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夏休み[9]

「....まさかとは思いますが、ラズル様はこの鈍を使う気でいらっしゃるので?」


「別に持っておく分には損も無いし、さっきルルから貰った剣とお前の間位で丁度良い感じの手加減が出来るかもしれないしな」


「ラズル様?!ま、まさかこれの他にも私以外の剣を?!」


「ああ。ただ頑丈なだけの剣だがな。お陰で相手を殺さずに済みそうだ」


「................」


「ル、ルーちゃん?」


ルーちゃんは突然俯きながらプルプルと震え出した。そして......


「うえぇぇぇぇぇん!!ラズル様が私以外の剣を使うなんて絶対に駄目なんだもん!!」


子供の様に号泣し始めた。


もうそこには先程までの厳かな雰囲気など微塵(みじん)も無く、ただただ駄々をこねている子供の様であった。


「あー、やっぱこうなったか....」


ラズルはやれやれといった様子でルーちゃんを(なぐさ)め始め、その光景を魔刀は腰が抜けたまま口をポカーンと開き、ただ唖然(あぜん)として見ていた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ラズルに慰められた事により、


「す、すみません//少し取り乱してしまいました」


「いつもの事だろ?」


(い、いつもこうなのか....?)


「で、でもラズル様がこれを持つ事は断じて許せません!」


「わ、妾も....」


「"黙れ鈍"」


「はい!」


ルーちゃんは魔刀に対し、さっきまで子供の様に泣きじゃくっていたとは思えない程の圧を掛けた。


その圧は凄まじいものであり、何かを言いかけた魔刀の口を封じるのには十分であった。


「そもそもラズル様は最近私を使って下さらないではないですか!」


「見ての通り、最近は平和だからお前を使う機会が無いんだよ」


「例え剣として使って下さらなくても、(たま)にはこうして呼んでくれても良いではありませんか!」


「はぁ...仕方無ぇなぁ....」


「んじゃあ、これからはずっと出っぱなしで良いけど、俺のこの平和な生活だけは壊さないでくれよ?」


「...!分かりました!......良しっ!」


ルーちゃんはこれからはラズルと共に居れると聞いて、鋭い目を見開きながら喜び、ラズルに見えない様にガッツポーズをしていた。


「じゃあこいつ使っても良いな?」


「それとこれとは話が別です」


「何で?!」


その後ラズルとルーちゃんはお互いの意見を言い合い、やがて魔刀は剣では無く、刀だからルーちゃんとも被らないという事で何とかルーちゃんに納得して貰えた。


因みに2人は軽々しく話していたが、魔刀にとっては自分の運命を決めるその会話をビクビクと震えながら聞いており、ルーちゃんが納得し事を泣いて喜んでいた。


「あ、あの...この状況でとても言いにくいのじゃが....」


「何ですか鈍」


「....妾に寿命と名前をくれんかの?」


「貴様っ!ラズル様から寿命を頂こうとは余程斬られたい様だな!」


「まぁまぁルーちゃん落ち着けって、その寿命ってのはどの位なんだ?」


「ご、50年程....」


「何だ、そんだけで良いのか?」


「....え?」


「50年であるぞ?!人間の平均寿命の半分以上は貰う事になるのじゃぞ?!」


「いやだって俺人間じゃねぇし」


「は?え?え?ど、どういう事じゃ?」


ラズルは説明するよりも見せた方が早いと判断し、神力を開放した。


「そう言えば神力を抑えていらしたんですね」


「................」


「どうだ?」


魔刀は主と認めた男の力が突然桁違いになったり、見た目も変わったりと、一気に様々な情報が入って来た事により完全に思考を停止してしまった。


「あぁ...やはりお美しい....」


「俺にとって寿命50年なんて大した事ねぇよ。....まぁそもそも寿命なんて無ぇけどな」


「...ん?待てよ....」


「俺達絵面めっちゃ地味だな?!」


神力を解放したラズルの髪も漆黒に染まった事により、その場にいる全員の髪と目の色が真っ黒という何とも地味な光景であった。


「ラズル様、お揃いですね!」


「止めろ。お前らと一緒にするな」


「何で妾まで?!」


「おい鈍、その言い方だと私は仕方無いみたいに聞こえるのだが?」


「.....はっ!」


「貴様本当に斬るぞ」


「仲が良さそうで何よりだ!」


「誰がこんな鈍と!」


「あ、主殿....そろそろ名前をくれぬか?」


「あ、もうちゃっかり寿命は取ったのか」


「う...うむ」


「うーん、じゃあそうだなぁ....」


「黒い刀だから【夜天丸】(やてんまる)とかどうだ?」


「夜天丸...夜天丸.....今から妾の名前は夜天丸じゃ!」


夜天丸は生まれて初めて名前を貰った事に大きな喜びを感じていた。


「ふんっ!お前の様な鈍がラズル様からお名前を頂けた事に感謝するんだな!」


「はい!」


尚、先程までの事もあり、ルーちゃんと夜天丸の間には完全な上下関係が出来上がっていたのであった。


「宜しくな!()()()()()!」


「......うむ。宜しく頼む」


その呼び方だけはどうにかならないものかと思う夜天丸であった。

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