職場体験[7]
「で....出来たー!!」
「ふぅ....私の方も何とか完成しました!」
フランとアリアの2人が1週間の努力によりようやく完成した物を大事そうに持ちながら、ずっと丁寧な指導をしてくれていたロロへと駆け寄った。
「うんうん、2人共凄く綺麗に出来たね~。教えた甲斐があったよ~」
2人が持っているそれらは所々歪んでいたり薄い亀裂があったりと完璧な物ではなかったが、素人が作ったにしては出来が良く、何よりも本人達の表情が心底嬉しそうであった。
「いやもう僕に関しては途中ロロに形整えて貰ったりしたし、1人じゃ絶対無理だったよ!」
「私もロロさんが丁寧に教えてくれたから何とか完成させる事が出来ました。本当にありがとうございます!」
「ふっふっふ、もっと崇めたまえ~!」
そんな2人を見たロロも嬉しそうにしており、それぞれ完成した小物を持った女性3人がはしゃいでいるとても賑やかな雰囲気が広がっている一方、完成した得物を持ってそれらをただじっと見つめる2人組の姿があった。
「「どうしてこうなった......」」
「いやどうしても何もお前らがそれ造ったんだろ」
「ち、違うんですよラズルさん聞いて下さいよ?!」
「うん」
「私は元々可愛い指輪を作ろうとしてたんですよ!」
「ほう」
「それでこの1週間頑張って綺麗な円も作れる様になって、後はちょっと手を加えて指輪にするだけだったんですよ!」
「それで?」
「出来上がった物がこちらになります」
クイナが差し出してきた物は当然可愛い指輪などではなく、歪みや亀裂1つ無い輝かしい金属光沢を放つ美しい....
凄まじく鋭利なサバイバルナイフであった。
「......え、お前この得物にユビワなんて名前付けてんの?」
「んな訳ないじゃないですか?!何かいつの間にかこうなっちゃってたんですよ!」
「いつの間にかでこれ造れるって......クイナ才能あるね!」
「え、そうですか?//ララさんが言うなら....ってこれ喜んで良いんですかね?」
「いやでもほんと凄ぇなこれ。元々指輪を形どっていた物だったと思われる部分が指を入れるタイプのナイフの持ち手になってやがる....普通に使い易そうだな」
「うぅ....私もフランさんやアリアさんみたいなの作りたかったです......」
「指輪の面影はあるから結婚指輪として使えば良いんじゃねぇの?」
「こんな殺意高い結婚指輪でどう結婚しろと?!」
「ははっ、ナイフとしては良く出来てるから良いじゃねぇか!........それよりもっと何があったのか気になる奴居るし」
そう言ってラズルがちらりとグラウィスへと視線を向けた。
「ち、違うんですよラズル聞いて下さいよ?!」
「うん」
「俺は元々格好いい斧を造ろうとしてたんですよ!」
「ほう」
「それでこの1週間頑張って金属の声?を聞いて、最早集中し過ぎて無意識にやっている内に何か「来たっ!」ってなったんですよ!」
「それで?」
「出来上がった物がこちらになります」
グラウィスが差し出して来た物は当然格好いい斧ではなく、ごく一般的な何の変哲もない....
ラケットであった。
「いやお前に関してはマジで意味が分かんねぇよ」
「はい。俺も正直何があったのかどころか、これが何なのかすらも分かってないです!因みに皆さんこれ何だと思います?」
元々は斧を造ろうとして造れなかったグラウィスは最初酷く落ち込んでいたが、時間が経つにつれ完成した物が何なのか気になり始め完全に開き直っていた。
「うーん....形はハエ叩きに似てる。重さは軽い金属使ってるから意外と軽いけどそれにしては大きいし、張ってる網?みたいなやつも虫を叩くには隙間が空き過ぎてるね」
「そうなんですよねー」
「それはグラウィスが金属の声を聞いて出来た物なんでしょ?だったら絶対に何か画期的な物の筈....」
「え、そういうものなんですか?!」
「うん、今まで鍛冶屋が金属の声を聞いて生み出された物は生活に便利だったり、それで新しい娯楽が生まれたりと全部画期的な物だったんだよ!だからグラウィスが金属の声を聞いたって言った時は凄く驚いたよ」
「俺にそんな凄いもん聞けだなんて無茶ぶりしてたんですか?!」
「私の目に狂いはなかったね!」
「ま、まぁ取り敢えずそれは置いといて......クイナさんはこれ何だと思います?」
「え?えーっと...別にこれといって似てる物は思い付かないんですけど....」
「それで干した布団とか叩いたら埃とか良く取れそうじゃないですか?」
「「っっっ......?!?!」」
その瞬間、2人に電撃が走った。
「「それだ!!!」」
「確かにこの程よく張り巡らされた網の部分で叩けば、布団に付いた細かいゴミや埃を効率良く取る事が出来る....!」
「こ、これは確かに画期的です!凄い発想力ですねクイナさん!」
「へ?ふへへぇ....//そんなに褒めないで下さいよ!」
こちらはこちらでまた別の賑やかさが広がり始めている中、それが何なのか唯一知っていたラズルは暖かい目で成り行きを見守った後、一言も発する事なくそっとその場を離れた。




