訓練[7]
「お前はその主人公と同じ事が起きてるから、それと同じ様に物事が進むと何処かで思い込んでるんだよ」
「............」
「現実を見ろ。自分は最強だったか?自分のしたい事は出来たか?自分が好きな相手との関係は思い通りにいったか?自分は....特別だったか?」
「うるさい!!仮にそうだったとしても...別にそう思い込むかどうかなんて僕の自由だろ!お前にとやかく言われる筋合いは無い!!」
龍夜は自身でも何となく気付いていた事をラズルに言い当てられ、興奮して立ち上がるとラズルの胸ぐらを掴んで声を荒げた。
「確かにお前自身がどう思うかなんて自由だ。だが....」
「自分が作った物語を信じるな」
「ここはお前の作った物語の中じゃなく現実だ。例えお前が自分に不都合な物語を書いてなかったとしても、現実では勝手に書かれるんだよ」
「現にお前が作った物語に俺に手足を飛ばされるなんて書いてあったか?」
「......」
「当然他人もそうだ。仲間、恋人、家族......大切な人だって現実では死ぬ。そんな時お前は自分の物語に逃げるのか?」
「........」
「言っとくが無理だぞ。そんな現実見た瞬間逃げ場なんて直ぐに壊れちまうからな」
「..........」
ラズルの話を聞いてる内に胸ぐらを掴む力はどんどん弱まっていた....
「もう1度だけ言う...."現実を見ろ"」
その言葉を止めに龍夜は胸ぐらを掴んでいた手を離して座り込み、ラズルもその隣に座った。
「........嫌だったんだ。特に目立った所も無い普通な自分が」
「僕が見て来た主人公達は皆特別だった。...でも、僕は見た目も学力も運動も何もかも普通だった....」
「だから、僕はこの世界に来た時凄く嬉しかったんだ。今まで普通だった僕が特別....主人公になれた気がしたんだ」
「...ま、実際はそんな事なかったんだけどさ。....まさか告白の返事だけじゃなく性別まで僕が思ってた物語と違ったとはね」
「ははっ、何度思い返してもさっきのは面白かったな!」
「なっ...!お前まさか見てたのか?!」
「おっと、腹抱える程笑わせて貰った礼を言うのを忘れてたな...ありがとな!」
「この野郎...!1発殴らせろ!!」
龍夜は隣に居たラズルに殴り掛かったが、ラズルも軽く神力を解放すると一瞬の内に背後に回った。
「ほらほら、殴れるもんなら殴ってみやがれ!」
「野郎...絶対ボコボコにしてやらぁ!!」
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「流石異世界の勇者様!速いでちゅね~!」
「はぁ..はぁ...くそっ...!途中から何か分身の術みたいな事しやがって!あんなん無理に決まってんだろ!」
「あんなん無理?やったな!しっかりと現実が見えてるじゃないか!」
「うるさい!言っとくが僕だって別にモテるのを諦めた訳じゃないぞ!」
「....現実の次は鏡見なくちゃな」
「そこまで言うか?!」
「冗談だ冗談。目標があるのは良い事だからな、頑張れよ」
そう言ってラズルは満足そうにテントへ戻ろうとしたが、龍夜がそれを引き止めた。
「ま、待ってくれ!」
「ん?連れションならしないぞ」
「違ぇよ?!え、えっと....僕に強くなる方法を教えてくれないか?」
「強くなる方法?んー....まぁ明日から丁度1ヶ月ランヴェの訓練で暇だし別に良いぞ。ついでに俺も虎日と一緒に魔法の練習とかするか」
「ほ、本当か?!よっしゃぁ!」
(強くなりたいから俺に力をくれとか言い出すんじゃないかと思ったが...流石にそこまでじゃないか。ははっ、さっきと違って随分と良い目をする様に....)
「これで女の子にモテてやる!!」
「お前もう転移じゃなくて転生しろ」




