合同演習[7]
「ではこちらの針を指に刺してからここに押し付けて下さい」
「は、針を刺すんですか?」
「....仕方ねぇだろ。水晶さんリストラされちまったんだから」
ラズルは何かとお世話になった水晶のリストラに少しだけ落ち込んでいた。
「で、でも自分の指刺すの怖いです....」
「ふふふ、そんなに怖がらなくても大丈夫ですよ。もし嫌だったら私が優しく刺してあげますよ?」
「い、いえ!この位は自分で出来ます!」
「おー!ランヴェ君は強い子ですね!」
ランヴェも年頃の男の子という事もあり、リタにやって貰うのは恥ずかしく、右手で針を持ちプルプルとゆっくり左手の親指へと近付けていく....
「ランヴェは力加減を間違え、自分が思っていたよりも深くブスリと針が刺さってしまい、血が止めどなく流れ続けながら指先にヒリヒリとした痛みが走った。その後手当てをして安心していたものの、手を洗う度に絶叫する程の痛みが彼を襲うのであった」
「........ごめんなさい、やっぱやって貰えませんか」
「ちょ、ちょっとラズルさん可哀想ですよ!」
「おっと、口が滑っちまった!」
完全に水晶さんのリストラの腹いせである。
「...ただランヴェ、1つ先輩として忠告だが....自分でやった方が良いと思うぞ?」
「誰のせいで怖くなっちゃったと思ってるんですか?!もう自分じゃ出来ませんよ!」
「........そうか」
「じゃあランヴェ君、直ぐに終わらせますので目を閉じていて下さいね!」
「は、はい!」
ランヴェは言われた通りに目をぎゅっと力強く閉じると、リタの手の上に自身の左手を乗せた。
「ちょっとチクッとしますよ~......ってわぁ!」
指が良く見える様に近くに行こうと立ち上がって前屈みになろうとすると、バランスを崩し勢い良く机に倒れ込んでしまい....
ブスッ!!
「痛っっったぁぁぁぁぁ!!!」
酒を飲んで騒いでいるどのおっさんの声よりも大きな絶叫がギルド内に響き渡った。
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「ううぅ....痛いよぉ......」
「ちょっと姉ちゃん~、うちの可愛い後輩に何してくれちゃってんの~」
「はわわ....本当に申し訳ありません!!」
「ちょっとこれは慰謝料貰わないとな~」
「はわわわわ......」
ランヴェは指先の痛みで涙目となっており、リタはラズルの悪ノリにより虐めで涙目となっていた。
「ははっ、冗談だよ。ランヴェもその位なら大丈夫だろ?」
「いや全然大丈夫じゃないです....」
「しっかりしなさい!男の子でしょ!」
「あ、あの....もし良かったら私が治しましょうか?」
すると後ろからその悲惨な光景を見ていたのか、以前クイナによって三途の川を渡り掛けたバリールを救った女冒険者が居た。
「おお!あん時の先生!是非うちの子を治してやって下さい!」
「は、はい....!//」
女冒険者が回復魔法を掛けると、幸いそこまで深くなかった指先の傷は直ぐに塞がった。
「っ...!凄い....!あ、ありがとうございます!」
「いえいえ!無事に治って良かったです!」
「サンキュー先生!今回も大成功だ!」
ラズルがそう言って笑顔を向けると、女冒険者はモジモジしながら何かを話し始めた。
「っっ...あ、あの...そのぉ....代わりと言ったら何なんですけど......私とデー....」
「あっ、こんな所に居たの?!早く私達も依頼に向かわないといけないから失礼させて貰おうよ!」
「あっ...ちょっ....!」
女冒険者が何かを言おうとした瞬間、また別の恐らく仲間であろう女冒険者が無理矢理引き摺ってその場を離れて行き、遠くで「だから1人だけズルい!」などの会話が聞こえて来た。
「ところでランヴェ、お前その紙に血付ける前に傷塞いじゃったらもう1回刺さないといけないぞ?」
「あっ......」
「俺がやってやろうか?」
「いえ!この程度自分で出来ます!」
「良し!じゃあリタ....ってまだパニック状態か」
「はわわわわ....」
「ていっ」
「痛っ!」
「じゃあランヴェ、その紙リタに渡してくれ」
「あっはい」
そうして先程の出来事は無かった事になり、無事に?ランヴェの冒険者登録へと戻った。
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『ランヴェ』種族…『人間』
闘力…350
武力…60 魔力…290
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「............」
「............」
「え、えっと2人共どうしたんですか?」
「ラ、ランヴェ君はいくつですか?」
「14ですけど....」
「...だ、大丈夫です!ランヴェ君はこれから成長しますし!寧ろその歳でこの闘力は....凄いですよ!」
「....ランヴェ、ちょっと厳しい道のりになるが........まぁ頑張れよ」
「え?え?ちょ、ちょっとどういう事ですか?!何でラズル先輩そんな優しさ目になってるんですか?!怖いです!逆に怖いです!」
その時からラズルは予想以上の大仕事だと認識し、ランヴェのイメージは350となった。




