訓練[6]
~昨日の夜~
気絶したランヴェを抱えながらテントへと戻ると、外でラズルの帰りを待っていたルーちゃんが駆け寄って来た。
「お帰りなさいませラズル様!」
「おう、ちょっくら龍夜の様子見て来るからこいつ寝かせておいてくれ。他の奴らを起こさない様にな」
「お任せ下さい!」
「さってと、あいつは....あそこか」
何処かへと走り去った龍夜を【捜索】で見つけると、ラズルも全速力でそこへ向かった。
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(確かここら辺に....おっ!)
しばらく木々が生い茂る森の中を走っていると、視界が開けた丘で龍夜が仰向きに寝転がって満月を見ている姿が見え直ぐに足を止め、再び【気配遮断】を使って少し離れた所から様子を見る事にした。
「......はぁ...やっぱ僕なんかに彼女なんて無理だったのかな」
(....何だあの馬鹿にしては珍しく随分と落ち込んでやがるな)
「地球...っていうか違う世界か。向こうで女の子に一切縁が無かった僕でも異世界ではモテると思ったんだけどな......まるで主人公みたいに」
「......そんな僕に比べてあいつは主人公みたいだったなぁ。イケメンで、あんな可愛い剣と刀を持ってて、虎日に一目惚れされて、しかも神とかいうもはや訳分からない存在....あれ?何かあいつの事考えると無性に腹立って来た....!」
「勝手に俺を悪者にするな」
勝手に腹を立てられていたラズルは龍夜に近付くと【気配遮断】を消し、がら空きの額にデコピンを食らわせた。
「痛っ!!な、何でお前がここに居るんだよ?!何処から沸いて出やがった?!」
龍夜は今まで味わった事のない威力のデコピンにその場で転がりもがいていた。
「お前が月見ながらぶつぶつ言ってるから聞いてみれば、何か勝手に俺に腹立ててやがったからただデコピン食らわせただけだ」
「何1つ質問に答えてねぇよ?!」
「まぁそれは一旦置いとけ。....それよりも俺があれだけやったというのに、お前はまだ分かってないみたいだな」
「....何がだよ」
「ここは現実だ」
「は?何を当たり前の事を....」
「その当たり前の事がお前は分かってるつもりで分かってないんだよ」
「今もそうだがお前偶に主人公がどうとか言ってる時あるだろ?俺にはお前がどんな物語の主人公の事を言ってるのかは分からないが、お前はその主人公に憧れてるのか?」
「......そうだよ。異世界転移は僕が見て来たアニメとか小説の憧れの主人公が体験してる事だ。僕だって折角異世界に来たんだからそんな主人公達みたいに冒険したり恋愛したりして異世界を満喫したいさ!」
「......俺の知り合いで絵本の姫に憧れてる奴が居たんだが...そいつは自分を少しでもその憧れの姫に近付けようと努力していた。だが....」
「お前のそれは憧れじゃねぇ。ただその主人公を自分と重ねてるだけだ」




