学園祭[22]
「....あら?ここはどこかしら?」
気が付くとセロスはとある1つの建物以外何も存在しない真っ白な空間にただ1人立ち尽くしていた。
「確か私はあいつに死の恐怖がどうとか言われて....」
「となると私は死んだの?ここは死後の世界?」
「..........ふふっ、あはははは!そんな訳無いわね。だって私はこうして生きてるんだし」
「どうせまた私達の店を壊したと見せ掛けた時と同じでしょ」
「ははーん、あんたの思い通りに行くと思ったら大間違いよ!」
「....さて、ここがどこかはもう良いとして、問題はどうやって戻るのかしら?」
「私はあいつの仕業でここに居るのだから、待つしか無いわね....」
「良いわ!いくらでも待ってやろうじゃないの!」
「取り敢えずあの建物に入ってみようかしら」
セロスは余裕の表情でスキップをしながら唯一存在する建物の中へと入っていった。
~~~~~~~~~1時間経過~~~~~~~~~
「凄い!この建物外見に反して広いし何でもあるわ!」
「美味しい食べ物はいくらでもある!呼んだ事の無い本や見た事無い物も沢山ある!」
「王城よりも快適!一生ここに居たいわ!」
「それにしてもあいつは何で私をこんな良い所に連れて来たのかしら?」
「あっ!ようやく自分の身の程を弁えて私の機嫌を取ろうとしてるのね!」
「あいつにしては中々良いサプライズじゃないの!」
「じゃあ遠慮無く楽しもーっと!」
「あ!あれなんか面白そうね!」
~~~~~~~~~3時間経過~~~~~~~~~
「んんぅーはぁ....まだまだやりたい事はあるけどそろそろ帰ろうかしらね。またここに来たい時はあいつに頼めば良いんだし」
「そろそろ元の場所へ帰しなさーい」
....................
「聞こえてんのー?!元の場所に帰しなさいつってんの!」
....................
セロスはその後も何度もラズルを呼び掛けるが、ラズルからの応答は一切返ってこなかった。
「....時間は分からないけど、もう夜遅いだろうから寝たのかしら」
「ふあぁ...まぁ良いわ。私も眠いし寝ましょう」
~~~~~~~~~1週間経過~~~~~~~~~
「ちょっと?!早く出して!出しなさいよ!」
美味しい食べ物もあり、娯楽施設も整っている何不自由の無い生活といえども、流石にセロスの心は限界を迎えていた。
「もうどれだけここに居ると思ってんのよ?!早く!早く出して!」
そんなセロスの悲痛の叫びに答える者は誰1人として居なかった。
~~~~~~~~~1ヶ月経過~~~~~~~~~
「............」
太陽も時計も無い、建物1つの白い空間に居たセロスはもはや時間の感覚が無くなっており、この空間に来た当初の様に見た事も無い物にはしゃいだり騒いだりもせず、ラズルに対して出せとも叫ばず、ただ1人ぽつりと横たわっていた。
「お父さん...お母さん...クオーレ姉さん...レギナ...セルヴァ......」
「出して...ここから出してよ....」
「お願いだからっ...ここから出して....皆に会わせて.....」
「私を1人にしないでっ!!!」
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「....はっ!」
心の底から叫んだ直後、セロスは涙を流しながら目を覚ました。1ヶ月というとてつもなく長い期間を1人で過ごしたというのに、時計の針は全く動いていなかった。
「よう。どうだ?1度人として死んだ気分は」
「........こ..こは?」
「見れば分かるだろ?お前の部屋だ」
「帰って...来たの?」
「ああ」
「ふぅ~良い湯でしたね~」
セロスが現状確認を行っているその時、丁度風呂上がりで髪を濡らしたセルヴァが戻って来た。
「....セルヴァ?セルヴァなの?」
「はい?何を言ってるんですかセロス様。私はセルヴァですよ」
「............」
「え?え?何で泣いてるんですか?!一体何をされたんです?!」
「....良が"っだ"ぁ...本"当に良が"っだ"ぁ......」
セルヴァを見た瞬間、セロスは涙と鼻水で顔をグシャグシャにしながらセルヴァへと抱き付いた。
「ちょっとセロス様?!私風呂上がりなんですからそんな汚い物付けないで下さい?!」
「ちょっ、まっ、いやぁぁぁぁぁ!!」
その後しばらくセロスは風呂上がりのセルヴァに抱き付いたまま汚物を擦り付けていた。
セルヴァに抱き付いた事により少し落ち着きを取り戻したセロスは、1度グシャグシャになった顔を洗いに行き、ラズルの元へと戻って来た。
尚、セロスに抱き付かれ綺麗になったばかりの身体に汚物を付けられたセルヴァはもう1度風呂場へ入りに行った。
「....で、どうだった?」
「............」
「誰も居ない空間に自分1人。話し相手も遊び相手も居ない空間はどうだった?」
「............」
「どんな生物も『死』ってのは同じで生命活動の停止だ。当然人間もそうだ」
「だがな、人間には他の生物には無い本当の死ってのが有る」
「『孤独』....自分以外の誰とも接触も関係も無い事。これが人間にとっての本当の死だ」
「お前は今、1度死んだんだよ」
「............」
「まぁどう思ったとしてもこんな体験をしたんだ。必ずお前の中の何かが変わってる筈だ」
「じゃあ、もう遅いから俺は帰るぜ」
そのままラズルはセロスの前から姿を消した。
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「さて、もう1回戻って薬も買って来たし、次はあの馬鹿共を何とかしないとな」
「本当に面倒くせぇな....てか戻りたくない」
「まぁ、ここまでしたんだしあいつも今度こそ大丈夫だろ」
「........それにしても1ヶ月か...人間にしては良く持った方だが、やはり人間ってのは身体も心も脆いんだなぁ」
セロスと同じ状況を3000年もの間耐え抜いたラズルは染々とそう呟いた。




