第2話 地上の国と上空の国②
「ねえ、君どこから来たの?」
その質問に彼女は空の上を指差しニッと笑った。
「やっぱり!上空の国から来たんだね!!」
「そうよ!ねえ?あなたはこのお城の人よね?お願い!!私をしばらく匿ってくれない?」
「……へ!?」
「地上の国に来たのはいいんだけど浮遊の術が使えなくて帰れなくなっちゃったの!でも、地上の国の人達は恐ろしい武器で私達を襲って来るんでしょ?だから、しばらく匿って!!お願い!!」
「……俺も地上の人間だけど?」
「だって君は私の事を助けてくれたじゃない!それに今も私の事を襲ってこようともしないわ!何より王子さまみたいでカッコいいから!!」
彼女はグレーの瞳をキラキラさせて俺の瞳を真っ直ぐ見ていった。
言われ慣れているハズの言葉なのに彼女に言われると頬が少し熱くなる。
「えっと……ありがとう。おれ、この国の王子でアルト。君は?」
「わあ!本当に王子様だった!私はリュシカ!実は私も上空の国の姫なんだ!」
「そうなの!?だったら尚更、ここにいたらいけないじゃないか!!とにかく下の部屋に行こう!君の髪色は目立つから誰かに見られたら大変だ!」
俺はリュシカの手を取ると見張り塔の中に作られている休憩にでも使っていたのだろう部屋に彼女を連れていった。
「この塔は今は使われていないから、とりあえずこの部屋にいれば見つからないと思う。さっき、ふゆう?の術が使えないって言ってたよね?それが使えないと帰れないんだろ?」
「そうなの!どうしよう……。」
「飛空船を使えば君を上空の国の近くへ連れていくことは出来るけど、まず上空の国は膜で覆われているから飛空船が国の中へ入ることはできない。それに、飛空船を使う為に君がこの国にいることがバレたら大人たちは人質にでもして上空の国に無茶な要求を突きつけるかも……。」
「そうかあ。やっぱり私が自分で帰るのが一番よねー。」
「どうして術が使えなくなったのか心当たりはないの?」
「うーん。たぶん魔力切れ……?」
「魔力切れ?」
「そう。私達が魔力を使って術を使えることは知っている?」
「ああ。物を浮かせたりできるんだろ?あの島もその力で浮いていると聞いたよ?」
「そうなの!でも術を使う為には魔力という力が必要なんだけど、術を使いすぎると魔力がなくなってしまうの。」
「遊びすぎると、体力が無くなるみたいな感じ?」
「そうそう。休めばまた回復するから。でも、ここに来るためにこんなに魔力を使うとは思わなかった!私……結構、魔力の力は大きいのになあ。」
「そういうものなの?」
「そうよ!王族の家系は元々魔力の力が他の人よりも大きいの。私はまだ10歳だけれど、下町の大人よりも数十倍の力があるわ!そして、これからまだまだ魔力は大きくなっていくの!」
「10歳!同じ歳だね!王族の家系は特別魔力が大きいんだね!凄いなー!!」
「ええ。昔から大きな魔力をもつ王族だけが浮遊術を使えるのよ!私も大人になったら島を浮かせる為に聖堂に籠りっきりになってしまうんでしょうね……。」
なんだか寂しそうな顔……。
「だからその前に地上の国へ来てみたかったの……。」
瞳を伏せた顔が悔しそうに歪んだ気がした。
ぐー!!
静まり返った部屋に突然間抜けな音が聞こえて、俺達はお互いビックリして顔を見合わせた。
「アハハ、お腹すいちゃった!」
リュシカはパッと明るく笑ってお腹を擦った。
「ハハハッ!何か食べるものわを持ってくるから待ってて!」
リュシカ……不思議な子だな。明るくて、表情がクルクル変わって……。
上空の人間は恐ろしい術を使って地上の人間を傷付けて……地上の人間は術を恐れて、上空の国と戦になったと聞いたけど、彼女はそんな恐ろしい術を使うようには見えないし人を傷付けるようにも見えない。どうして地上の人間と上空の人間は戦争をしなければならなくなったんだろう?
まだ、子供の俺は知らなかった。本当の事を……。本当は地上の国が上空の国を自分達の国にするために戦争が始まったんだって……。