運命の人[8]
しばらく走っていると馬車は〈シュラハト〉の門を潜り抜けて幅の広い道を通り、そのまま国の建造物の中でも一際目立っている王城の前へと止まると、中からしっかりと身なりを整えたアリア達が出て来た。
「お待ちしておりましたプラーミア様、遠い所をわざわざご足労頂き誠にありがとうございます。お荷物の方は私共の方で運ばせて頂きますので、皆様はこの者が王座の間までご案内させて頂きます」
「うむ、ありがとう。ほらアリア行くよ」
「っ....はい!」
ボーッとしている所を父に声を掛けられ、少し身体が跳ねたが、誰にも分からない様に直ぐ様笑顔で優雅なお辞儀をして王城の中へと入って行った。
(あ、今あいつ絶対未練を捨てて覚悟決めた。流石にもうここまで来たから完全に諦めてやがるなぁ)
(....ま、その覚悟も俺が無駄にするんだけどなぁ!ふはははは!)
バレない様に王城に入って行くアリア達の後ろを付いて行くラズル。これからアリアというお姫様を攫おうというのに思考も笑い方も完全に悪役のソレである。
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「こちらになります」
「すまないね」
豪華で大きな扉を開けると、王座に続く様に敷かれた赤いカーペットの両端には全身を鎧で包んだ兵士がずらりと並んでおり、その先には見事な王座に腰を掛けた髪の無い男とその隣に金髪の若い男が居た。
「おぉレイス殿!首を長くして待っておったぞ!」
「お待たせしてしまい申し訳ありませんゲイン王」
そう言って片膝を床に付けて頭を下げると、それと同時にアリアも隣で同じ行動を取った。
「良い良い、頭を上げよ」
「これから互いの子が婚約するというのだ、気楽に行こうぞ!」
「はっ、では失礼します」
「それにしても相変わらずアリア嬢は美しいな!」
「お褒め頂き恐縮です」
「がははは!こんな良い娘を嫁に出来るとはお前も幸せ者だな!」
「や、止めて下さい父上....!」
「がははは!そう照れるな!」
ゲインは豪快に笑いながら金髪の男の背中をバンバンと叩く。
「まぁ2人も疲れているであろう。明日の結婚式の為にも今日はゆっくりと休んでくれ。存分にもてなそう!」
「「ありがとうございます」」
「では2人をそれぞれ部屋へと案内しろ」
「「はっ!!」」
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一方その頃……
(うおぉ凄ぇ!マジの城じゃん!)
ラズルは初めて見る城に興奮し、一旦アリア達の元を離れて中を探索していた。
(何だこれ床柔らけぇ!俺の部屋とは大違いだ!)
(何だこの馬鹿でけぇ花瓶....てかこの高さから落ちて人に当たったら死ぬだろ)
ラズルが少し高い所に飾ってあるいかにも高そうな大きな花瓶を眺めていると、ガシャンガシャンと鎧を着た2人の足音と話し声が近付いて来た。
「おいおいボブ、いくら見回りだからって兜くらい被っとけよ」
「大丈夫だってマイク、城に忍び込む奴なんて居ないって!」
「うーん....それもそうだな!」
「それにしてもアリア様綺麗だったよな!」
「ああ、俺も思わず見惚れちゃったよ」
「あんな綺麗な人と結婚出来るなんてローラン様良いよなぁ....」
「ボブ、お前も早く良い嫁見つけろよ!」
「マイク!お前自分は結婚してるからってそういう事言うなよ!」
「ははは!ごめんごめん、悪かったって!そんなに怒るなよ!」
「そりゃあ俺も早くあんな綺麗な嫁欲し......」
2人がラズルの前を通ったその瞬間、先程の花瓶が落ちて来てボブの頭に直撃した。
「お...俺も結婚....したか...った....」
「「ボブゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!」」
兜を被っていなかったボブは1度死にかけたが、ラズルの気紛れにより何とか一命をとりとめた。
その後ボブは仕事外でも常に兜を被る様になった。




