3話
身体が光に包まれて消えてから、いったいどれほどの時間がたったのだろうか。
「…んん?」
遠くでぼやぼやと人々の話声が聞こえていたが、それがだんだんとはっきりと近くに聞こえるようになってきた。
そこで私は、完全に目が覚めた。
目を開けてみると、私を心配そうにのぞき込んでいる数人の人間が目に入った。
そして、その人達は私が目を開けると、驚いたように目を見開いた。
「お、お、起きたぞ!!!!」
「あんた大丈夫か!?」
家の奥にも人がいるのだろうか、私が起きたことを知らせる人や私に向かって心配の声を投げかける人。その行動は様々だった。
しかし声をかけてくれているところ申し訳ないのだが、私はそれに反応しているどころではないのだ。
私は、目が覚めてすぐに違和感に気が付いた。
声が出ている。
そのことに気が付いてバッと下を見て私は驚愕した。
自分に人間の腕が付いていて、足もあって、何より服を着ていた。
そう。自分は人間へと変貌しているのだ。
「えっ!?」
状況がよく呑み込めず、私はきっと私に声をかけてくれた人たちが寝かせてくれてであろうベットから声を上げながら飛び起きた。
「「うわあっ!」」
私のその行動に驚いた人が一斉に声を上げた。
「えっ、あ、あんたいきなりどうしたの!?」
そう聞かれても私は大混乱していて、
「え、あ。」
と、情けなく声を漏らすことしかできなかった。
改めて立ってみると、明らかに猫として過ごしていた時の目線の高さとは違っていた。
そして何より、鳴き声以外の声が出せる。
そこまで考えて、やっと私は実感が湧いてきた。
あ、私人間になってるんだ。
そう自覚したはいいものの、なぜこんなことになっているんだと思って、周りを見た。
私がいる部屋には日本にはまずないであろう暖炉や、西洋っぽさがあるランプなどが置いてあった。
そして、私も周りにいる人達の格好も明らかに日本のものではなかった。
あれ、私今これどこにいるんだ?何が起こっているんだ?
そう混乱しながら考えていると、部屋の奥にある扉から人が入ってきた。
その瞬間、私の周りにいた人達はサッと姿勢を正した。
「なんだ、ずいぶん騒がしいじゃないか。」
そう言いながら入ってきたのは貫禄が感じられる、少し強面の老人だった。
その人は、私の周りにいる人達よりも少しだけ綺麗な格好をしているように感じる。
「ジイダさん!実は今、森で倒れていたこちらの黒髪の娘が目を覚ましまして…。」
私のすぐ横に立っていた若い男性は、私を手で示しながらジイダさんと呼ばれた老人にそう報告した。そして、ジイダさんは「ご苦労。」とでもいう様に無言で男性に向かって手を軽く上げ、それに応えるように男性は頭を下げた。
その一連の言動だけでも、ジイダさんがこの中で一番偉い人なのだということは見て取れた。
ジイダさんは私を少しだけ見つめると、口を開いた。
「そこの嬢ちゃんや、あんた体は大丈夫なのかい?」
「あ…、大丈夫…です。」
いきなり話しかけられたことや、見た目と話し方のギャップに戸惑いながらそう答えると、周りにいた人がざわっとした。
ジイダさんも首をひねっている。
「嬢ちゃん、あんたワシらとおんなじ言葉が喋れるようだが、いったいどこから来たんじゃ。」
ジイダさんがそう私に問うと、周りの人も興味津々といった様子でこちらを見た。
そんなまなざしを向けられて、私は若干怖気づいた。
しかし、自分自身なにもわかっていないけれどもういいや、どうにでもなれ、という気持ちが湧いて、私は正直に答えることにした。
「わ、わからないです。」
その言葉を聞いて、ジイダさんも周りの人もぽかんとした表情で固まってしまった。
そして、言葉の意味を消化するまで時間がかかったのか、人々はワンテンポ遅れて、
「「ええええええ!!??」」
と、声を上げた。
これは何かまずいことをしたのか?と思い、ジイダさんを見ると片手で頭を抱えていた。
あ、これはまずいことを言ったっぽい。
ジイダさんを見て、私はそう直感的に感じとった。
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