神への貢ぎ物[3]
ラズルは右手をかざしながらブラッドバットへと狙いを定め、先程クイナに教えて貰った詠唱を始める。
「炎よ焼き尽くせ、【火球】」
詠唱を終えるとラズルの右手から直径30㎝程の大きさの火の球が勢い良くブラッドバットへと向かう。
キュィィィ!!
一瞬の内にブラッドバットの身体は焼き尽くされ、そのまま力尽きた。
「初歩的な魔法にしては結構威力出るんだな」
「ブラッドバットが火に対して弱かったというのもあるとは思いますが、それにしても一撃で倒せるってかなりの威力ですね」
「...魔法ってのは楽しいもんだな。何でもっと早く使わなかったんだろう」
「私はまず魔法の存在を知らなかった事が驚きですよ....」
「大体の場合が素手で何とかなってたからな。知る必要も無かったし、何より魔法ってのを知れる環境じゃ無かったんだよ」
「そう言えば、ラズルさんって年はいくつ何ですか?」
「人に年齢を聞くときはまず自分から言うのが常識でしょうが!」
「大人の女性に年齢を言わせる方が非常識ですよ?!」
「いや、お前大人の女性って言える程の年齢じゃねぇだろうが」
「なっ!失礼ですね!私はもう16歳ですぅ~。立派な大人の女性です!」
この世界での成人基準は15歳以上となっている。
「嘘つけ!どっからどう見ても12歳とかそこら辺の少女だろうが!1回鏡見てこい!」
「なっ...!人が気にしてる事を良くもそんな平然と言えますね!」
「俺はただ本当の事を言っただけだ。後悔も反省もしていない!」
「いつか絶対もっと良い身体になってラズルさんをギャフン!と言わせてやりますからね!」
(いつか...ね、もう生け贄になる気はさらさら無いって感じだな.....それで良い)
「ほー、やれるもんならやってみろ!」
「やってやりますとも!」
「ははっ」
「ふふっ」
ラズルにとってもクイナにとっても楽しい時間を過ごすのはとても久々であった。
「年齢教えて貰ったから俺も教えないとな...」
「いくつに見えます?」
「スッと教えて下さい?!」
「えーっと、17」
無論、本当のラズルの年齢ではない。あまりにも長い年月を生きてきた為、ラズル本人でさえも自分の年齢を覚えていない。
とっさに人間としての年齢を考えたが特にこだわりが無かった為、取り敢えずクイナに対して年で優位に立つ為に1つだけ年上にしておいたのだ。
「へぇ、ほとんど同い年なんですね!」
「まぁ、俺の方が年上なのだから精々敬うんだな!」
「ラズルさんは何だか年上って感じしないです...」
「おい、どういう意味だ」
「いや、精神年齢的に手の掛かる弟って感じがするんです」
「ざけんな!俺のどこが精神年齢低いってんだよ!」
「そういう所です」
「...さっきの根に持ってんのか?」
「いいえ~?そんなことないですよ~?」
本人達は自覚していないがどっちもどっちである。
「ったく..さっさと先進むぞ」
こうして洞窟を進む道中様々な魔物と遭遇したが、最高でも危険度Bの魔物だった為ラズルとクイナの2人で十分対応出来た。
そこで分かった事がクイナが意外と強いという事。闘力が武力に偏っているため動きが俊敏で、魔物達を素手のみで圧倒していた。
「クイナ、お前意外と良い動きするじゃねぇか」
「小さい頃から自分で自分の食料を取らなくてはいけなかったので、動物や弱い魔物を狩っていたんです。ですので近接戦闘はそこそこ出来ますよ」
「それだけ動けりゃ大したもんだ」
「えへへー//」
クイナの尻尾が左右へブンブンと振られる。
「おっと、そんな事言ってる間に何かそれっぽい所に着いたみたいだな」
ラズル達の前には3メートル以上はありそうな大きな扉が現れた。
「この中に自称守り神様が居んのか?」
「.....恐らくそうだと思います」
「んじゃ早速..」
「ラズルさん....」
「何だ?」
「お願いしておいてこんな事言うのも何なんですけど...本当に良いんですか?」
「はぁ...言ったろ?俺は恩は返す。必ず自称守り神をぶっ倒してやる」
「それとも俺の事が信じられないか?」
「そう...ですね。私はラズルさんを信じます!」
「良し、じゃあ行くぞ!」
「はい!」