初めての旅立ち[7]
「朝だよ!そろそろ起きな!」
扉が勢い良く開き、おばちゃんが大きな声で起こしに来た。
「うおぉ!ビックリしたぁ!」
「キュゥゥ!!」
「はっはっは!おはようさん!」
「ああ、おはよう」
「キュウ」
おばちゃんのモーニングコールによってすっかり目が覚めた。
「スゥースゥー....」
1人を除いて。
「....この子凄いねぇ、私の朝の挨拶で起きなかった子はこの子が初めてだよ」
「こいつを起こすのは一筋縄じゃいかないからなぁ...」
「あ、そうだ。ネラさんやっておしまいなさい!」
「キュウ?キュイ!」
ラズルに言われネラはクイナの耳を舐め始める。
ペロッ
「んひゃ//」
それにより、先程までぐっすり寝ていたクイナは直ぐ様飛び起きる。
「な、何ですか?!」
「はい、おはよう」
「おはようさん!その様子だとやる事はやったのかい?」
「おはようごさいます...やる事?」
「あっ」
昨日の事を思い出し顔を赤らめるクイナ。
「や、やってないですよ!」
「かぁ!絶好のチャンスだったのにねぇ...」
「でも、昨日よりも良い顔になってるよ!」
「はい、おばちゃんのお陰でスッキリしました!」
「ははは、そりゃ良かったよ」
「何の事だ?」
「内緒です♪」
「おいおい気になるじゃねぇか」
「女の子の秘密は聞くもんじゃないよ!」
「はぁ..まぁ、なら良いが」
「それよりもあの子は何だい?」
「あの子?あっ!やべぇ、ネラの事忘れてた!」
「あれは...もしかしてドラゴンかい?!」
「バレちまったもんは仕方がない、こいつはネラ。見ての通りドラゴンの子供だ」
「あ、あの...黙っててごめんない!」
「これまた随分と珍しいねぇ、ドラゴンなんて初めて見たよ」
「え?驚かないんですか?」
「いや、そりゃあ驚きはしたけども安全なんだろ?だったら別に気にする事ないじゃないか」
「おいクイナ、全然大丈夫じゃないか」
「あれ?もっと驚くと思ったんですが...」
「皆初めは驚くかもしれないけど、この子凄く可愛いから慣れたら大丈夫だと思うよ」
「良かったなネラ!これで普通に外に出れるぞ!」
「キュイ!」
「あ、じゃあこの子の分の朝食も用意しなきゃだね」
「本当にすみません...」
「良いよ良いよ、久しぶりの仕事で気合いが入ってるからね!」
「じゃあお言葉に甘えさせて貰います」
昨日の夕方と同じ食堂へ行き、今度はラズル、クイナ、ネラの全員が席へ付く。
朝食は昨日と同じ焼きたてのパン、さっぱりとした野菜のスープ、この村で取れたという牛乳だった。
「ご馳走さん!」
「ご馳走様です!」
「キュイ!」
「そんなに喜んで貰えたのならこっちも作ったかいがあるよ!」
「こんなに良い宿ならもう一泊したくなっちゃいますね~」
「?!」
おばちゃんの顔が昨日と同じ様に曇る。
「ごめんねぇ、今日は宿は閉めるんだよ」
「あっ、そうなんですか...残念です」
「また機会があったら寄っとくれ!」
「はい!本当にお世話になりました、ありがとうございました!」
「ではまたいつか!」
「その時はまたサービスするよ!」
(「その時までにもっと関係を深めとくんだよ!」)
(「は、はい、頑張ります!」)
「ではまた!」
「はいよ!気を付けてね!」
宿屋から出たラズル達はケインに挨拶をしに来ていた。
「あ、村長さん!とっても良い宿屋を教えて頂きありがとうございます!」
「ほっほっほ、気に入って頂けて何よりですぞ」
「私達はこれから王都へ向かうので最後に挨拶をと思いまして」
「それはそれはご丁寧に」
「では、ありがとうございました!」
「お気を付けて行って下され」
ケインに挨拶をしたラズル達は村を出る。
「村長さんに挨拶しなくて良かったんですか?」
「........」
「どうしたんですか?ラズルさん、宿屋を出てからずっと黙ったままですよ?」
「いや、ちょっとな」
「せっかく村長さんに王都までの道のりを教えて貰ったんですから、早く王都へ向かいましょうよ」
「村長もおばちゃんも何だか変じゃなかったか?」
「え?まあ、確かに違和感は感じましたけど...」
「何か隠してる気がしてならねぇ、しかも、そんなに良い事じゃなさそうだ」
「えっ!じゃあもう一度村へ行って聞いてみましょうよ!」
「でも結構離れちゃったし早く王都に行きたいしなぁ」
「ちょっ?!ラズルさん!」
「よーし、早速王都へ出発だ!」
そう言ってラズルは王都の方へと歩いていく。
「....あっ!しまった、俺としたことが忘れちまったよ」
...が、直ぐに歩みを止める。
「え?まさか、宿屋に何か忘れてきたんですか?」
「ああ、大事なもんを忘れちまった」
「まだおばちゃん達に恩を返してねぇや」
直ぐ様ラズルは全速力で村の方へと走り出す。
「ちょっ、ラズルさん?!」
「......全く、村の人が心配で全然喋らなかったんですね....ふふっ、本当にあの人は困った人ですね」
そんな素直じゃないラズルを見たクイナは、少し呆れながら『身体強化』を使って後を追うが、その表情は嬉しそうであった。




