夏休み[5]
「ほらよっ!これが父ちゃんが打った中で1番の剣だ!」
ルルは小さな両手で自分と同じ位の大きさ、約1m程のシンプルな剣を持って来た。
「ほぉ....これが1番の剣か」
「....ああ」
「成る程な....こりゃ確かに良い剣だ。俺に合ってる」
「...ふっ、ははははは!ほら見ろ!お前なんかに武器の何が分か....」
「...但し、お前嘘ついてるだろ」
「....っ!嘘なんかついてねぇ!!」
「いーや嘘だね。これはお前の親父さんが打った剣じゃない」
「............」
「他の親父さんが打った剣と比べて、見た感じ打ちも甘いし、形も目に見えるレベルでは無いが良く見ると少し歪だ」
「............」
「まぁその反応を見る限り恐らくお前の打った剣だろ?」
「ああそうだよ!それは父ちゃんじゃなくて俺が打った中で1番の剣だよ!!」
「切れ味も悪くて無駄に重い、ただ頑丈なだけしか取り柄の無い出来損ないの剣だよ!!」
「俺なんかが打った剣が父ちゃんの打った剣に到底敵わない!!」
「俺なんかが父ちゃんに敵う訳無いんだ!!」
ルルは自分の剣の欠点を見事ラズルに見抜かれ、自分の剣は父親の剣には遠く及ばないという事を改めて認めさせられ、今まで溜まっていたであろう劣等感を全て吐き出した。
「うーん、半分正解で半分不正解ってとこだな」
「....は?」
「確かにお前が打ったこの剣はそこら辺にあるお前の親父さんが打った剣には敵わない。これは正解だ」
「............」
「武器ってのは簡単に言えば相手を殺し易ければ殺し易い程優秀だと言われる。どう使おうとも武器ってのはそもそも相手を殺す為の物だからな。それはお前も分かってるだろう」
「じゃあここで問題」
「....何を言ってんだ?」
「優秀な武器はさっき言った通りだが、優秀な鍛冶屋とは一体何でしょう?」
「....そんなのお前が言う優秀な武器を造れる鍛冶屋に決まってんだろ」
「いや違うな。ただ優秀な武器を造れる奴を優秀な鍛冶屋とは言わない」
「じゃあ何だってんだよ?!」
「その人に合った武器を造れる奴だよ」
「言ってる意味が分かんねぇよ!」
「考えてもみろよ。そもそも鍛冶屋ってのは優秀な武器を造るんじゃなくて、武器を持つ者に合った武器を造るのが仕事だろう」
「どんなに優秀な武器を造れたとしても、使い手がそれを使いこなせなかったら意味が無いだろ?」
「............」
「だから優秀な鍛冶屋ってのはその人に合った武器を造り、その武器に合った人に持たせるんだよ」
「....例えそうだとしても、そんな剣誰に合うってんだよ」
「え?!この会話してて分かんないの?!」
「....へ?」
「馬鹿だねぇ~、流石ガキんちょ!」
ラズルは先程までの真面目な雰囲気をぶち壊し、ルルを煽り始める。
「だからガキって言うな!」
「こんだけお前の鍛冶屋としてのセンスを褒めてるってのに気付いて無かったのか?」
「いつお前が俺の事褒めたんだよ!」
「俺さっき半分正解で半分不正解つってまだ正解しか言って無いけど、あれだけ話したら普通何が不正解分かるだろ....」
「まぁそんな馬鹿なガキんちょに答えを教えてやろう!」
「またガキ扱いしやがって....」
「お前さっき親父さんの打った武器に敵わないって言った後、親父さんにも敵わないって言ったろ?」
「当たり前だろ」
「だーかーら!それが不正解だっつってんだよ」
「???」
「お前は今、俺に合った剣を造り、その剣をこうして俺に持たせてる........」
「ルルは間違い無く優秀な鍛冶屋だよ」
「っっ!!」
ルルはラズルの突然の笑顔に驚いてしまった。しかし、それ以上にラズルが自分を鍛冶屋としてこんなにも真っ向から見てくれている事の方がルルにとっては衝撃が大きかった。
「う、嘘だ!そんな剣が合う訳無いだろ!!」
「あっれれぇ?俺はてっきりさっき俺が親父さんの剣を見てる時に『少し耐久力がなぁ....』と呟いたのを聞いて、お前は耐久力のあるこの剣が俺に合うと判断して持って来てくれたんだと思ってたんだがなぁ~」
「?!」
「俺の思い違いだったか?」
「ち、違うし!俺はこの剣はお前に合うと思って持って来てやったんだ!」
「ふふっ、そうか」
「ありがとな。優秀な鍛冶屋さん。この剣、大事に使わせて貰うぜ」
「....ふんっ//」
ルルは怒っているかの様にそっぽを向くが、ラズルに褒められた事により顔を赤く染めているのがバレバレな子供らしい可愛い照れ隠しであった。
「そう言えばルル、お前いくつだ?」
「11歳。おま....ラズルと同じ学園エスクエラに今年から通っていて、1部の1年生だ」
「へー、11歳か!」
「やっぱガキんちょだな!」
「だからガキって言うな!」




