「本当にあの説明だけで良かったのか?」
ディランがクレイグに言った。
「ああ、飲んだ者の耐久性を高めるポーションの効果は約1時間、流石にあのゴーレムが攻撃しないよう設定しているはずだが───『もし攻撃した時の為に』とイングベルト所長が俺に渡した」
「なるほど・・・ただ、魔法を習っていない彼らがどう立ち向かうか・・・」
「大丈夫、アイツらならできるさ」
クレイグはニヤリと自信満々に笑った。
一方でスレイ達は手始めに銃で牽制するものの、銃弾はゴーレムの硬い表面に当たって拉げた形となるだけで、あまり効いていなかった。
「やっぱり、岩の塊に銃弾なんて効かねえよな・・・」
「ヴィルト、お前の眼から見て何か良い方法は無いのか?」
「無理だな、岩盤で覆われてる魔物の弱点なんてここから見えるはずがねぇ」
スレイ達がゴーレムについてそうこう話していると、ディミトリがある提案をした。
「僕が囮になって奴に近づく。もし弱点を見つけたらそこを叩こう」
彼からその提案をされて、他の四人は驚くが、ヴィルトは冷静になってジョッシュに言った。
「・・・んで、隊長さんよ。この提案は?」
ジョッシュもヴィルトに話しかけられて我に返った。
「・・・仕方ねぇ、それにしよう。ただ、ディミトリ───気をつけろよ。」
彼はジョッシュに頷いて、スレイから銃剣を借りた。
彼は走ってゴーレムの上に飛び乗る。2本のバヨネットだけで勝てる訳ではない事を彼は分かっていたが、弱点である核さえ発見して露出することが出来れば後はそこを狙うだけで済む───それを信じて彼は自ら囮となる戦法を提案したのだった。
ゴーレムは自身の上にいるディミトリを振り落とそうと動き、彼は岩石の隙間にバヨネットの刃を刺して振り落とされないようにしていた。
「ディミトリが囮になっているうちに弱点を見つけるぞ!」
ジョッシュが他の三人に言って、ヴィルトはライフルにつけていたスコープでゴーレムの体の箇所を細かく見る。ジョッシュ、シェイル、スレイの三人はゴーレムの動きを制限する為に接近して銃を撃った。
「隙間だらけだぜ」
ヴィルトが弱点を発見し、ライフルの引き金を引く。その銃弾はゴーレムの皮膚を構成する岩石同士の隙間に入り、コアを貫いた。
ヴィルトが放った銃弾によってゴーレムの機能は一時停止し、その場で動きを止めた。
ゴーレムに勝利したスレイ達を見て、鑑賞していたクレイグ達は驚き、感嘆を漏らした。
「彼らもやるじゃないか」
「アイツらも色々学んだからな」
クレイグとディランはスレイ達を褒めながら話していた。
スレイ達の部隊が終わった次はアルバート達の部隊が演習する番となる。彼らは最初の建屋をスレイ達よりも容易に攻略していた。
そんな光景を見て、ジョッシュは呆然としていた。
「ま、俺達も侮り過ぎてたって事だ」
「まぁいい、次はゴーレム戦だからな。アイツらも絶対苦労するぞ」
だが、そんな話をしていた矢先に事件は起こった。
アルバートの部隊がゴーレムと戦う時、ゴーレムは真っ先にアルバート達を牽制するように地面を殴りつけた。
その光景を見た一同は騒々しくなる。ジョッシュは、どう見ても自分達が戦ったゴーレムとは様子が一変していると思い、クレイグに訊いた。
「なぁ親父、これも演習の内なのか?」
それを訊かれてクレイグは、首を横に振っていた。
「いや、お前達やアルバート達が戦っているゴーレムに攻撃する制御はされてない筈だ・・・」
スレイ達はそれを聴いて驚く。なら何故ゴーレムは暴走しているのか、完全に訳が分からなかった。
一方で、イングベルトと側近の女性はゴーレムの暴走に対して、対策を取ろうとしていた。
「ゴーレムの緊急停止は?」
「ダメです、詠唱が効きません」
「おかしい・・・何故急に暴走した?」
イングベルトがコートの裏から何かを取り出そうとした瞬間、ある人物が観客席から闘技場内に入っていった。
アルバート達が苦戦する中、闘技場内に入ってきたのはディランであった。
「ディラン隊長!」
アルバート達を守るように彼は槍を構えた。
「〔対ゴーレム用の槍では無いが、アルバート達を逃す時価を稼ぎにはなる筈だ・・・!〕」
槍を強く握り締めながらに彼等に指示した。
「お前達は逃げろ!」
「そんな事・・・」
「これは隊長命令だ!」
ディランがそう言ったが、彼等は彼の両側に付いて、銃を構えた。
「ディラン隊長、申し訳ありませんが我々も残らせてください。でないと王国銃士隊の面目が立たないので」
「・・・仕方ない。ただ、奴の攻撃範囲には入るな」
溜め息をつきながらも、残る事を許可してくれた隊長に感謝をしながらアルバート達は共闘した。
一方で、ジョッシュはクレイグに頼み事をする。それは彼から出ることはないと思われていた言葉だった。
「・・・親父、俺たちも手伝ってきていいか?」
「良いのか?」
クレイグにそう言われてジョッシュは他の四人を見る。一応の承諾はしてくれたようだ。
「良いぜ」
「なら行ってこい。ただ、助けた事で後悔はするなよ」
「何を今更」
ジョッシュは彼の言葉に笑みを浮かべながら、他の四人を連れて闘技場内へと入った。
アルバート達が岩石の巨体に身構えていると、また新たに闘技場に入って行く。それは、アルバート達にとっては驚くべき相手だった。
「貴様らは・・・」
アルバートが入ってきたジョッシュ達に目を丸くした。
「借りは後で返してもらうぜ、坊ちゃん達」
ヴィルトが彼らに横顔だけ見せながら不敵な笑みを作って言った。
自分達が馬鹿にしていた者達から助けられたアルバート達は、目の前に立つ彼らを凝視しながら止まっていた。
「・・・撤退するか?」
ディランが静止しているアルバート達に言うと、アルバートは我に返って、彼に言った。
「いいえ、奴らに遅れを取っては王国銃士隊の恥。それなら共に戦うまで!!」
ディランはアルバートの言葉に頷いた。
「よし、なら行くぞ!」
そして銃士隊と王国銃士隊の共闘が始まった。
銃士隊と王国銃士隊はそれぞれ散会しながら銃で牽制する。そうした方が、ゴーレムの標的が定めにくくなり、攻撃する隙を与えづらいからだ。
ヴィルトが自分達の戦ったゴーレムと同じような弱点だと思い、その箇所を狙う。しかし、そこを狙ってもゴーレムは止まらない。
「隙間が違うようだな」
ディランがヴィルトに言って、彼は納得した。
一方で同じ戦法をしていたディミトリは、背中の隙間に何か光る物を見る。バヨネットで何とかこじ開けようとしたが、不意をつかれて背中から目の前に落ちてしまう。そして彼が立ち上がろうとしたその瞬間だった。
───それは一瞬の出来事で、ディミトリが立ち上がった瞬間、ゴーレムの重い拳が彼に命中し、そのまま壁に吹き飛ばされた。
「ディミトリ!!」
スレイが叫ぶが、壁に当たった衝撃で舞っている砂煙でディミトリの姿が見えない。
「スレイ、悪いけど今はゴーレムに集中しないとこっちがやられる・・・!」
先程の出来事に動揺して呆然と立っているスレイに向かって、シェイルが話しかけると、彼はすぐ我に返って銃を再び構えた。
ゴーレムと戦っている際に、スレイは振り下ろされた攻撃を避け、背後に回り込む。すると、ゴーレムの背中から何か光るようなものが見えた。
「あれか・・・!」
スレイは弱点を攻撃する為にゴーレムの背中によじ登る。そして、背中から見えたコアに拳銃を構え、1発の弾丸を撃ち込んだ。
コアを撃たれたゴーレムは急にその場で停止した。
スレイは背中から滑るように降り、ジョッシュ達と勝利を分かち合う。
「やったな、スレイ!」
「ありがとう・・・」
そんなやり取りをしていると、アルバート達が近づいて来る。彼らの表情は、ジョッシュ達から見たら勝利を分かち合うようには思えなかった。
「どうした?」
ジョッシュが不思議そうに訊いた。
「・・・・・・協力に感謝する」
少し間を開けながらアルバートは感謝をして頭を下げる。それは、自分にある貴族としてのプライドを捨てて、一人の人間としてジョッシュ達に敬意を示した。
「・・・やるじゃん」
アルバート達の行為に思わずジョッシュは呟く。言葉に反応して頭を少し上げて彼を見たアルバートはジョッシュが歯を見せて笑った。
「あっ、そうだ。ディミトリを助けないと・・・」
そう言って彼らは吹き飛ばされたディミトリの元へ向かった。
「やるな、アルバート、それに他の四人も」
「ありがとうございます」
ディランがアルバートの右肩を叩いて労った。
スレイ達がディミトリの元へ向かうと、彼は壁に寄りかかるように座り込んでいた。
「ディミトリ、大丈夫か?」
ジョッシュが話しかけても反応はない。闘技場内には王国の兵士や王国の医療従事者などが入って来た。
王国の兵士がディミトリを担架に乗せる。そして、医師が状態の確認をする為に彼の帽子と口のマスクを外してしまった。
「まさか・・・」
その場が凍りつき、スレイは気まずくなって顔色を悪くした。青い肌にエルフとは違うものの尖っている耳、それは間違いなく魔族のものだとスレイ以外は思った。
「おい、嘘だろ・・・」
訓練を共にしてきた仲間の素顔を初めて見たジョッシュが呆然として言う。その声が聴こえたディミトリが意識を取り戻して目を開くと、視界に映ったのは何故か自分を見て驚く表情ばかりだった。
ディミトリ今の雰囲気を一瞬で察し、自分の肌を触る。覆面は口元から下ろされていて、帽子も取られている───彼は、今にでも発狂しそうな気持ちを抑えながらすぐに立ち上がって、ゴーグルとマスクを回収してすぐ走り去った。
「おい、ディミトリ!!」
ジョッシュ達が叫ぶものの、彼は立ち止まらず全力疾走で走り去る。その光景は闘技場内にいた殆どに目撃されていた。
それから城に戻り───事情を知っていたスレイと、ディミトリの正体を初めて知ったジョッシュ達三人は寝室で話し合っていた。
「ディミトリの素顔、初めて見たな・・・」
ジョッシュは俯きながら言った。
「あの肌、それにあの耳、瞳の色も間違いなく魔族だった・・・」
シェイルがそう呟いた後、あまりにも黙り込んでいるスレイの方を見た。
「スレイ、どうした?顔色悪いぞ?」
シェイルがスレイに言うと、彼は少し驚いたような感じで見返した。ジョッシュやヴィルトも彼の表情が明らかに違って見えた。
「・・・スレイ、お前何か隠してないか?」
「いや、何も・・・」
ヴィルトから疑われてスレイが目を逸らす。しかし、図星を突かれた彼は嫌な汗をかいていた。
「正直に話してくれ・・・話さないとクレイグさんにこの話をしても構わんぞ?」
スレイを睨むように言ったヴィルトを見たジョッシュが、何かを察して黙り込む彼に話しかけた。
「頼む、俺たちにも相当隠しておきたかった事なんだろ?何を聴いた所でお前を突き出したりしないから」
彼はジョッシュから説得されて口を開くことに決める。ディミトリには申し訳ないと思っているが、正体が知られた以上仕方ないと思ったからだ。
スレイは野戦訓練の際にディミトリと二人で話していた時の事を話した。
彼が魔族である事、そんな彼が銃士隊に入った事など───スレイは心の中で自分を責めながら話していた。
スレイの話を聴いて、その場は少しの沈黙を過ごした後にジョッシュが口を開いた。
「・・・そりゃあ、言えねぇよな」
「え・・・?」
スレイはこの事を隠していた事に対して怒らなかったジョッシュに驚き、彼に続いてヴィルトやシェイルも口を開いた。
「脅し損だったか、悪かったな」
「まぁそんな事情があるなら言えないよね」
「聴けて良かったよ、スレイ」
最後にジョッシュから礼を言われて、スレイは『ごめん』と言って頭を下げた。
それから次の日───スレイ達は城にあるバルコニーから外の景色を眺めていた。
普通なら今日がスレイ達の帰る日だったのだが、ディミトリが行方をくらませた事を機に、帰郷は延期されたのだった。
「・・・昨日の一件で、クレイグさんとディランさんの二人が街中でも捜索はしているが、中々見つからないって」
シェイルが景色を見ながら言う。王様はディミトリの正体を秘密にすると約束したようで一安心だが、もし街の人が見かけてしまったら大問題となる可能性があった。
「罪を犯したわけでもねぇのに逃げる事になるなんてな・・・」
ヴィルトの言う通り、魔族という見た目だが、罪を犯した訳では無い。ここまでの偏見が彼を追い詰める事になるとは───スレイは居た堪れない気持ちになった。
「俺たちも手伝わないか?」
「無理だな」
「いつものジョッシュらしくないね」
「いや、俺もディミトリを見つけたいが・・・親父達だけで捜索するようで、俺たちは休んでろ、と」
「どうして?」
「考えてみろ───ディミトリの素顔を知っているのは、親父やディランさんのような銃士隊内でも隊長クラスの人とスレイぐらいだ。俺たちが事情を知ってる状態でも、ディミトリから見たら、敵として認識されるかもしれないんだぞ?」
「そんな・・・」
「俺だって悪く言いたい訳じゃない・・・ただ、今まで隠していた自分の素顔がバレて、しかもその顔が魔族だったら・・・殺されかねんぞ」
「それなら俺たちが捜さなくていい理由には・・・」
「まぁ、親父達なりの気遣いなんだろ」
そんなことを言っているが、ジョッシュは少し震えている。自分だって探したかったのだろうが、それが出来ないことに苛立ちと無力さを覚えていた。
そんな彼等が、消えた仲間に思いを馳せて風景を眺めていると、クレイグが彼等のいるバルコニーに来た。
彼が来た事に気づいたジョッシュは真っ先に話しかけた。
「親父、どうだった?」
しかし、彼は首を横に振った。
「ディミトリは以前行方不明、一応村からも増援を頼んで捜索はしているが、まだ見つかっていない」
「そっか・・・」
彼の言い方でシェイルが呟いた。
「まぁ、王都から出て行ったかもな・・・幸い、素顔を目撃したのは闘技場内にいた人間のみですぐに素顔を隠していたようだから、あまり大ごとにもならなかった」
「それなら、ディミトリが無事に王都から出て行っている事を祈るしかないか・・・」
四人が暗い表情をしていると、クレイグが咳払いをして話した。
「王様からお前達へ言伝を預かっている。」
「どんな言伝ですか?」
「それはな・・・」
彼がスレイ達に言伝を告げると、彼らはその事に対して驚いた。
「俺たちが王国のパーティに?」
「ああ、この月には城内で盛大なパーティがあってな、それに俺たちも招待状を受け取ったって事だ」
しかし、彼等は悩み始める。それもその筈、ディミトリが居ないのに自分達だけ呑気に宴を楽しんでいる訳にもいかないからだ。
「親父、悪いけど俺たちは辞めておこうかと思って───」
「ちなみにレーヴァも招待されたそうだぞ」
「本当か!?」
ジョッシュが辞退することを言いかけたが、レーヴァが招待状を貰ったと彼が言ったためか最後まで言えなかった。
「あちゃー、レーヴァが絡むと結局こうだよ」
「まぁ、コイツらしいな」
シェイルとヴィルトがジョッシュの反応に笑いながら軽口を叩いた。
「まぁ、ディミトリは俺達に任せてお前達はあと数日の城内生活を楽しむといい」
彼がジョッシュの右肩を叩きながらそう言った。
バルコニーから戻ってきたスレイ達は城内の談話室でパーティについて話していた。
「なぁ、パーティって事は美味い料理とかたくさん出るんだよな?」
「可愛い女の子とかもいるかな?」
「おいおい・・・」
ジョッシュとシェイルが何事もなかったかのように平然とパーティの話をし始め、ヴィルトが呆れながら笑った。
そんな時、談話室にある人物が入って来た───その人物は、スレイ達を敵視していた部隊のリーダーであるアルバートだった。
スレイ達はこちらに来たアルバートを無言で見たが、ジョッシュだけは『よっ』と手を挙げて気さくに挨拶する。それを見てスレイ達は緊張を解いた。
「んで、1人でどうした?」
「・・・クレイグ殿から話は聞いている。君達もパーティに参加するのだろう?」
「そうだけど・・・」
「だったら話は早い、クレイグ殿から君達へ「ダンスが出来るように稽古をつけてくれ」と指示を受けてな」
「へー・・・ダンスが出来るように、って」
シェイルが聞いた事をぼんやりと言うと、途中で何かに気付いたように驚いた。
「俺達も踊るのか!?」
「別に踊らなくてもいい───だが、ジョッシュだけでも稽古をつけろとまで言われている」
「クソっ、親父言ったな・・・」
「まぁそんな所だ。俺とお前が好敵手である事に変わりはないが、昨日の礼もある」
ライバルとして勝手に認められたジョッシュとしては複雑な心境だった。
それからというもの、スレイ達四人は社交ダンスをアルバートから学ぶ。彼が募集をかけてくれたおかげで相手となる女性は来て、その人達と組んで踊りの練習をする。ただ、パーティの日まで短い期間だった為か、アルバートはダンスに不慣れな彼等に頭を悩ませていた。
それからパーティ当日───スレイ達は気品のある洋服を着ていた。
彼等の着ている服はアルバートが自身の親に頼んで衣服を注文してもらったので、この行為に対して、スレイ達は彼に頭が上がらなかった。
「すげー・・・これが貴族の服かよ」
「お前が着ると"馬子にも衣装"だな」
「うるせぇ!」
ジョッシュがシェイルをからかっていると、クレイグが部屋の扉を叩いて入って来た。
「準備できたか?」
「出来ました」
クレイグは洋服を着たスレイ達を見て、自信のある笑みを浮かべた。
「お前達、よく似合ってるな」
「当たり前だろ」
その言葉に、ジョッシュが笑みを浮かべて返答した。
スレイ達はクレイグに付いて行って、城の大広間へと辿り着く。椅子に座って受付をしていた衛兵によって扉が開かれると、そこは華やかで豪勢な場所だった。
彼等が初めて見る光景に目を凝らしていると、後ろから更に驚く事が起きた。
「やぁ貴方達」
不慣れな言い方に反応してスレイ達が後ろを振り向くと、そこには青色の華やかなドレスを着たレーヴァがいて、その見た目はまるで一国の王女とも思える雰囲気を醸し出していた。
「どう・・・似合うかな?」
スレイ達はあまりの美しさに沈黙する。何故か幼馴染である筈のジョッシュですらそうなっていた。
「・・・どっちなのよ」
無言になったスレイ達を彼女膨れるように睨むと、それに気付いて我に返った彼等がそれぞれ思い思いの感想を告げる。それを彼女はそれを微笑みながら聴いていた。
そんな話をしていると、アルバートもやって来て、彼等に『やぁ』と左手を挙げて挨拶する。それに対して彼等も挨拶を返して話の輪に入れた。
「パーティはどうだい?」
「最高だ」
アルバートからの質問にジョッシュがそう答えた。
「ただ、料理ってもう食べていいのか?」
「勿論、だが下品な食い方はやめろよ」
「へいへい」
そんな会話をしていると、別の所からアルバートの名前を呼ぶ声が聴こえた。その方向を振り向くと、そこには彼と共に演習をした仲間達がいた。
「おっと、ではこれで失礼するよ。親愛なる諸君に───」
彼は別れの挨拶を途中で中断して、そっと跪いてレーヴァの左手の甲に口づけをする。
スレイ達はそれぞれ驚き、それをされた彼女は右手で口を抑えて驚いていた。
「───麗しきアストリアの騎士」
彼は軽くお辞儀をして去って行った。
「・・・一本取られたな」
ヴィルトは先ほどの光景に呆然としているジョッシュにからかう様な笑みでそう言いながら、軽く肘打ちをした。
それからというもの、王様のスピーチが終わり、舞踏会が始まった。
それぞれペアになって踊るが、スレイ達はただ見ているだけだった。
先ほどの光景を見てからか、ジョッシュが不機嫌そうにしている。
「不貞腐れてるとアルバートにもう一本取られるぞ」
「うるせぇ・・・」
そんな感じでヴィルトが彼を宥めていると、今まで離れていたレーヴァが来る。だがあの出来事があったせいか、彼女はよそよそしかった。
「どうしたの?」
スレイが一応訊いてみた。
「あ、あのねジョッシュ、私と踊らない・・・?」
「アルバートと踊らないのか?」
「だって彼、先客いるし」
不貞腐れているジョッシュがそれを聴いて、少し考えた後に立ち上がる。そして、レーヴァの右手を取って、アルバートがしたようにお辞儀をした。
「では"姫様"、お手を拝借」
「はいはい、私の"騎士"様」
ジョッシュとレーヴァはお互い冗談を言いながら踊りに行った。
残りの三人が二人の踊る場面を見ていると、クレイグが彼らのところに来た。
「どうだ?」
「見た方がいいですよ」
ヴィルトがクレイグに示し、彼はジョッシュとレーヴァが踊っているのを確認する。それを見て、彼は朗らかに笑った。
そんな中、スレイの頭に閃光が走ったような痛みを感じ、自身の視界に違和感を覚えた。
「大丈夫か、スレイ?」
それに気づいたクレイグがスレイを心配した。
「大丈夫です・・・少し、外の空気を吸ってきますね」
彼が席から離れ、ヴィルトやシェイルが疑問に思う。
「あいつ、大丈夫か?」
「慣れない場所だったから疲れたのかな?」
「大丈夫だと良いが・・・」
彼等は心配しながら、部屋から出ていくスレイを見送った。
彼は別の所にあるバルコニーに行き、外の空気を吸う。さっきよりは落ち着いたが、なぜか胸騒ぎがしていた。
そんな時、気を紛らわせようとしたのか、何気なく手帳を取り出して開く。一見、何の変哲も無い手帳のように思えたが、今回は何か違った。
手帳の中にある1ページを開いて見ていると、そのページからは何か文字が浮かび上がり、一つの文章となった。
「邪竜の復活まであと僅か・・・?」
スレイは浮かび上がった文章を疑問に思いながらも、仲間の元へ戻って行った。
次回は来週の予定です。




