夏休み[8]
「....ふぇ?」
魔刀は一瞬自分が主と認めた男が何を言っているのか理解出来なかったが、直ぐ様その意味を理解したが気のせいだと判断し、気を取り直して再びラズルへと言葉を掛けた。
「...ごほんっ!妾の力を....」
「はーいよちよち、迷子かな~?お兄さん君のお家知ってるから連れてって上げるね~」
ラズルはそう言って先程破壊されたケースの方へ向かって少女の背中を押し始めた。
「ちょ!止め!押すでない!止めろぉぉぉ!!!」
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全力で元のケースへ戻そうとするラズル対全力で主の命を貰おうとする魔刀の結果は、ひとまず魔刀の粘り勝ちとなった。
「はぁ....いや、本当に力とか要らないから帰ってくんない?」
「ようやく主と認められる者が現れたのにおめおめと帰れる訳無かろう!」
「そもそも主の命を奪うって何?命奪っちゃ意味無いだろ」
「いや?命を貰うと言っても、何も完全に命を奪う訳では無いぞ?寿命をちょこーっとだけ貰うだけじゃ」
「紛らわしい言い方すんな!」
「いやでもラズル、寿命取られるってかなりヤバいんじゃ....」
「うーん、取り敢えず俺こいつと2人?で話があるからお前ら先に店の中に戻っててくれ」
「大丈夫なのかよ?!」
「大丈夫大丈夫。何とかするって」
「....分かりました。必ず..必ず無事で戻って来て下さいね...!」
「止めろ。それ言うと逆に無事じゃ済まなくなるから」
グラウィスとルルは心配そうにラズルに言われた通りに店の中へと入って行った。
「だから命までは取らんぞ?」
「まぁまぁ俺的には最悪寿命どうこうは良いんだよ」
「....でも、多分俺がお前を持つ事を許せない奴が居るんだよ」
「ほぅ....何処の誰だかは知らぬが、そやつにそんな事言える権利があるのかの?」
「それがあるんだよな~。今から呼ぼうか?」
「うむ。妾がそやつにガツン!と言ってやるわ!」
「分かった。ルーちゃん出番ですよ~」
「....ルーちゃん?」
ラズルが【収納箱】から取り出したのは、久し振りのご登場である【破壊神剣デストルクシオン】通称ルーちゃんであった。
「なっ..なななな...何じゃその凄まじい力を放つ剣は?!?!」
「俺の愛剣のルーちゃんだ」
「名前と力が合っとらんわ!」
『おいそこの鈍。ラズル様が付けてくださった私の名前に何か文句でもあるのか?』
そうして現れたのは、神力を解放したラズルと同じ輝かしい漆黒の長い髪を魔刀同様に紐で結び、これまた同じく漆黒の切れ目を持つ厳かな雰囲気を漂わせる女性であった。
しかし、1番目立つのは輝かしい漆黒の髪でも、視線だけで物を切ってしまいそうな程鋭い切れ目でも無く、動く度に大きく揺れる胸部である。
「ここ最近ようやく呼んで頂いたと思えば1分足らずで戻され....久し振りにラズル様に本格的に呼んで頂き喜んで出て来てみれば........」
「ラズル様!誰ですかこの鈍女は?!浮気ですか?!浮気ですね?!」
「どうしてそうなる?!俺はただお前の意見が聞きたくて呼んだだけだって!」
「そんなの決まってるじゃないですか!こんな鈍さっさと破壊しちゃって下さいよ!」
「うーん、最初は俺もそう考えていたんだが....」
「ならばさっさと殺っちゃいましょう!」
ラズルがチラリと魔刀の方を見ると、同じ武器とは思えない程のオーラを放っているルーちゃんを見て完全に腰を抜かしており、涙目になりながら「どうか命だけは勘弁を...!」と、先程までの関係が真逆となっていた。
「まぁ確かに破壊しても問題は無いが、何か勿体無くないか?」
「いいえ!ラズル様には私が居るのですから大丈夫です!」
「答えになってねぇよ....」
「確かにこいつはお前とは比べ物にならないだろうな」
「当然です!こんな鈍に私が劣る筈がありません!」
「いやでも俺最近思ったんだけどさ......」
「ルーちゃん手加減出来ないだろ?」
「................」
「................」
「必要ですか?」
「うん」
「................」
「................」
「まぁとにかくこれは斬っちゃいますね!」
「待て待て待て待て!ねぇ今の俺の話聞いてた?!」
「はい!さっさとこれを斬れば良いんですよね!」
ルーちゃんはさも当然のごとく笑顔でラズルにそう答える。
「うん。ちょっと1回剣専用の耳鼻科行こっか!」
その言葉を聞いたラズルもルーちゃんに笑顔を返したのであった。




