夏祭り[2]
ラズルとクイナは夏祭りが行われている会場へと来ていた。
碁盤の目の様な道にはやきそば屋や射的屋など様々な屋台がずらりと並んでおり、暗い夜を提灯が連なった紐が照らしている。
浴衣を着た友達同士でわいわいと楽しい時間を過ごしている者や、男女2人っきりで甘酸っぱい時間を過ごしている者、家族団らんの者も居る中2人は....
「はぁ...はぁ...でも結局俺が勝つんだけどな」
「はぁ...はぁ...ま、まさかラズルさんがあんな卑怯な手を使うとは思いませんでした」
ある意味夏祭りらしい暑苦しい時間を過ごしていた。
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時を遡る事5分……
「ほらほらラズルさん、そんなんじゃ私に追い付く事すら出来ませんよー!」
「あんの野郎...!俺が初めての浴衣に慣れてないからって図に乗りやがって!」
2人は服屋から夏祭りが行われる会場へと全力で競争をしていた。
同じく会場へ向かっていた人々は、浴衣姿の草履を履いた男と女が夜の町を全力疾走している光景を見て唖然としている。
(くそ!このままだと追い付けねぇ!)
(何か...何か良い案は....はっ!)
(....良し、これでいこう)
何か悪い事を思い付いたのか、ラズルはニヤニヤとしながら【収納箱】から黄色い何かを取り出した。
「っ...!クイナ止まれぇぇぇ!!」
突然真剣な顔で大声を上げるラズルに思わず後ろを向くが、罠である事を警戒して足は止めなかった。
「どうしました?」
「いや、やっぱ何でもない」
「ふっ、そんな分かり切った罠で私が足を止めると思いましたか?」
「残念ですが、私はもう簡単には騙されませんよ!」
「あっそ、でももしそうなら今お前が踏もうとしている物は勿論バナナじゃないんだよな?」
「........へっ?」
後ろを向いていた顔を前へ向けると、自分がこれから足を付ける場所にバナナの皮が置かれていた。
普通の人間ならば全速力で走っている最中の次に足を付ける場所に置いてある物など目で捉える事は出来ないが、皮肉にも獣人であるクイナの目はこれから自分が踏むであろうバナナと皮と、これから自分がどうなるかの運命が見えてしまっていた。
しかし、いくら目で捉えられようとも当然身体は急に止まる事など出来ず、先程見えてしまった運命を辿る事となった。
「そんなバナナァァァァァ!!!」
「ふはははは!計画通り!これぞバナナスナイパーの腕前よ!」
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そして現在に至る。
「....今考えるとお前転ぶ時の発言ビックリする位くだらないな」
「で、出ちゃったものは仕方ないじゃないですか//」
「ま、お前が俺に勝とうなんざ3000年は早いっての」
「あれはラズルさんがバナナの皮なんか投げたからじゃないですか!」
「そんなん踏む方が悪いだろ!」
「ぐっ....確かに私の不注意って事もあるにはありますが、競争でああいうのはズルいです!」
「お前もかなりフライングしただろうが!」
「....ナンノコトデスカネ」
「はいこの勝負俺の勝ち~」
「わ、分かりました!競争はラズルさんの勝ちで良いですから次は屋台で何か勝負しましょう!」
「ほーう、まだ懲りずに俺に挑んで来るか」
「あい分かった!その勝負受けてしんぜよう!」
「じゃあまずはあの射的で勝負です!」
「勝負内容はどうする?数か?大きさか?」
「それは勿論大きさです!」
「1番デカいのは....あの箱だな」
「ではあの箱を落とした方が勝ちって事で良いですか?」
「ああ。おっちゃん2人分頼む」
「あいよ!」
2人分のお金と引き換えに玩具の銃2丁とコルクの弾を計10発貰い、それは2人で半分に分ける。
「ではまずは私からいきますよ!」
そう言ってクイナは銃を構えて片目を瞑り、箱にしっかりと標準を合わせて引き金を引く。
コルクの弾は真っ直ぐには飛ばなかったが、見事箱の真ん中に命中した。
「お!」
クイナは見事真ん中に命中して期待を膨らませるが、箱は少し後ろに動いただけで倒すには全く力が足りなかった。
「あー!惜しい!」
「残念でしたねーお客さん」
「....ふむ」
「いえ!弾は4発もあるんです!まだまだ勝負はここからですよ!」
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「....ラズルさん、もう1回分だけ駄目ですかね?」
「駄目ですよ?」
その後クイナは全弾命中はさせるものの、箱を少し動かすだけで倒すには至らなかった。
「うぅ....いや、でもいくらラズルさんでも後2発であれを倒すのは無理ですよ!だからこの勝負は引き分けです!」
「それはどうかな」
するとラズルは自分の銃に弾を1発詰め、もう1発をクイナの銃へと詰めた。
「え、もしかして1発私にくれるんですか?!」
「............」
ラズルは笑顔で弾の詰まった銃を2丁持つと....
「ありがとうございま....!」
パパァン!
2丁同時に発射した。
「なっ...!」
発射された2発の弾は同時に箱の両上端に命中し、見事箱を倒す事に成功した。
「おめでとうございやす!」
「因みに中身は何なんだ?」
「それは開けてからのお楽しみでございやす。あっでも花火大会が終わってから彼女さんと2人きりの静かな時に開けると良いと思いやすよ」
「そうか、ありがとな」
「ありがとうございやしたぁ!」
「............」
「中身が気になるが....おっちゃんもああ言ってた事だし我慢するか」
「....ラズルさんは本当にズルいですね。ズルラズルですズルラズル」
「止めろ何かややこしい。それにあれはズルなんかじゃない」
「でも絶対あの時の笑顔悪意がありましたよね?!」
「おっ、金魚すくいもあるぞ。行ってみようぜ!」
「あっちょ、誤魔化さないで下さいよー!」




