職場体験[5]
ロロのお願いと聞いて最初は嬉しそうな顔をしていた親父さんであったが、事情を聞いていくにつれて表情が段々と硬くなっていった。
「うぅむ...確かに何年か前に職場体験をさせてやってくれないかと頼まれた事があったが、まさか今度は娘から頼まれるとはな」
ララとロロが親父さんを説得している間フラン達3人は説得の間工房から出て様々な武器を見て回っていたが、そんな中説得現場を見ている男とその男をガン見している少女が居た。
「1週間だけお願い~!」
「いやしかし、そう易々と鍛冶に手を付けられるというのは鍛冶屋のプライドとしてだな....」
反応を見て何となく駄目そうだと判断した男は怪しい笑みを浮かべると、懐からおもむろに何かの液体の入った小瓶を取り出し親父さんへ近付いていったが、そこをすかさず1人の少女が全力で止めに入った。
「皆には私とロロが教えるし、お父さんの邪魔にならないようにするからさ....駄目?」
「うぅむ....」
親父さんが悩んでいる間にも男と少女は人知れず揉み合っており、お互い絞め技を掛けては返しを繰り返していた。
「......分かった。だが2人がちゃんと管理してやるんだぞ?鍛冶は危険だからな」
「もちろん!お父さんありがと~!」
「皆~!何とか許可貰え....2人共何やってんの~?」
職場体験の許可を得たロロは嬉しそうに親父さんへ抱き付くと、直ぐ様皆に報告しようと戻って来たが、そこにはお互い息を切らしボロボロとなったラズルとクイナしか居なかった。
「はぁ..はぁ...いや、ちょっと正義の味方に邪魔されてな」
「はぁ..はぁ...ふふ、悪の化身からお父さんを守ってやりましたよ」
「いや本当に何やってんの?」
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その後他の3人を呼び戻すと、早速鍛冶を体験しようと再び工房の中へと入った。
「うへぇ...さっきは直ぐに武器見に行ったから気付かなかったけど、ずっとここに居るとなると流石にキツいなぁ」
「確かにこの暑さだと汗が気になっちゃいますね....」
「俺も夏の畑仕事で暑さには慣れてるつもりでしたが、これはまた違った暑さですね」
「ん、だったら良い物あるぞ」
そう言うとラズルは【収納箱】から小さな青い宝石の付いた指輪を4つ取り出すと、1つは自分の指に付けて残りをそれぞれ1人ずつに渡した。
「えっ、指輪?!」
「ラズル君これは...?」
「何かそれ付けると冷気が身体を覆ってくれるらしくてな、面白そうだから買っておいたんだ。少しは暑さもマシになるだろ?」
「おおっ!確かに涼しくなりました!ラズルこれ貰っても良いですか?!」
「まだ余ってるし良いぞ」
「「..........」」
指輪を嵌めて涼しくなった事に興奮しているグラウィスとは反して、フランとアリアは指輪を嵌めずにただじっと見つめていた。
「あれ、要らないのか?」
「「要ります!!!」」
2人は慌てて左手の薬指へと嵌めると、涼しくなったからというよりもラズルから指輪を貰ったという事に興奮していた。
「むぅ~、ラズルそれ私も欲しい~!」
それを見ていたロロは頬を膨らませながら自身の左手を差し出した。
「分かった分かった!....ほら、これで良いだろ?後これララの分な」
「ありがと、助かるよ!」
「ふへへ~...」
いくら鍛冶屋生まれで慣れているといえども涼しくなるに越した事はなく、指輪を貰った2人も嬉しそうにしていた。
「さて、後は....」
「鍛冶を教えて貰うだけだな!」
「絶対この流れになると思ってましたよ?!ってかその指輪私にも下さい!」
「え....要る?」
「要りますよ?!何ならこの中で私が1番欲してますからね?!」
「いや、その耳とか尻尾とかモフモフで暖かそうじゃん」
「えーもう本当に暖かいですよ!もう今直ぐにでももぎ取りたい位にはねぇ?!」
「分かったからそんな怒るなって!ほれっ、これで良いだろ?」
クイナはラズルから他の物と同じく青い宝石の付いた指輪を受け取ったが、先程の2人とはまた違った理由でじっと見つめていた。
「あれ、要らないのか?」
「......これ嵌めたら爆発したりしませんよね?」
「何でお前らは俺が渡す物は爆発すると思ってんだよ」
「それはマジでちゃんとしたやつだから大丈夫だって。何ならお前の指輪だけ他のやつよりも高かったんだぞ?」
「わ、私だけ....//」
自分だけ特別扱いされてると感じたクイナはラズルを信じ、にやけながら左手の薬指へと指輪を嵌めた。
「わわっ!これ着けたら本当に涼しくなって来ま...ってちょっと待って寒い寒い寒い!!」
「他のやつよりも値段が高い分効果も高いんだとさ」
「どうせそんな事だろうと思いましたよ?!」
その後しばらく寒がるクイナを見て楽しんだラズルは通常の効果の指輪を渡し、一方クイナは先程までもぎ取ろうとしていた耳と尻尾を心底大事そうに労っていた。




