第8話 戦争の開始
俺が17歳の時、上空の国は地上の国に向けて攻撃を始めた――。
「イルア国王様!大変です!!ドクトル村が上空の国から攻撃に合いました。」
「なに!?ヤツらめ!よくもやってくれたな!!我々もすぐに上空の国を攻撃せよ!!」
突然の報告に俺は何かの間違いじゃないかと思った。
「どういうことですか!?上空の国が攻撃してくるなんて!!」
「言っただろう!これが本当の上空の国の姿だ!!あの姫に何を吹き込まれたか知らんが、結局、奴等は地上の国を侵略しようとしてきたではないか!?」
リュシカどうしてだ?なぜ攻撃なんて……。
これでは国を自由に行き来出来るようにするなんてさらに難しくなってしまう……。
俺はあの見張り塔に来ていた。今はライザとの情報交換の場にしていたが、今日は城の者達がドクトルの村の状況を見ようと大勢来ていた。
遠くのドクトルの村の方面から黒い煙が昇っているのが見える。
俺は隣にいるライザに小声で話しかけた。
「ライザどうして攻撃してきたと思う?」
「うーん。分かりませんが、もしかしたら、上空の国も姫の思いと王の思いは別のところにあるのかもしれませんね。アルト王子とイルア国王のように……。」
俺は苦い顔をして上空を見上げた。
「とにかく俺は被害にあった村へ救助に行ってきます。」
「ああ、頼むよ。ライザ。」
ライザはこの2年で一番下っぱの兵士から実力の高さを認められ隊長の補佐に抜擢されていた。
もう少し大きな功績を残せたら俺の側近の騎士として抜擢したいと思っているので、なんとかライザには頑張ってもらいたい所だ。
ライザを見送ると俺は密かに城を抜け出し、下町の裏通りへ向かった。
最初に来たときは裏通りのヤツに絡まれたりしたが今はすっかり顔馴染みになった。
そして、彼らは俺の思いを理解し同じ志を持つ同志となってくれた。
元々、裏通りの人間は社会から省かれた者達の溜まり場でその中にはミクシアの者も何人かいた。
俺はライザを通して彼らと親しくなりそして、彼らの不満や国に対しての思いを聞いた。俺は彼らがもっと自立して生活出来るように積極的に仕事の斡旋をしたり、必要な知識を学ばせた。そして、それぞれが社会と関わり仕事をし、何人かは兵士として城で勤務している。
「みんな、もう知っているだろうが、ドクトル村が上空の国に攻撃された。みんな分かっていると思うが、上空の国は100年前に地上の国が侵略しようと攻撃を受けている恨みがある。もしかしたら、今回はそれが関係しているかもしれない。どうか、皆は上空の国への考えを誤解しないように……俺はなるべく早くこの戦争に決着をつけるように全力を尽くす。」
「ああ、分かってるよ!アルト王子!ここにいるヤツらはみんなアルト王子の考えを理解している。地上の国と上空の国が再び助け合って自由に交流出来るようにする!大丈夫!俺達はアルト王子にたくさん助けて貰った!こういうときに恩返ししないでどうするんだよ!!なあ?みんな!!」
「おおー!そうだぞー!!」「俺達はアルト王子の味方だ!!」
他の裏通りの者達もみんな同調して次々と声を発してくれる。
裏通りを仕切っているカンドルは男気ある青年だった。そして、俺が初めて裏通りに来たときに絡んで来た男でもある。しかし、今はカンドルを中心に裏通りはよく纏まっていた。本当に頼りになる男だ。
俺は彼らの意思を確認すると再び城へ戻った。