本性[11]
『なっ......?!?!』
「おー、思ってたよりもいったな」
模擬戦中に、それも第3王女であるレギナが取ったその行動は1、2部生や教師に関わらずラズル以外の見ていた者全てに大きな衝撃を与えたが、1番衝撃を受けていたのは言うまでもなく最後の一撃を食らったランヴェ本人であった。
「え..あ...その、えっと....」
「ふふっ、流石にこの攻撃だけは避けられなかったみたいね。それとも避けたくなかったのかしら?」
「......っ//」
先程まで自分が優位に立っていた筈が、ランヴェの背負い投げ同様レギナが出来る最大の攻撃によってあっさりと立場が逆転していた。
「あら~?さっきまで達者だったお口は一体何処へ行っちゃったのかしらね~?」
レギナは恥ずかしさから目を合わせようとしないランヴェへここぞとばかりに追い打ちを掛けていくが、仕掛けている本人の顔は先程以上に真っ赤に染まっていた。
「あ、あんなのズルいよ!」
「あんたが言えた立場じゃないでしょ?!わ、私だって恥ずかしかったんだから!//」
つい先程まで激しい攻防を繰り広げていた2人の試合は、いつの間にかただの子供の口喧嘩となっていた。
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「「はぁ...はぁ....」」
「ふぅ...もう良いわ。このままじゃ埒が明かないし、何よりも恥ずかしいからこうしましょう!」
「はぁ...どうするの?」
「仕方ないから今回は特別にどっちも勝ちって事で引き分けにしてあげる!」
「引き分けって言ったってどうやるの?」
「そんなの簡単よ。ただ同時に降参すれば良いだけだもの」
「成る程ね....もう僕も早く休みたいしそれで良いや」
「決まりね!それじゃ「せーの」でいくわよ....」
「「せーのっっ!!」」
「降参!..ってあんたも言いなさいよ?!」
「はい僕の勝ちー!先生今レギナが降参って言ってましたー!!」
「はい、ではもうランヴェ君の勝ちです。あっ因みに2人はえー、あれですあれ。....まぁ、取り敢えず減点です」
「「何でですか?!?!」」
1時間以上も2人の地味な試合を見続け、ようやく終わったかと思いきや今度は生徒同士の痴話喧嘩を見せ付けられるという拷問を受けた36歳独身男性教師の顔は、模擬戦が始まる前より心なしかやつれていた。
「さーて、僕が勝ったんだし約束通り....」
ランヴェはしたり顔でそこまで言い掛けると、今まで我慢していた疲労が一気に訪れたのかそのまま地面へと倒れ込みそうになるが、いつの間にか観客席から移動していたラズルによって受け止められた。
「っと...全く今まで良く耐えたもんだな」
「っ?!あ、あんたいつの間に....」
「それよりもどうだ?こいつ中々やるだろ!」
「ま、まぁまぁね」
「ったくお前ら姉妹は本当に素直じゃねぇのな。さっきまでは本性剥き出しでランヴェにキスしたってのに」
「本性剥き出しとか言うんじゃないわよ馬鹿!!あ、あれは勝つ為に仕方なく....//」
「ふーん、勝つ為に仕方なくねぇ....」
確かにレギナの身体はかなり疲労していたものの、もはや立つ事もままならなかったランヴェに止めを刺せる程の体力は残っている様に見えた。
「何よ?!何か文句あんの?!」
「ははっ、何でもねぇよ。俺は取り敢えずこいつを保健室まで寝かせに行くから、後はお前らだけで宜しくやれ!」
「っ...うっさい!!」
レギナが1部生達の元へと戻ると様々な視線を送られていたが、本人は特に気にした様子もなく平然とその場に座った。
その後も模擬戦は続いていったが、ランヴェとレギナ程長続きした試合は無く意外にも早く終わった。
「......良し」
模擬戦が終わるまでずっとそわそわしていたレギナは、教師の締めの言葉を聞き終えると直ぐ様保健室へと向かった。
「本当だったら保健室を覗きに行ってやりたいが、今回は我慢してやるか」
「....私達は一体何を見せられてたんですかね」
「でもすっごく良い試合だったよね!」
「いきなりの不意打ちで意識させる....ふむふむ成る程、参考になりますね」
「見れば演技じゃないのが分かるから余計に恥ずかしくなるね....」
「いや~、青春だね~」
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保健室の前に着いたレギナは扉に手を掛けると1度動きが止まったが、首を横に大きく振ると豪快に扉を開けた。
「....ん?ああ、何だレギナか」
「何だとは何よ。折角お見舞いに来てあげたのに」
「いやー、丁度レギナに何を頼もうか考えててさ!」
「......未だに納得いかないけれど約束は守るわ」
「うーん、最初は僕も友達になってとか言おうと思ってたんだけど....良く良く考えたらそれって頼む事じゃないし、何ならもう頼む必要も無いしね!」
「っ....!か、格好つけてんじゃないわよ!//」
「何で怒ってるの...まぁ良いや、取り敢えず僕のお願いはもう決まった!」
「な、何....?」
先程期待を裏切られたばかりといえ、状況が状況なだけに期待せずにはいられなかった。
「今度出会った時に言った野良猫を一緒に見に行こうよ!最近子猫を産んですっごく可愛いんだ!」
「でしょうね。そんな事だろうと思ったわよ」
「あっ!そういえば気絶しちゃってまだラズル先輩にちゃんとお礼言えてない!」
「あ、その事であいつからの伝言だけど『お前の事だからちゃんと礼を言おうとか思ってるだろうが、そんなもん要らん』」
「っ!......ふふっ、あの人らしいや」
「『言葉での礼はな』」
「ほんとあの人らしいや」




