運命の人[11]
そうして長い夜が明け、とうとう結婚式当日……
(昨夜テラスに出た時に聞こえたラズル君の声は一体....いえ、結婚式当日に考える事ではありませんね)
そんな事を思っていると部屋の扉がノックされ、4人の使用人が入って来て身支度の手伝いをし始めた。
風呂場で身体を入念に洗われ、いつもはサイドテールにしていた赤髪は綺麗に後頭部で纏められた。
そして最後に結婚式には欠かせないウェディングドレス。
「............」
自身の燃え盛る炎の様な赤髪とは真逆の純白なドレスを前に、ただ呆然と立ち尽くしていた。
「アリア様、どうかなされましたか?」
「あ、いえすみません。ただ小さい頃からの憧れでしたので....」
「左様でしたか、きっとアリア様にお似合いですよ」
「ありがとうございます」
初めて着るドレスに困惑しながらも、使用人に手伝って貰う事30分……
「わぁ....!とてもお綺麗ですよ!」
「........!!!」
使用人に声を掛けられゆっくりと目を開けて鏡を見てみると、小さい時から散々見て来た憧れのウェディングドレスを身に纏った自身の姿が映っていた。
絵本の中のお姫様と全く同じとはいかないものの、アリアの気持ちは既に絵本のお姫様そのものであった。
「ア、アリア様?!何かお気に召さない事がありましたか?!」
「....え?」
使用人の慌てた声によって強制的に現実世界へ戻されると、昨夜と同様に自身の目から涙が溢れ出ている事に気が付いた。
「す、すみません...!少し気持ちが高ぶってしまって....!」
そう言って慌てて涙を拭うが、どんなに拭おうとも涙は次々と溢れ出して来る。
「....少しだけ、少しだけで良いので1人にして貰えませんか」
「いえ...ですがそろそろ....」
「お願いします....」
「....畏まりました。では5分だけ外で待たさせて頂きます」
使用人達はそのまま何も言わずに部屋を出て行った。
「どうして急に...今までずっと耐えて来たのに....」
アリアは小さい時はやんちゃな子供であったが、母の指導によりまるで絵本のお姫様の様な上品な仕草や振る舞いを身に付けさせられ、そんなお姫様に憧れていた事もあり人前ではいつも仮面を被り続けて来た。
そんな生活を送っている内にいつの間にかどんなに辛くても、どんなに泣きたくなっても仮面を被っている間は自分を出す事が出来なくなっていた。
しかし、ラズルやクイナやフランやグラウィスやララやロロ....皆がお互いに素で笑い合っている姿を見ていると、不意に仮面が取れてしまいそうになっている自分に気が付き、いつも慌てて付け直して来た。
「すぅー...はぁー....」
そして今も今までと同じ様に取れ掛けていた仮面を無理矢理付け直した。
「....良し、やっと止まりましたね」
そうして涙を止めた後に1度顔を洗うと、仮面を身に付けたまま部屋を出て式場へと向かった。
付け直した仮面にひびが入っている事に気が付かないまま....




