合同演習[5]
喜ぶべきか悲しむべきか、扉を開けて目に入って来た光景は以前と全く変わっておらず、昼間だというのにあちらこちらでおっさん達が騒ぎながら酒を浴びる様に飲んでいた。
(....うん、変わってない様で何よりだ)
2人がギルドの中へと入ると、酒を飲んで顔を真っ赤にさせていたおっさん達はチラりとこちらを見るが、これまた前回同様に目を逸らした。
....が、ラズルの顔を見た瞬間に見覚えのあるおっさんが再び顔をこちらへ向けた。
「おいおいラズルの兄ちゃん生きてたのか?!」
「ん?おお!バリのおっさんじゃねぇか!久し振りだな!」
「おう久し振り!....じゃねぇよ?!今まで顔も出さずに何処に行ってたんだ?!」
「ちょっと色々あってな。中々顔を出せる時が無くてな」
(実際忘れてただけだがな!)
「がははは!まぁとにかく生きてて何よりだ!」
「おっとそうだ。おーいリタちゃぁぁぁん!!ちょっとこっち来てみろぉぉぉ!!」
バリールがギルド内に響き渡る程の大きな声を上げると、カウンターの奥から慌てた様子のリタが走って来た。
「おっと、これは準備しとかねぇとな」
「バリールさんそんな大きな声出して一体どうし....っきゃあ!」
(....うん、本当に何も変わってない様で何よりだ)
案の定慌てて走って来たリタは派手につまずいて転びそうになるが、予めこうなる事を予想していたラズルによって受け止められた。
「いったた....あっ、申し訳ありません!ありがとうございま......?!」
お礼を言おうと顔を上げると、そこには見覚えのある顔があった。
「よっ!久し振りだな!」
「............」
ラズルはそんな相変わらずのリタに陽気に挨拶をするが、リタは口を開けたまま呆然としていた。
「どうした?そんな痛かったのか?」
「........ルさん」
「ん?」
「ラ"ズル"ざぁ"ぁぁぁぁん!!」
リタはラズルの胸に飛び込むと、突然子供の様に号泣し始めた。
「ラ、ラズル先輩、これは一体....?」
「いや俺が聞きたいわ!」
結局リタが泣き止むまでの10分間程の間、ラズルは足をプルプルさせながらそのままの体勢をキープし、バリールは軽く涙ぐみながらその光景を見つめ、ランヴェは一体自分は何を見せられているのか分からないまま、ただ立っている事しか出来なかった。
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「お、お恥ずかしい姿をお見せして申し訳ありません....//」
「と、取り敢えずこれで顔拭いとけ」
落ち着きは取り戻したものの、未だにぐしゃぐしゃ顔であるリタに胸元から取り出した様に見せたタオルを渡した。
「ありがとうございます!」
リタがタオルで顔を拭いている間、何か視線を感じたラズルは周りを見渡すと、酒を飲んで顔を真っ赤にさせたおっさん達が殺意の籠った目でこちらを見ていた。
(「..........ランヴェ、ちょっとこっち来い」)
(「はい?」)
(「もしあのおっさん達が襲って来たら全てお前に任せる!」)
(「あのおっさん達....?って滅茶苦茶睨まれてるじゃないですか?!」)
(「ああ、多分俺がリタを泣かせたと思って怒ってんだろうな。見た目に反して中々良い奴らじゃねぇか!」)
(「いや、そんな事言ってる場合じゃないですよ!どうするんですか!」)
(「それはお前が考えろ!先輩命令だ!」)
(...流石悪魔の数字6、悪魔の様な先輩を連れて来ちゃた....)
「......今まで何処に行ってたのですか。私を担当に選んでくれたのに全然来てくれないから心配したのですよ....」
「あーいやー、ちょっとな?」
「私...本当の本当に心配してたんですからね....?」
「すまん忘れ....ちょっと重要な用事があって中々顔を出せなくてな。心配してくれてありがとうな」
再び涙目になったリタと同時に殺気が強まったおっさん達を見たラズルは、一瞬口が滑ったものの何とか誤魔化す事が出来た。
「う"ぅ....今度からは月に1回は顔出してくれないと私怒りますからね」
「え...?」
「分かりましたか?!」
「はい!分かりました!」
(あれ?何で俺こんな怒られてんだ?)
(ヤバいヤバい...どうしようどうしよう....)
そんな中ランヴェは1人脳内でおっさん達とシミュレーションをしていた。




