本性[7]
それは夢見て来た出来事ではあるものの、あまりにも突然の事にレギナの頭の中は嬉しさや疑問など、様々な感情で頭が混乱していた。
「わ、私を馬鹿にしてるの?!」
「え、してないよ?ただ仲良くなれそうだなーって」
「初対面のあんたに私の何が分かるのよ!」
「あっ、僕の名前はランヴェ!宜しくね!」
「そんな事聞いてないわよ!」
「いやー、名乗らずに名前聞いたから怒っちやったのかなって思ってさ!」
「やっぱあんた私の事馬鹿にしてるでしょ?!」
「あんたじゃなくてランヴェだって!」
(こいつは本当に私に近付いて何がしたいの?!何だか無性に腹が立って来るわ!......いけないいけない、深呼吸深呼吸)
「ふぅ....もう良いわ。単刀直入に聞くけど何が目的なの?別に私に近付いて来ても何もする気はないから、あんたには何の得も無いわよ」
「うーん、それは困るなぁ....」
「っ....!」
表面上では呆れた様子であったが、内心ではどこか期待している自分が居た為いつもよりショックが大きかった。
(そうよね...ちょっとでも期待した私が馬鹿....)
「僕今絶賛迷子中だから教室まで案内してくれないと困るんだよね」
「そんな事の為に私に声を掛けて来たの?!」
「うん!....あっ、でも仲良くなりたいっていうのは本当だよ?!」
道案内だけさせようとしていると思われたのかと目の前であたふたするランヴェ。しかし、表面上では真顔を保っているレギナはランヴェ以上に混乱していた。
(こいつまさか本当に私に道案内させようとしてただけなの?!いや、そんな理由で私に近付いて来る訳ないわ!絶対に他に裏がある筈...!)
「う、嘘付かないで!他に何か私に言いたい事があるんでしょ?!」
「ぐっ...!そ、それはそうだけど....」
図星をつかれ焦っている様子を見たレギナは更に追い打ちを掛けていく。
「はっ!言っとくけどお金を貸す気もパパやお姉ちゃん達に会わせる気も....」
「今はこれ位しか持ち合わせが無いからこれで勘弁してくれない?!お詫びに近所に居る可愛い野良猫に会わせてあげるからさ!」
「そんなお金要らないわよ?!猫は今度紹介しなさい!」
「ぼ、僕の全財産なんだけどこれじゃ足りないか....分かったよ」
するとランヴェは涙目で服に手を突っ込むと、少し汚れてはいるものの丁寧に手入れがされたガラス玉を取り出した。
「こ、これ僕の宝物なんだけど...ぐすっ、これあげるから教室まで....」
「分かった!分かったから早くそれ全部しまいなさい!私が変な目で見られるでしょ?!」
「ほんと?!やった!」
案内してくれると聞いたランヴェは先程までが嘘のような満面の笑みを浮かべると、手に持っていたガラス玉を放り捨てお金だけしっかりと回収した。
「じゃあ行こうか!」
(いっその事何か企みがあった方が殺り易いわね)
投げ捨てられたガラス玉を見て目の前の少年に軽く殺意が湧いたが、不思議と嫌な気分ではなかった。
「....まぁ良いわ、仕方ないから教室まで案内してあげる」
「ありがとう!」
「なっ....//」
感謝の気持ちを伝えると同時にランヴェはレギナの手を握った。しかし、今まで同い年程の異性に触れられた事がないレギナは顔を真っ赤に染めると、身体を回しながらランヴェの手を引っ張り....
「ごふぅ....!!」
綺麗な背負い投げを決めた。
「さ、さささ...触るんじゃないわよ!!///」
自分がどうしたら良いのか分からず、段々と胸も痛くなり始めその場に居た堪れなくなったレギナは逃げる様にその場を去った。
「いたた...僕何か怒らせちゃったかなぁ....」
ランヴェは何か悪い事をしたのではないかとレギナを追い掛けようとするが、その瞬間背後から肩を掴まれた。
「ん?」
レギナの照れ隠しによる行動。それは本人に悪意がなくとも、周りから見れば別の意味として捉えられている事がある。
「ふんっ!」
「痛っ!ちょ、ちょっといきなり何を....」
言い終わる前に再び見知らぬ男子生徒に腹を殴られる。
「っっ....!!」
周りはその光景を見ているだけで誰も止めようとはしない。しかし、中には更に蹴りを食らわせる生徒も存在する。
そういった生徒は次々と増えていき、レギナの知らない所でランヴェへの苛めはどんどんエスカレートしていった。




