職場体験[10]
鍛冶屋の職場体験が終わった日の夜、明日は早めに起きなければいけないというのに、ララとロロの2人の部屋には1人分の寝息しか聞こえなかった。
「......トイレ行こ~」
本来であればわざわざそんな事を言わずに勝手に部屋を出るが、それは自身でも分かる程バクバクと鳴る心臓を落ち着かせるべく自然と漏れた言葉だった。
ゆっくりと身体を起こし、なるべく音を立てない様に歩いてドアノブに手を掛けようとしたその時....
「ふわぁ...それでどうするつもりなの?」
振り返ると寝ていた筈のララがベッドに座っており、眠たそうに目を擦りながらロロの事を見つめていた。
「....どうするも何も聞いてたでしょ、トイレに行くんだよ~」
「あれ、私が起きてた事驚かないんだ?」
「双子だからね~。いくらララが演技が得意でも寝てるかどうかなんて丸分かりだよ~」
「えー、完璧な演技だと思ったんだけどなぁ....」
「ふっふっふ、その程度で私を騙そうなんて甘いんだよ~」
「ロロの演技は素人目でも分かりそうだけどね」
「........」
「クイナやグラウィスなんかは分かってなかっただろうけど、フランとアリアは少なくとも違和感はあったんじゃない?ラズルに関しては....」
「うるさい!!」
「そんな大きな声出したらお母さん達起きちゃうよ?」
「........」
「....まぁ良いや、私が言いたい事はロロも分かってるだろうし、明日は早いから私はもう寝るわ。それじゃトイレに行ってらっしゃーい」
「....うん」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
部屋を出たロロはそのままトイレ....ではなく夜風に当たる為に家の屋根へと登っていた。
(本当に何であんな事しちゃったんだろうな~)
(....友達としても鍛冶屋としても最低だ...私って)
自分がやってしまった事を思い返し、罪悪感に押し潰されそうになりながら、これからどうすべきかを悩んでいた。
「はぁ、明日どんな顔すれば良いか分からないよ....」
「笑えば...良いと思うぞ」
「......ふっ」
「あれ、俺がここに居る事驚か...ってそっちは危な..待て待て落ちる落ちる?!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ラズルの登場により気が動転して屋根から落ちそうになるロロであったが、ギリギリ雨樋につま先を引っ掛け事なきを得た。
「いやー、まさか深夜に屋根の上で1人思い耽ってる少女に一切の気配も出さずに背後から突然声を掛けたら落ちそうになるなんてな」
「寧ろギリ踏みとどまっただけ凄い方だと思うよ~?」
「ははっ、悪い悪い。ちょいと夜遊びしてたら屋根で随分悩んでるロロを見付けてな!」
「....本当に偶々見付けただけなの?知ってて来たんじゃないの?」
「私が......クイナのナイフをわざと壊した事」
「まぁ、あそこまで変だと分かっちゃうわな....分かってない奴が2名程居たけど」
「....そっか~」
ラズルのその言葉で先程まで思いつめた表情であったロロの顔が一変し、決心がついたとも諦めがついたとも言える笑みを浮かべた。
「ふふっ、軽蔑したでしょ~?」
「え?何で?」
「変な気を使わないで良いよ~、私が1番良く分かってるから」
「明日の朝クイナとグラウィスに謝ったら私そのまま家に帰るからさ....皆で楽しんで来て~」
「いやいや一旦落ち着け。何でそんな結論になったのか本当に分から....」
「もう大丈夫だから!...気に掛けてくれてありがと。でももう大丈夫だから....!!」
段々と目が潤み始めた事に気が付いたロロは逃げる様に屋根から降りようとしたが、その挙動を読んだラズルに即座に両手で持ち上げられた。
「おいおいお嬢さん、まだ聞きたい事があるんだから逃げられちゃ困りますよ」
「ちょっ...今ヤバいから離して」
「大丈夫大丈夫、これからもっとヤバくなるから......ごめんな?」
「...へ?」
その後ロロは持ち上げられたまま脇腹をくすぐられ、抵抗も許されないまま涙が出るまで続けられた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ひぃ...ひぃ...も、もう勘弁して....」
「どうだ?もう泣き疲れたろ?」
呼吸困難の一歩手前までくすぐられ続けたロロはもはや涙が出なくなっていた。
「ま、落ち着いたら言ってくれ」
そう言ってラズルは横になっているロロの隣で胡座をかき、そのままゆったりと夜中のカピタールの街並みを眺めだした。
「な、何でこんな事....」
「ん?あー、だって泣きそうだったからさ」
「いや今ので滅茶苦茶泣かされたよ~?!」
「ぷっ...!ははは!皆くすぐられるの弱いよな!」
「笑い事じゃないよ~!!」
「悪かったって!でも....」
再びラズルに両手で身体を持ち上げられ身体をビクつかせるロロであったが、まだ完全に回復していない事を悟り抵抗を諦め目を閉じるが....
「もう泣けねぇだろ?」
先程とは違った優しい手つきで足の間へと下ろされた。
「っっ....?!//」
「あくまで俺の考えだけど、悲しい時の涙を止める方法って我慢するか枯れるまで泣くかの2択なんだよ。でもどっちがスッキリするかで言ったら泣く方だと思うんだよな~」
「だからってただ泣くのも辛いだろ?だから笑い泣くんだよ。どうせ枯れるまで出すなら悲しくて出るよりも笑って出た方が良い。そしたら最後に残るのは笑いだけだ!....という俺の考えで勝手にやらさせて頂きました」
「....ふふっ...ふひひっ!」
最初は自身の直ぐ後ろにラズルが居る事にドキドキしていたロロであったが、段々と不安になったのか下手に出始めたラズルの反応がおかしく、笑いが堪えきれなくなっていた。
「ふへへっ、確かに凄いスッキリした~!....ありがとねラズル」
「そりゃあ良かった。そんじゃ落ち着いた所で話聞かせてもらっても良いか?」
「うん...聞いて~」




