転移[2]
周りには何も無い草原、そこにとある青年が立っていた。何もかもを呑み込んでしまう様な漆黒の髪、そして目。人間と言うにはあまりにも整った顔、場所が場所であるが為に一際目立つ存在となっていた。
「良し、転移成功!やっぱり仕事じゃなくても出来んじゃねぇか!」
他の神自らが転移しなかったのは出来なかったのでは無く普通はしないのだ。
「何で他の奴らはこんな面白そうな事しねぇんだろ?」
当然ラズルはそんな事を知らない。
「あー、このままだと誰かにバレて面倒かもしんねぇから一応変えとくか」
既にルチェスにバレてるとは思ってもいないラズルは、先程まで漆黒であった髪は全く逆の純白の髪へと、目の色は金色へと変えた。
「こんなもんで良いだろ」
1番目立つであろう顔はそのままにラズルの変装?は終わった。
「にしても何も無いな」
周りは見渡す限り草が生い茂っており、生物も1匹たりとも居ない。
「どうしたものか...取り敢えず何か見えるまで適当に歩いてみるか」
そう言って歩く事一時間……何も無い草原からようやく森らしきものが見えてきた。
「おっ!やっと何か見えてきたぞ!もう少し歩いても何も無かったらこの世界ごと破壊してやろうかと思ったぜ!」
たった1つの森によって世界が救われた瞬間である。
森に入ること30分……
「何だ?これは狼ってやつか?何かこういうの久し振りに見るな」
グルルルゥ!
ラズルを囲む様に三十匹程の狼が姿を現した。
「そう言えば神力を使わないでの戦闘って初めてだな...」
全ての神の中で戦闘に関してはラズルに敵う者は存在しなかった。しかし、今は神力は使えない状態であり当然負ける可能性もあり得たが、ラズルはそんな状況を楽しんでいた。
「まだどのくらいの力があるのか分からんが、もしかしたら少しはまともな戦闘が出来るかもしんないな!」
ラズルは目の前でこちらを威嚇していた狼の1匹に向かって全力で殴り掛かる。殴られた狼は少し怯み後ろへと下がったが、あまり効いている様子は無かった。
「嘘だろ?!頭吹き飛ばすつもりで殴ったのに何だこの非力なパンチ?!」
ラズルの思っていた以上に人間の身体は貧弱であった。そんな事を思っている時間も無く直ぐ様背後から3匹の狼がラズルに襲い掛かる。
ガァァウ!
「危ねぇ!こんな身体で食らったら無傷じゃ済まないっての!」
狼達は次々とラズルへ襲い掛かるが、それをラズルは何とか躱す事しか出来ない。
「このままじゃ埒が明かない!つまんなくなるしあんま使いたくないんだが仕方ないか...」
するとラズルの右腕から薄い漆黒のオーラが漏れ出した。
「【破壊】」
そう呟くと同時に周りに居た全ての狼の頭が消失した。
「何だかインチキしてるみたいで嫌だなぁ」
「でも多少神力使わないと話にならないしどうしたものか...」
「まぁ、他の転生とか転移する奴等も神から多少の力貰ってる訳だし、使わないといけない時はほんの少しだけなら神力使ってもいっか」
ラズルの力はあまりにも強大である為この様な所で使う代物ではない。だが、楽しめれば良いラズルに自重など存在しない。
「とは言っても神力ばっかり使うとやっぱつまらんから、一先ずはこの身体でまともな戦闘を出来る様にしないとな...」
「ん?いやでもさっきより何だか身体が軽い気がするな。これはあれか?この狼共を倒した分強くなったって事か?」
「...試してみるか」
一応狼達の死体を【収納箱】へ入れ、力を試す為に新たな獲物を探して行く。
先程と同じ狼を6匹見つけ早速力を試すために近付く。
「さっきに比べて少ねぇな」
6匹の狼達が此方に気付いて襲い掛かってくる。向かってくる狼に対し先程と同じ様に頭を殴る。
頭を吹き飛ばすまでとはいかないものの、先程とは違いグチャリと血が吹き出し頭が砕ける音が出る。
「おー、間違い無く強くなってるな。これならまだ何とかやっていけるかもな」
残りの5匹も次々と一撃で倒していく。
「コイツらがこの世界でどの位の強さか分かれば良いんだが...人を探すしか無いか」
「【捜索】」
「さっきの狼5匹とこれは...人間か?」
「人間の方が追われてるみたいだな、この世界の事も聞きたいし行くか」