合同演習[14]
「ランヴェちゃん....!!」
ラズルの放った黒い光線がランヴェに当たろうとした瞬間、虎日を抱えた龍夜が虎日と共にランヴェを押し倒した。
「きゃあ!!」
「があ"あぁぁぁぁぁ....!!!」
しかし、幸いにも虎日とランヴェに光線は当たらなかったが、代わりに龍夜は左足を失う事となった。
「............」
「お兄ちゃん!!!」
ランヴェは既に気絶しておりその場で倒れたまま、虎日は直ぐに起き上がって再び回復魔法で龍夜の足の傷を塞ぐと、両手を広げてゆっくりと近付いて来るラズルから2人を庇う様に立った。
「こ...これ以上お兄ちゃん達に何かしたら....ぜ、絶対に許さない!!!」
言葉ではそう威勢を張ってはいるものの、自分達に殺意を剥き出しにしている男を前に今まで喧嘩もした事が無い様な少女が耐えられる筈もなく、顔をぐしゃぐしゃにしながら足をプルプルと震えさせて今にも倒れ込みそうだった。
「........合格だ」
そう呟くとその場全体を包み込んでいた殺気は嘘の様に消え去り、ラズルは申し訳なさそうな表情で仮面を外した。
「......え?ラ、ラズル....さん?」
自分達を襲った男の正体がつい先程別れたばかりのラズルであった事を知り、虎日は限界を向かえへなりと地面に座り込んだ。
「後でいくらでもやり返して良い....俺が言えた事ではないが今はそいつの手足を治させてくれ」
そう言うとラズルは龍夜の元へ向かい、【収納箱】から赤い液体の入った小瓶を取り出すと龍夜の右腕と左足へと掛けた。
「......?!て、手と足が...!」
すると消し飛ばされた筈の龍夜の右腕と左足が元通りに再生された。
「すまなかった。気が済むまで殴ってくれ」
龍夜は未だ状況が理解出来ていなかったが、ラズルを見るとゆっくりと立ち上がり再生した右腕で全力でラズルを殴った。
「っ!!」
「............」
口の中が切れて少なくない量の血が垂れるが、ラズルは気にする素振りも見せずに目を閉じながらただその場で立ち尽くしていた。
「っっ!!」
続いて龍夜は再生した左足でラズルの腹部を蹴り飛ばす。
「............」
しかし、ラズルは仰向けで倒れ込んだまま起き上がらない。
「......何寝てんだよ。さっさと起きて説明しろよ」
「......もう良いのか?同じ様に手足を切って良いぞ」
「そんな気持ち悪い絵面虎日の前で見せられるか!!てか僕も見たくない!!」
「そうか、なら説明する」
ラズルはすんなりと身体を起こすと神力を解放し、髪は漆黒に染まり龍夜にやられた傷は瞬きをする間もなく再生する。
「まず単刀直入に言うと、これはテストであり訓練であり......私情でもある」
「いや、全く意味が分からない」
「お前ら2人共神にこの世界に転移させられたんだろ?」
「な、何でそれを...?!」
「そうだ」
虎日は兄妹しか知らない筈の秘密をラズルが知っている事に驚きを隠せなかったが、龍夜は当たり前の様に答えた。
「俺も神だ」
「ええぇぇぇぇ?!?!」
「うわぁ...地球で聞いたらただの痛い奴だな....」
「お前に言われたくはない。それにしても随分と簡単に信じるんだな」
「何でかって言われたら答えられないけど....」
「....僕は人間だから、少なくともお前が絶対に人間じゃないって事だけは分かる」
龍夜の真剣な瞳には先程とは雰囲気と髪の色が全く違う無表情なラズルが映っていた。
「お、お兄ちゃんさっきから何でそんな落ち着いてるの...?しかも何か喋り方も気持ち悪いよ....」
「それは異世界転移が原因だ」
「「....え??」」
ラズルのこの発言には虎日だけでなく、今まで落ち着いていた龍夜も目を丸くさせた。
「考えてもみろ。今まで平和な世界に居た14と16のガキが突然詳しい状況も分からないまま神に力だけ与えられて知らない世界に飛ばされ、そこで手足を飛ばされて殺されそうになった相手とこうして冷静に話せる......あり得ないだろ?ランヴェみたいに気絶したりシオンみたいに逃げ出すのが普通だ」
「....シオン?あ!そう言えばさっきの黒いドラゴン居なくなってる?!」
シオンは自身に向けられていた訳ではなかったがラズルの濃密な殺気を浴び、頼まれていた事も終わった為直ぐ様飛び去ってしまった。
「逃げるって言ってもこうしてお前何もしてこないだろ?だったら逃げないだろ。何であんな事されたのか気になるし」
「ラ、ラズルさんにも事情があったんですよね?」
「日が落ちるまでまだ時間もある。事情の前にまずは異世界転移について説明する」




