王都[9]
「【火球】」
そう唱えた瞬間、朝が訪れた。
ラズルの頭上には、正確に大きさが測れない程大きな太陽と思える程の【火球】が浮かんでいた。そこから発生する光によって夜だったはずが朝になったかと錯覚する程辺りが明るくなったのだ。
【火球】から発せられた熱により、辺り一面にあった筈の岩は一瞬の内に溶け出した。
「うおっ!ヤバいヤバい!」
直ぐにラズルは【火球】を消し、再び夜が訪れた。
周りには溶けかかった岩の一部がドロドロと流れる。
もう少し消すのが遅れていたら辺り一面溶岩地帯となっていただろう。
「マジかよ...あんな少しの神力でここまでの威力か....」
「これは威力強過ぎて使い物にならんな」
「神力での魔法の使用は封印だな....」
「さて、試したかった事も取り敢えず全部試したし、そろそろ宿に戻るか」
ラズルは【飛翔】を使い宿へと戻る。
音速を越える速度で飛んでいるが、この速度でもほとんど神力を使っていないのだ。
一瞬の内に宿に到着する。完璧なコントロールにより止まる時も衝撃波などは発生しない。
髪が再び純白へ戻り、窓から自分達の部屋へ入る。
「ふぅー...寝るか」
直ぐにラズルは眠りへと落ちる。
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「朝ですよ!起きて下さい!」
相変わらず元気なメイがラズル達を起こしにくる。
「そうだよな、これが普通なんだよな....なんて目覚めの良い朝なんだ」
ラズルは村の宿屋でのおばちゃんを思い出す。
「?」
「すまん、こっちの話だ」
「もう直ぐ朝ご飯の時間なので食堂に来て下さいね!」
「スゥースゥースゥー....」
「...あれ?クイナちゃんまだ起きてないんですか?」
「もうこのくだり何回目だよ....そろそろ飽きたっての」
「メイ、ちょっと尻尾握ってやってくれ」
「え?大丈夫なんですか?」
「ああ、一思いに起こしてやってくれ」
「分かりました!」
「えいっ!」
メイはラズルに言われた通りに全力でクイナの尻尾を握る。
「あああぁ"ぁ"ぁ"!!」
ここまで来ると何の可愛げも無くなっていた。もはや悪魔の断末魔である。
「あっはははは!!」
尚、ラズルのツボには入った模様。
「待って下さい?!これは流石に洒落にならない威力ですよ?!」
クイナは今までで一番の飛び跳ね起きを見せ、尻尾を押さえながらもがき苦しんでいる。
「ごっごめん!大丈夫?!」
「ちょっと大丈夫じゃないですかね」
クイナは悟りを開いた様な表情で答えてはいるが、内心はそう穏やかなものでは無さそうだ。
「これからクイナを起こす時はメイにやって貰うか!」
「明日もこれがくるとなると私は怖くてう寝れないですね」
「ほ、本当にごめんね?まさかそこまで驚くとは思わなくて....」
「いや、どうせラズルさんがやらせたとかそんなんでしょうから気にしないで下さい」
「いや~さっきのは面白かったなぁ~」
「次の起こし方はどうしたもんか...」
「ラズルさん、私がお金を管理してるの忘れてません?」
「次は超丁寧に起こさないとな!」
「頼みますよ」
「さて、じゃあ飯食いに行くか」
「朝ご飯食べたらまた依頼を受けに行かないとてすね」
食堂へ行き、朝食を食べて直ぐに冒険者ギルドへと向かう。
いくつか適当な依頼を受け、この前の全裸ゴブリン事件の様な事も無く、順調に依頼をこなしていく。
冒険者ギルドへ依頼達成の報告へ行き、また宿屋に帰るという何ら変わらない生活を送っていた。
入学試験の前日、冒険者ギルドへ行くとEランクの試験が受けられると言うので当然受けてみた所、ラズルが試験監督をボコボコにした後、クイナも受けようとすると、試験監督が顔を青ざめどこかへ逃げて行ってしまった。
ギルドマスターの判断でクイナも無事合格という判定となった。
「............」
「流石クイナさん、まさか試験を受けずして合格するとは」
「....私そんなに怖いですか?」
「多分試験監督がバリのおっさんの一件を見てた奴だったんだろうな」
「私の印象が....」
「いや、あれはお前が悪い」
「うぅ..何も言い返せません...」
「まぁ無事合格なんだから良いじゃねぇか!」
「そう...ですよね。合格しましたもんね!」
「明日の入学試験もこの調子で合格しないとな」
「どんな試験か分からないので少し緊張しますね...」
「いや、クイナさんなら余裕ですって」
「....学園ではもう何もやらかしませんからね」
2人は明日の試験へ向けいつもより早めに宿屋へ戻り、そのまま寝た。




