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夏休み[23]

「ル、ルーちゃん?一旦落ちつ....」


「"おいそこの黒トカゲ"」


『....黒トカゲ?"もしかして私の事を言っているのですか?"』


「"貴様以外そんな薄汚い色をしたトカゲなんて何処に居る"」


「待てルーちゃん、その言葉俺の使い魔に凄い刺さってる」


『ふむ...私が薄汚い色をしているのであればあなたの髪も薄汚い....いいえ、あなたのは汚い色ですね』


「貴様、それ以上何か余計な事を言ってみろ....""殺すぞ""」


『私を殺すと?ふんっ、いくら私の小手調べの攻撃を防いだからと言って下等生物ごときが随分な口を利くものですね』


漆黒のドラゴンはルーちゃんを鼻で笑うと、更に畳み掛ける様に罵倒(ばとう)を続けた。


しかし、そんな罵倒を最後まで聞く事無く目の前の()()を排除しようと心臓部目掛けて貫手を放つが、当たる寸前でラズルが腕を掴んで止めた。


「......っ!ラズル様、何故止めるのです?!」


「確かに突然攻撃されて俺も腹は立っている。でも取り敢えず聞ける状況なら事情だけは聞くべきだろ?」


「まぁその事情がくだらねぇもんだったら....」












「""遠慮無く殺せ""」


「っっ?!わ、分かりました!」


「んで?お前何しに来たの?」


『あ...わ....っ....!』


先程までは余裕の表情だった漆黒のドラゴンはその場に居るだけで押し潰されてしまいそうな程濃密な殺気に包まれて身体が固まっていた。


「ほらー、ルーちゃんがあんな事するから怖がってるじゃねぇか」


「いや....恐らく私のせいではないかと」


「ほーらドラゴンさん、そんなに緊張しなくても良いですよー?」


『あ...が....』


「"事情喋んないと殺すぞ"」


『説明させて頂きます!!!』


「ったく、喋れんならさっさと喋れっての」


(ラズル様、それでは神々しさの欠片も無いただのチンピラです)


『あ、あの、そちらの木陰に隠れているのは....』


「木陰?あぁネラか、もう出て来て良いぞー!」


「....キュウ?」


事前に()()()()()を察知していたネラが木の後ろからひょっこりと顔を出す。


『..!やはり!』


「あ?ネラがどうか....あれ?」


ふと何かに気が付いたラズルは目の前の漆黒の鱗に赤い目、そして2本の黄金の角を持つドラゴンと、同じく全身を漆黒の鱗に包んだ赤い目と黄金の角を2本持つ自身の使い魔を何度も見比べる。


「............」


「キュ、キュウ?」


するとラズルは満面の笑みでネラに近付き....












「警備員なんか呼んでみろ!お前の()がどうなるか分かってんだろうなぁ?!」


ネラを抱き抱えて意味の分からない事を言い出した。


『「ええぇぇ(キュイィ)?!」』


(ラズル様、それでは神々しさの微塵の欠片も無いただの誘拐犯です)


「娘の命が欲しくば大金貨100枚用意しろ!」


「ガアァ!!」


「痛っ!」


目の前のドラゴンがネラの親なのだと察して変な気を起こしたラズルは、抱き抱えていた自身の使い魔に喉を噛まれた事により正気に戻った。


「キュ?!」


しかし、神力を解放したラズルの喉には牙が通らず、逆に噛んだ方がダメージを負っていた。


「お前この前の時もそうだけど主人を殺そうとしてんだろ?!何だ喉を噛むって?!俺じゃなかったら死ぬわ!」


「キュイィ!!」


(あぁ、小動物と(たわむ)れているラズル様もお美しい....)


『ふふっ』


「「あ(キュウ)?」」 


『あ、申し訳ありません。娘が随分と懐いているものですから』


ドラゴンは目の前の男と自分の娘が仲(むつ)まじい様子でじゃれ合っている姿を見て、男が悪人では無いと判断した。


「あ...そうだった。それについて何だがやっぱ....」


『はい、娘を探し出して連れて帰る予定でした』


「........ネラ」


「............」


「お前が決めろ」


「キュウ?!」


「お前のお袋さんと...お袋さんだよな?」


『はい、お袋さんです♪』


「...ごほん、それでお袋さんに付いて行くか、このまま俺と来るかお前が決めろ」


「キュイ!」


「そんな直ぐに決められる事じゃないのはっ....て決めんの早ぇよ?!」


『うふふ、即答ですね』 


ドラゴンは娘のあまりの決断の早さに思わず笑みが溢れる。


「もう少し悩め!悩んでから俺と来い!」


「キュウゥ?」


『いえ、良いんですよ。娘が決めた事です』


『....それに、あなた様になら娘を任せられます』


「お、おう」


『娘よ...いいえ、今はネラと言う名前を頂いているのですね』


『ネラ、頑張りなさい』


「キュイ!」


『それではラズル様、娘を宜しくお願い致します』


「おう」


『それでは私はこの辺りで....っ!』


「まぁ待てって」


ラズルはそう言い残して飛び立とうとするドラゴンの尻尾を掴んで地面へと落とす。


『な、何でしょうか?』


「いや、まだ俺達を攻撃した()()()()がまだだろ?」


『お、お仕置きですか...?』


「いやー、丁度良かった!今ちょっと天にも昇る程美味しいシチューが残ってるんだが、このまま残す訳にはいかないだろ?それを食べてって貰いたいんだ」


『そんな事でしたら是非とも頂きます!』


「おー、それは助かる。でもその姿だと一瞬で食べ終わっちゃうだろ?だからあの時の姿になって味わってくれ!」


『っ?!....気付かれていましたか』


すると突然ドラゴンの身体が輝き始め、光が収まるとそこには先程宿屋ですれ違ったシオンと名乗った女性が立っていた。


「良し!じゃあこっちに来てくれ!」


「分かりました!」


先程ラズルを悪人では無いと判断したが、この後その判断が誤りである事に気が付かされる事になるとはこの時のシオンはまだ知らない。

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