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第4話 王子と姫の約束②


なんとか誰にも見つからず俺達は城の中の自室に到着した。


「はあ!良かった!誰にも会わなくて!!」


「すごくドキドキしたけど、なんだか楽しかったわ!!」


俺達は上手く塔から部屋まで移動できた事に満足して顔を見合わせてニッと笑った。

そして、広いベッドに横になる。


「ねえ、上空の国はどんなところ?」


俺はリュシカの方を向いて寝直した。


すると、リュシカも俺の方を向く。


「私が住んでいるお城はこんなに頑丈な作りではないわ。もっと風通しが良いように作られてるの。ほら、お天道様が近いからか地上の国よりも暑いのよ。地上の国は夜は寒いのね。お布団が厚くて暖かいわ!」

リュシカはニコリと笑った後、少し視線を落とした。

「私……地上の国に来てみて良かった。地上の人は恐ろしい武器で上空を襲ったって聞いていたから、もっと怖い所かと思っていたけれど……。見張り塔から見た街は素敵で湖は先が見えないくらい広くて、水の上をユラユラしてる乗り物?も乗ってみたいわ!また、昔のように自由に行き来して助け合えばいいのに……。それに、アルトにも会えたし……。」


少し頬が赤くなったリュシカがすごく可愛い。


「うん。俺もリュシカに会えて良かったよ。みんなも、もっと上空の国の人と関われば、仲良くなれると思う。」


俺はリュシカの手を優しく包んだ。

リュシカは少し驚いた顔になって、でも優しく微笑んだ。


「ねえ。私達がいずれ女王と国王になったときには自由に行き来出来るようにしましょうね。」

リュシカは眠くなって来たのか目が閉じかけている。


「うん!絶対にそれがいいよ!」


「……そしたら、もっとアルトとも……気軽に会えるようになるね。それ……に…………。」


「リュシカ?寝ちゃったか……。知らない国に一人で来て疲れたよね。おやすみ。」


リュシカの隣で俺もすっかり寝落ちてしまった。

途中でシュートが部屋に入ってくるかもしれないから起きているつもりだったのに……。





コンコン。ガチャ。


「アルト様。おはようございます。朝でございます。」

シュートがいつものようにアルトを起こしに部屋へ入ってきた。


「……んー。シュート……。!!」

俺はッバ!!と起きて「部屋の外で待て!!」とシュートへ命令した。


シュートの声で目が覚めて一瞬頭がボーっとしていたが隣で眠っていたリュシカが俺の腕にしがみついてきて、すぐに頭が冴えて今の状況を思い出した。


「アルト様?どうされたのですか?いつもはそんなこと……」


ベッドに近付いてきて、目を見開き止まったシュート……。


しまった……髪の毛も隠れていない……。


イヤな汗が背中を伝う。

静まりかえった部屋の中で3人の動きが一瞬止まり、すぐに僅かな空気の動きを敏感にとらえ皆が同時に動き出した!


俺はリュシカの手をとりベッドから飛び降りた。

「リュシカ逃げるよ!」

リュシカもそのつもりだったのだろう。素早い動きだった。


同時にシュートは叫びならが俺たちを追いかける

「上空の者がいるぞー!!捕らえよー!!!」


すぐに衛兵が部屋に入ってきて俺達はテラスに逃げるしかなかった……。



「それ以上近付いたら、俺はここから飛び降りる!」


「アルト様!その者は上空の国の者です!!離れてください!!全くどこから入り込んだんだ!?」




騒ぎを聞き付けて国王である父上と母上まで俺の部屋へやって来た。



「アルト!これはどういうことだ!?」


「父上、彼女は何もしていない。ただ、地上の国がどんな所か興味があって来ただけだ。帰るための術が使えないというから僕の部屋で休ませてあげていたんです。」


鋭い視線をリュシカに向けた父上は

「上空の国の者。これはそちらからの宣戦布告か?今度は上空の国が地上の国を侵略するつもりか!?」

父上からの問いにさっきまで俺の陰に隠れて震えていた彼女は姿勢を正すと一歩前に出た。


「お初にお目にかかります。上空の国の姫リュシカにございます。私は決してこの国を侵略するつもりなどございません。ずっと上空の国から地上の国を見ていて、どんな所なのだろうととても興味がありました。昔は私の国の者が地上の国へ来ていたということを知り、どうしても来てみたくなったのです。私が未熟者だったばかりに帰ることが出来ず、アルト様にこ迷惑をかけてしまいました。申し訳ございません。」


凛として父と対峙するリュシカは上空の国の姫としての気品に溢れ同じ歳であるはずなのにすでに女王のような威厳を放っていた。


俺はなんて凄いな子だろうと見惚れていた。


父も周りの大人たちも息を呑んで彼女を見ていた事だろう。


しかし、父はニヤリと笑い

「話はわかった。捕らえろ!!!」

と衛兵達に命令し俺は彼女の手を取り、再び後ろに匿うと

「これ以上近付いたら俺はテラスから飛び降りる!!」と再び叫んだ。


そして、小声で「リュシカ。浮遊の術を!俺がこの場を押さえられている内に逃げて!!」


「アルト……ありがとう。」


リュシカは昨日のように手を難しい形にして呪文を呟く。


「ヨイレイセルドサカツヲチトンテ。エマタエタアヲラカチニレワ。」


するとフワリと風が流れてリュシカは浮かんでいた。


「う、浮いたぞ!!」


それを見た衛兵達は逃がしてはいけないと一斉に彼女に群がる。リュシカはさらに空高く浮かぶと

「アルト!ありがとう!必ずまた会いましょう!今度は昔みたいにまた自由に交流出来るように!!約束だよー!!」


「必ず!!約束だよ!!リュシカ!!」


彼女は空を高く高く昇っていく。

まるで天使のように――。



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