夏休み[17]
「そう言えばラズル、その寄りたい村って何ていう名前なんですか?」
「え?名前?」
村へと向かう途中、グラウィスが唐突にそんな質問をして来た。ラズルはちらりとクイナを見るが、クイナも分かっていない様で首を横に振った。
「........始まりの村?」
「絶対周りにスライムしか居ないですよね?!」
「村の周りには魔物は見掛けなかったが、その村の近くにあるこれからキャンプしに行く森でネラと出会ったんだ」
「え?!そうなの?!」
「あの時は本当に驚きましたよ...」
「へぇー、ネラちゃんと出会った森ですか」
「そう言えば気になってたんだけど、何でこんな王都から離れた場所にしたの?その村に寄りたいから?」
「まぁそれもあるが...違う」
「ネラと出会った思い出の場所だから~?」
「それもあるけど違うな」
「じゃあ何でなんだ?」
「いや...だって王都の近くの森だけは絶対に行きたく無いし....」
「え?何で?」
「....お前ら全裸のゴブリンの集団と合同キャンプしたい?」
「「「「「「あ、遠慮しておきます」」」」」」
「だろ?だが安心したまえ諸君!これから行く森はそんなに強い魔物見掛けなかったから安全だぞ!」
「ラズルさんがそう言うと何か安全じゃ無く聞こえますね....」
「....確かに俺ら森に良い思い出が無いな」
「気持ち悪い化け物に襲われたり、全裸のゴブリンの集団に襲われたり...うっ!思い出したら頭と鼻が....」
「いやでも今度こそ大丈夫だろ。三度目の正直ってやつだ!」
「...二度ある事は三度ある」
「こらそこ止めなさい」
フランの不吉な発言に思わずツッコミを入れる。
そんな話をしながらも、何だかんだ明るく会話をしながら歩いていると目的の村へと到着した。
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「わぁ...懐かしいですね!」
「もうあれから3ヶ月ちょいも経ったのか........あれ?3ヶ月?」
「....いや3ヶ月か」
元々人とは時間の感覚が違うラズルであったが、この3ヶ月の内容が今までの神生と比べてあまりにも濃すぎた為、更に時間の感覚がおかしくなっていた。
「ラズルさーん!早く行きましょうよー!」
「ああ」
村の中へと入り、まず最初にラズル達の目に入って来たのは見覚えの無い土台に『英雄』とだけ彫られた立派な男の銅像であった。
「あれ?こんなの前に来た時あったっけか?」
「いや、多分無かった気がします」
「随分と立派な銅像だね」
「『英雄』...?この村のという事でしょうか?」
「今から俺達村長と宿屋のおばちゃんに挨拶しに行くから、その時聞いて来るとするか」
「じゃあ俺達はこの村をぶらぶらとしています」
「分かった。じゃあ行くぞクイナ」
「はい!久し振りなので楽しみですね!」
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「おーい爺さーん!遊びに来たぜー!」
「はいはい少々お待ちを......っ!!」
「あれ、爺さん随分と若くなったな...って!」
「ラズル様ー!!」
村長の家の扉の前で村長を呼んだ筈が、中から出て来たのは村長ケインの孫娘である茶髪の少女ニーニャであり、ニーニャは家から出てラズルを見るなり飛び付いて来た。
「ちょちょ待て待て爺さん、いくらそんな可愛い見た目だからってあんたみたいな爺さんに抱き付かれてもちっとも嬉しか無ぇっての」
「可愛い....えへへ//」
「ラズルさん、そんな可憐な少女の何処をどう見たらあのケインさんに見えるんですか」
「あのとは随分と酷い言い方ですな....」
すると中から本物の老いぼれ村長、ケインが出て来た。
「村長が2人?!」
「ラズルさんもう良いですよ」
「あ、そう?じゃあこの辺にしとくか」
「これニーニャ、ラズル様に迷惑だろう。....直ぐ様そこを退いて儂と変わりなさい」
「「....ん?」」
「嫌だ!いくらお爺ちゃんの言う事でもこれだけは譲らないから!」
「まぁ確かにそろそろ離してくれると助かる」
「そんなぁ....」
ニーニャは納得のいかない顔をしていたが、ラズルの頼みという事もあり素直に離れた。
「じゃあ次は儂が....」
「爺さんあんたは来んな!」
「そ、そんなぁ....」
(「....何だか2人共様子がおかしいですね」)
(「いや爺さんに関しては様子じゃなくて頭がおかしい」)
(「ニーニャさんはまだ分かりますけど....ケインさんは1度医者に診て貰った方が良いですね」)
「して、ラズル様!本日はどの様なご用件ですかな?」
「いえ特にこれと言った用は無いのでここらで失礼させて頂きます」
ラズルは嫌な予感がして直ぐ様その場を離れようとしていた。
「そうでしたか。ではごゆっくり!ほらニーニャ、戻るぞ」
「ラズル様!何か用があったら何でも言って下さいね!」
「お、おう」
そう言い残して意外にも2人はすんなりと家の中へと戻って行った。
「......宿屋行くの辞めるか」
「さぁ!宿屋のおばちゃんに挨拶しに行きますよー!」
クイナにとっては完全に他人事だった為、ラズルの意見は完全に無視して宿屋へと向かう。
「......これからおばちゃんにも抱き付かれるのか...?」
そんなある意味ホラーな想像をして身体を震わせたが、覚悟を決めるとクイナの後を追って行くのであった。




