本性[8]
初めて会った日以来ランヴェは一切レギナへと近付かなくなり、レギナも最初はその事を気にしていたが、他の生徒と関わっていく内にそんな気持ちは薄れていった。
「それで家のメイドがクオーレお姉ちゃんの部屋の花瓶を割っちゃってねー!」
「えー!そのメイドさん大丈夫だったんですか?」
「それがクオーレお姉ちゃんったら割れた花瓶を自分で片付けちゃったから、そのメイド余計に怒られちゃったのよ!」
「ふふっ、クオーレ様は優しいんですね!」
「そうなの!それで....」
レギナが同じクラスの女子に囲まれながら楽しそうに話していると、教室のドアが勢い良く開かれた。
「なぁなぁ!今日もアレやるみたいだから皆で見に行こうぜ!」
「えー....私面倒だから良いやー」
「私もー」
「えっと、何の話かしら?」
「あっ、レギナ様こんにちは!えーっと....本当はもう少し隠したかったんですけど、そろそろ良いですかね!」
「実はこの時間はいつも裏庭で皆で近接戦の自習をしてるんですよ!」
「近接戦の自習?!もー!何で私も呼んでくれなかったのよ?」
「あはは、すみません。ちょっとレギナ様を驚かせたくって!」
「裏庭でやってるのね?私も行くわ!」
「え、レギナ様が行くなら私も行く!」
「じゃあ私もー!」
「おいおいお前らは面倒だから行かないんだろ?」
「う、うるさい!行くったら行くの!」
「「「「「あはははは!」」」」」
廊下に楽しげな笑い声を響かせながら裏庭へと向かうレギナ達。そんな同い年程の子に囲まれながら楽しく話すという状況に対し、レギナは多少の引っ掛かりを感じながらも満足していた。
(初めの頃は諦め掛けてたけど....友達って思ったよりも簡単に出来るのね!)
(......そういえばあいつあれ以来ずっと教室でも1人で私に話し掛けて来ないけど、もしかして投げた事怒ってるのかしら...?)
「...様!...ギナ様!....レギナ様!!」
「...っ!ご、ごめん!少し考え事をしてたわ」
そんな事を考えているといつの間にか裏庭へと到着していた。
「ほらほらレギナ様、アレですよアレ!」
「......っっ!!!」
普段は食事の際に数人の生徒が使う程度の裏庭には十数名の生徒が集まっており、それらの生徒達の視線の先には....
「..........」
身体中に土が付いたボロボロのランヴェが倒れていた。
「な、何をしているの....?」
入学式に会った時とは全く違う生気の無い瞳。あれだけ鬱陶しいと思っていた男が今はどんなに殴られ、蹴られようとも一切口を開かずにいる。
「あいつ覚えてます?入学式の時にレギナ様に生意気な態度取った平民ですよ!」
「うわぁ...今日もまた随分も酷いやられよう....」
「男子達良くあんな汚れてるのに触れるよねー」
(あなた達は何を言ってるの...?)
「聞けばあいつレギナ様を馬鹿にした挙げ句道案内までさせようとしてたそうなんで、俺達が代わりに罰を与えておきました!」
(罰?そんな事誰が頼んだの...?)
当たり前の様に話を進めていくクラスメイト達に付いていけず、レギナの頭の中は疑問で埋め尽くされていた。
「あっ、良ければレギナ様もやります?」
「馬鹿!レギナ様があんなのに触る訳ないでしょ!そうですよね?!」
(今はそれ所じゃないでしょう?!早く治療しないと....っっ!!)
ボロボロのランヴェを見たレギナは直ぐ様治療しようと駆け寄ろうとしたが、その瞬間倒れながらこちらを見ていたランヴェと目が合った。
「..........」
(な、なによ....何でそんな目で私を見るのよ?!)
「..........」
(ち...違う....わ、私が頼んだんじゃない!私のせいじゃない!!)
「あっ!レ、レギナ様?!」
蹴られながらもずっと自身の目を見て来るランヴェを見て、罪悪感や恐怖を感じ始めたレギナは急いでその場から逃げ出した。
その日以降レギナは人の目を見る事が怖くなり、その恐怖を誤魔化す為に第3王女という立場を使い高圧的な態度を取る様になった。




