合宿[5]
「これだけあれば足りるだろ」
ラズルは1度森の奥の人目のつかぬ所まで行くと、【転移】で〈カピタール〉へ戻り、城下町でいくつかスイカを買って来ていた。
「おーい!スイカ買って来たからスイカ割りしようぜー!グラウィスは手伝え!」
「分かりました!」
「ほらララさん!ラズル君がスイカを買って来てくれたそうですよ!」
「......スイカ?」
ずっと下を向いたまま砂を弄くり回していたララは、スイカという言葉に反応して顔を上げる。
「スイカ食べられるの?!」
「はい!皆でスイカ割りをするそうですから元気出して下さい!」
「私スイカ割りは得意!」
「わぁ!是非とも見てみたいです!」
「ふっふっふ....じゃあ特別に皆に私のスイカ割りテクニックを見せてあげるよ!」
「お願いします!」
ララは元気を取り戻すと、作り掛けの砂の城を壊してスイカを準備しているラズルの下へと向かった。
「....ふぅ」
「アリアさん何だか凄く手慣れていますね」
「実は私1人っ子なのですが...ずっと弟か妹が欲しくて子供のあやしかたや接し方なんかが載っている本を読んでいたんです。....まぁ結局弟も妹も居ないのですけどね」
「あー分かります!私も兄弟が欲しかったです!」
「この中で兄弟が居るのはララさんとロロさんだけですもんね」
「あ、でも強いて言うならラズルさんが弟みたいな感じかもですね」
「うふふ、確かにそんな感じかもしれませんね」
「....まぁ偶に弟らしくない時がありますが」
「ラズル君って良く分からないですよね」
「そうなんですよ!!」
アリアが自分と同じ意見だった為、クイナは突然アリアへ迫る。
「ラズルさんって普段はふざけてばっかで....やってる事も子供そのものですし、それに空気も読めません!」
そんなクイナのあまりの熱弁に思わず後退りしてしまう。
「ず、随分な言い様ですね」
「....でも、時々凄く男らしいと言いますか...なんて言うか凄く格好良くなるんです」
「クイナさんは本当にラズル君の事が好きなんですね」
「はい!」
前までは誤魔化していたクイナであったが、自分の気持ちに正直になり堂々と笑顔で答えた。
「そう言えばアリアさんは好きな人とか居ないんですか?」
「私は今はそういう方は居ませんね」
「じゃあどんな人が良いんですか?!」
「いや....それは少し恥ずかしいので//」
「良いじゃないですか!絶対誰にも言いませんから!」
「........聞いても笑わないで下さいよ?」
「私小さい時から好きな絵本があるんです。内容は魔族に囚われたお姫様を王子様が助けるという単純な恋愛の話なのですが....」
「でもそんな単純な話だからこそ憧れてしまったんです」
「この歳になっておかしいとは思いますが、いつかその絵本の王子様の様な方が現れるのではないかと思ってる自分が居るんです」
「やはり変....ですよね//」
「全然変じゃないです!憧れの人が居るなんて良いじゃないですか!」
「...っ!あ、ありとうございます」
「....でも、流石にそろそろ現実を見なくてはいけませんね」
「現実?」
「....あっ!いえ、こちらの話なので気にしないで下さい」
「は、はぁ...」
「おーい!フランとロロも戻って来たしスイカ割り始めるぞー!」
「おっと、王子様から程遠い人から声が掛かったので私達も行きましょうか!」
「ふふっ、そうですね」
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全員揃った所で早速スイカ割りを開始していた。
最初は自信満々のララから行う事となった。目隠しをしてそれぞれバラバラの指示を受け、困惑しながらも持っていた刀を振り下ろした。
しかし、振り下ろした先にスイカは無い。
「ふっ!」
刀が砂へと落ちる寸前、ラズルは持っていたスイカを丁度刀が当たるタイミングに合わせて転がし、見事スイカを割らせた。
「やった!ほら見て見て1発成功!」
「おー!流石だな!」
嬉しそうに跳び跳ねるララを素直に称賛し、何とか機嫌を取り戻させる事に成功した。
「ラズルさんナイスです!」
「危ねぇ危ねぇ、また拗ねて砂遊びし始める所だった....」
何とか危機を乗り越え、ララ以外も次々とスイカ割りに挑戦していった。
そしてラズル以外の全員が終わった所でスイカは最後の1つとなっており、最後はグラウィスが割る事になった。
「何かすみません」
「良いんだよ、俺目隠ししてもスイカの場所分かっちまうし」
「では頑張ります!」
「おう!」
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「グラウィス右!もうちょい右だって!」
「こ、こっちですか?」
「ちょっとラズル嘘は駄目だよ!そこはもっと左だって!」
「え?え?」
「グラウィス君違います!後3歩前です!」
「前ですか?」
「皆何を言ってるの?!上でしょ上!」
「上....上?!」
「騙されないで~もう真下に振り下ろせば赤い液体が飛ぶよ~!」
「待ってそれ絶対洒落にならないやつですよね?!」
後半2人組は完全に無視していたが、他の4人のどの指示に従うべきか悩んでいた。
「えっと....良し!」
悩みに悩み抜いた結果、グラウィスはアリアの言葉を信じて前に3歩進んで持っていた刀を振り下ろした。
しかし、振り下ろした先にスイカは無い。
グラウィスは目隠しを取ると、スイカは自分の右後ろに置いてあった。
「だから少し右だって言ったろ!」
「す、すみません!信用出来なくて....」
「酷ぇな?!」
「いやラズルさんを信じろって方が無理ですよ」
「....スイカが割れなかったらお前の頭を割ってやろうか?」
「グラウィスさん!!何でラズルさんを信じなかったんですか?!」
「ええ?!」
『あははははは!』
そんな愉快な笑い声が響く中....
『え、妾の出番これだけ?』
スイカを割る棒の代わりとして呼び出されたヤーちゃんは、スイカ割りが終わった瞬間に【収納箱】へと戻された。




