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夏休み[18]

2人は村長の家を後にすると、例のおばちゃんの宿屋の前へと来ていた。


「すぅー...はぁー...すぅー...はぁー...」


そしてラズルは宿屋の扉の前に立ち止まると、心の準備をする為に深呼吸を繰り返していた。


「そんなに緊張してるんですか?」


「うん、ある意味神生で1番緊張してる」


「もー!いくら久し振りだからってそんな緊張する事無いじゃないですかー!」


そう言ってクイナはニヤニヤしながらラズルの腕を宿屋の中へと引っ張る。


「お前絶対分かってやってんだろ?!」


「えー?何の事ですかー?」


「いや分かった!分かったから取り敢えず一旦離せ!」


「やっと覚悟を決めましたか?」


「やっぱ分かってんじゃねぇか....」


「そもそもあのおばちゃんがあの2人みたいになってるっていう前提がおかしいんだよ」


「あのとは一体どういう意味だい?」


すると扉の向こうから聞き覚えのある声が聞こえて来た。


「っ...!こ、この声は!」


扉がゆっくりと開いていき、現れた人物は....


「おばちゃ....って誰ぇぇぇ?!」


神力を解放したラズルと同じく漆黒の髪をショートにした赤い目を持つ20代程の綺麗な若い女性であった。


「え、何おばちゃん整形でもしたの?いやもうこれ整形というか改造の領域だな....」


「しばらく見ない内に随分と失礼な口利くようになったじゃないか!」


するとその女性の後ろから以前と何も変わらないおばちゃんが出て来た。


「あ、おばちゃん!いやー良かった良かった。てっきり悪の組織に連れ去られて改造でもされたのかと思ったぜ!」


「はっはっは!冗談が上手くなったじゃないか!........もう1回言ってみな?」


「いやー、本日もお美しい限りに御座います」


「やだよーもう!こんなおばさん口説いてどうすんのさっ!」


「「あっはっはっは!!」」


そんな冗談をお互いに交わしながら豪快に笑い合う。


「あの、お2人共邪魔になってますよ?」


「あ、そうだおばちゃんこの人は?」


「うちのお客さんだよ」


「初めてまして。この宿屋でお世話にならせて頂いたシオンと申します」


「あっどうもラズルです」


「どうもクイナです。宜しくお願いします」


2人はシオンと名乗る女性の挨拶に思わず堅い挨拶を返してしまう。


「では、少々急いでいますので私はこれで失礼させて頂きます」


「あっはい」


シオンはそのまま宿屋を出て何処かへと行ってしまった。


「いやー、凄ぇな」


「何だかこっちまで堅くなっちゃいましたね」


「それもそうだがあいつ......」


「あの人がどうかしたんですか?」


「んー...いや、何でも無い」


「えー、教えて下さいよー」


「こら、うちの宿屋の前でイチャ付かないでおくれよ。イチャ付くなら宿屋の中でイチャ付きな!」


「すまん、今日は泊まりに来た訳じゃ無いんだ」


「おやおや、じゃあこんな所まで一体どうしたんだい?」


「仲間と近くの森でキャンプしに行くんだ。だからおばちゃんや村長にも挨拶をと思ってな」


「あの()()()があたしなんかに挨拶しに来てくれるとは嬉しいねぇ!」


「....おばちゃん、その英雄ってのは何だ」


「ん?広場の銅像見なかったのかい?今やあんたはこの村の英雄さ!」


「あー、だから村の皆さんソワソワしながらラズルさんを見てたんですね」


「そうなの?!」


「入った時からずっと物陰から見られてましたよ?」


「マジかよ...敵意が全く無かったから気付かなかった....」


「勿論村の皆もあんたを崇めてるけど、特に村長とその孫娘さんは凄かったねぇ」


「っ...!そうだった!あの2人一体どうしたんだ?!特に爺さん!!」


「村を救ってくれたあの日から村長と孫娘さんは特にあんたの事を崇め出してねぇ。ついこの間ラズル教とかいうのを立ち上げようとしてたよ」


「あの2人何考えてんの?!」


「でも流石に私が止めといたから安心しな!」


「ありがとう...!さっきおばちゃんが改造されたとか言ってごめんな....」


「はっはっは!そんなの気にしなくて良いよ!」


「いや、本当に助かった...そんなん立ち上げられちゃ目立ってしょうがねぇ....」


(今も十分目立ってますけどね)


「いっけね!そろそろ戻んないとあいつら待たせちまう!」


「森の中は危険だから気を付けるんだよ!」


「おう!おばちゃんも元気でな!」


「また近くに来たら寄らせて貰いますね!」


「今度は泊まってっておくれよ?」


「ははっ、そん時はまた豪華な飯を頼むよ」


「任せときな!」


そうして2人はフラン達と合流すると、キャンプをする為近くにある森へと向かった。

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