初めての旅立ち[8]
村の中ではいかにも盗賊といった男が10数人おり、その中の1人のリーダー格の男の大きな怒声が響いていた。
「おらぁ!!さっさと金と女を出しやがれ!!」
「金や食料は差し上げます!ですからどうか!どうか孫だけはお助け下され...」
「舐めてんのかこのくそ爺!俺らは金と女を出せっつってんだよ!!」
男は村長、ケインを殴り飛ばす。
「ぐはぁ...」
「お爺ちゃん!!」
「ば...馬鹿者、出てくるなとあれだけ言っただろう」
「もう良いよ!私が行けば良いだけなんだから!」
「行きます!行きますからもうこれ以上村の人達には手を出さないで下さい!!」
「へっへっへ、ようやく出てきやがったな」
「こっちはお前を滅茶苦茶にするのが楽しみで夜も眠れなかったんだぜ?まぁ、今日もお互い眠れそうにねぇけどなぁ!!」
ゲヘヘヘヘヘ
「行くな...ニーニャ!戻ってこい!」
「うるせぇんだよ!!」
下っ端と思われる男がケインを蹴り上げる。
「ごふぅ...」
「お爺ちゃん!や、辞めて下さい!」
「わ、私なら何でもしますから....」
「はっはっは!そりゃあ賢明な判断だな!!」
「んじゃあ、お前ら!金目の物全部掻っ払ってこい!」
「「はい!お頭ぁ!!」」
盗賊の下っ端達は村の家や店から金目の物を漁り、奪っていく。
「じゃあ、俺達は先に帰って楽しむとするかな!」
「皆、私は大丈夫だから!」
そうは言っているが、ニーニャと呼ばれていた女の子の身体は震えていた。
「ニーニャぁぁぁぁぁ!!!」
「村長、そんな大きな声出したら近所迷惑だぜ?」
「なっ?!どうしてあなたが...」
「説明は後な、取り敢えず今は...」
「"あの汚ねぇ汚物をぶち殺してくる"」
ラズルの普段のふざけている顔は無く、そこには確かな怒りが込められた初めて見せるラズルの顔があった。
「何だぁ?お前?」
「てめぇなんぞに答える道理は無ぇよ」
「んだと?お前この村の状況分かってねぇのか?」
「今、この村には俺の手下共が17人居んだぜ?」
「17人?17個の間違いじゃねぇか?」
そう言うとラズルは【収納箱】から先程まで村を荒らしていた盗賊達の無惨な死体を男の前に放り出した。
「なっ?!て、てめぇ何しやがった?!」
「何って...説明するよりも実際見た方が早いだろ?」
「何を言っ....」
言葉を良い終える前に盗賊の頭の身体は吹き飛んだ。
『身体強化』と『瞬速』を使ったラズルによって殴られたのだ。
「きゃあ!」
盗賊の頭の隣に居たニーニャが殴られた音と衝撃に驚く。
「大丈夫だ、もうアイツは居ねぇ」
「...へ?」
「良く頑張った。後は俺に任せとけ」
「クイナ!村長とこの子を頼む!」
「は、はい!」
ラズルは盗賊の頭が飛ばされた方へと向かう。
「お2人共、もう大丈夫ですよ」
「な、何故あなた達がここに?」
「ラズルさんが皆さんの違和感を感じ取って、心配になったので急いで戻って来たんですよ。一応間に合ったみたいで良かったです」
「何と...何とお礼を言ったら良いのか....」
「お礼なんて要りませんよ。私達がこの村にお世話になったお礼とでも思って下さい」
「ありがとうございます...本当にありがとうございます....」
「それよりも村長さん!早く手当てをしないと!」
「わ、私達の家まで運んで頂けませんか?!」
「勿論です!」
クイナはニーニャと共に村長を家まで運び手当てをする。
「これで一先ずは大丈夫だと思います」
「あ、ありがとうございます!」
「他の盗賊ももう居ないので安心して下さい」
「でも...先程の方がまだ....」
「あ、ラズルさんの事なら心配要りませんよ。あの人があんな盗賊ごときにどうにか出来る訳ありませんから」
「は、はい」
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「がはっ...!」
「おいおい、あんなに加減してやったのにもう死にかけじゃねぇかよ」
「ひいぃぃぃ!!」
盗賊の頭は情けない声を上げながら必死に逃げようとするが、ラズルに殴られた身体は動かない。
「1発殴っただけでこんなんなっちまうのか」
「か、金なら幾らでもやる!だから命だけは助けてくれ!」
「あぁ"?俺は金なんざ要らねぇんだよ」
「俺が今欲しい物はただ1つ」
「な、何だ?!何でもや....」
グチャリ
「てめぇのその薄汚ぇ命だ」
頭を潰された盗賊は一瞬で死体と化した。
それを見るラズルの顔はいつもの表情でも先程の怒りの表情でもない、空虚な眼差しで死体を見る何も感情の籠っていない顔だった。
「あー気分悪」
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「あっ、帰って来ましたよ」
「おう、こっちも何も無かったみたいだな」
「おおっ、ありがとうございます!お陰様で村も孫も救われました!」
「あぁ、気にすんな。俺は恩は返すだけだ」
「あ、あの!」
ニーニャが軽く頬を染め、ラズルへと近付いてくる。
「私を助けて下さり本当にありがとうございます!」
「おう、無事で何よりだ」
「さてクイナ、王都へ向かうには微妙な時間だが...どうする?」
「そうですねぇ、何だかこの村にはとても良い宿があった気がします。そこに泊まらせて頂くのはどうでしょう?」
「そりゃ良い考えだ」
「お、お待ち下され!」
「ん?」
「あなた方に1つ謝らなければならない事があります...」
「あなた方がこの村に来た時、儂はわざとあなた方をこの村に留めて盗賊共を何とかしてもらおうとしました....」
「儂に出来る事ならば何でもします!ですからどうかお許しを!」
「でも爺さん、結果あんたはそれをしなかった。だったら何も気にする事は無ぇよ」
「...?!ありがとうございます...ありがとうございます.....」
ケインは涙を流しながらラズル達にお礼を良い続けた。
村長の家を出たラズル達は昨日と同じ宿へと向かった。




