運命の人[16]
「ん?どうしたお前ら早く入って来いよ!」
「いやいやいや!無理ですよ?!」
「何じゃ、久し振りに来たと思ったら今日は連れが居たんか?」
「おう、こっちがアリアでこっちがネラだ」
「よ、宜しくお願いします」
「キュ、キュウ」
「っ!....ま、まさかそいつはドラゴンかい?!」
怪しいローブに身を包んだ老婆は、恐る恐る店の中へと入って来たアリアの頭に乗っていたネラを見て驚愕の表情を浮かべた。
「お!流石婆ちゃんお目が高い!」
「ほへぇ~ドラゴンなんて生まれて初めて見たよ」
「まぁ今日は別にこの2人を紹介しに来た訳じゃねぇんだ」
「ほぉ~、いつも店の物で遊ぶだけ遊んで帰るお前さんが今日はうちに用があんのかい」
「人聞き悪いな婆ちゃん、俺はただ何か良いものがないかと物色してるだけだって」
「まぁそもそも客なんてそうそう来ないからね、お前さんが話し相手になってくれるからそれで許してあげるよ」
「良いって事よ!」
(ラズル君....いつもはあんな感じでもやはり良い人ですね)
嬉しそうにそんな話をしている老婆を見て、アリアも何だか幸せな気分になっていると....
「....んで本題に入るんだけどさ、このドラゴンの子供いくら位で買い取ってくれる?」
「キュエェ?!?!」
ネラはそんな唐突な主人の発言に驚き、アリアの頭から落ちた。
(ラズル君....やはりいつもあんな感じですね)
「........そうさねぇ、ドラゴンの子供なんて珍しいし大銅貨1枚でどうだい?」
「そんな高く買い取って貰って良いのか?!い、いや....でも実は1つ折り入って話があるんだ」
「ほぅ....いつも話し相手になってくれるお前さんの話だからね、聞かせて貰うよ」
「ありがてぇ...!実はこの前見つけた呪いの仮面ってのを買いたいんだが...ちょっとさっきトラブルがあって金が無ぇんだ....」
「成る程ね、つまり呪いの仮面と同じ値段で買い取って欲しいと?」
「....ああ」
「............」
「や、やっぱ駄目か?」
「いや、良いとも!特別大サービスで大銀貨3枚で買ってやるよ!」
「婆ちゃん....!」
(ただ仮面を買いに来ただけなのにここまでふざけられるって逆に凄いですね....)
「....おや?ふぇっふぇ!お前さんその位にしてあげな!」
豪快に笑った老婆が指を指した先には、目を潤ませながら上目遣いでラズルの足元に頭を擦り付けているネラの姿があった。
「ん?....ってネラお前まさか本気にしてたのか?!」
「キュイィ....」
((何この子滅茶苦茶可愛い....))
「ご、ごめんな?さっきの仕返しのつもりだったんだが、まさか本気にするとは思わなくて」
「....キュウ?」
「お前を捨てる訳ないだろ!お前はこの先もずっと俺と一緒だ...!」
「っ!キュイ!」
さっきのやり取りが冗談だと分かったネラは、いつもより甘える様にラズルの頭の上へと乗った。
「お前さんら仲が良いねぇ!」
「ふっ....相棒なんでね」
「キュッ....」
「それで結局今日もこのまま帰るのかい?」
「あ、いや呪いの仮面を買いに来たのは本当だ。勿論まだ金もある」
「そうかい、じゃあちょっと待ってな!」
老婆が店の奥の方へと消えると、アリアはずっと気になっていた事を質問した。
「あのラズル君、何か良い話みたいになったのは良いのですが....結局最初の矢は何だったのですか?」
「あれか、あれはあの矢によって怪我をした奴に回復薬や解毒薬を買わせる為なんだってよ」
「滅茶苦茶じゃないですか....もし小さい子とかが入って来たら危なくないですか?」
「何でも入って来た奴の闘力が一定を越えてたら飛んで来るらしいぞ」
「へー、良く出来てますね」
そんな事を話している間に老婆がアリアが思っていたよりもシンプルな仮面を持って戻って来た。
「ほれっ、呪いの仮面じゃよ」
「お、婆ちゃんありがとな。じゃあまた来るぜ!」
「ふぇっふぇっふぇ!いつでもおいで!今度はもっと凄いのを用意してお前さんに回復薬を買わせてやるからね!」
「おう!」
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「....何か凄いお店でしたね」
「全くあそこはいつ行っても飽きないな!」
「あ、そうだアリアこれやるよ」
「いえ、あそこに行ってその仮面は間違いなく危ない物だと確信したので遠慮しておきます」
「そ、そうか」
2人で並んで路地裏を抜けようと歩いていると、突然アリアがラズルの前に立った。
「........ラズル君、いえ...王子様、私を攫ってくれて本当にありがとうございます」
「ははっ、お前が望むのであれば何度でも俺が攫い返してやるよ」
「ふふっ、じゃあその時はまたこうしてデートして下さいね♪」
「あの喫茶店だけは勘弁してくれ」
「どうしましょうかね~♪」
「あ、おい待て!あそこは駄目だって!」
そう言い残してラズルに背中を向けて歩き出したアリアの顔は、夕日に照らされたせいなのか髪と同じく真っ赤に染まっていた。




