エピローグ 〜始まりの始まり〜
至らぬ点が多いと思いますので、忌憚の無い御意見頂けると作者として嬉しく思います。
少しでもこの作品を好きになって頂けるように努力していきます。
僕の名前は渡部龍太郎。おっと、わたなべじゃないぜ。わたべだぜ。
肌が黒くて、足が長くて、外国人みたいだなと幼少期に虐められていたこと以外は普通の高校生。
そんな僕にも好きな人が出来た。その名前は「園部美優」。字の通り優しくて可愛い高嶺の花だ。
そんな彼女に意を決して告白しようと決めた。
放課後体育館裏で僕は彼女を待っている。成功するとは微塵も思っていない。ただこの気持ちを伝えられればそれだけでいいと、この時の僕は思っていたんだ。
「どうしたの?渡部くん」
園部さんが僕に話しかけてくれる。
それだけで僕は幸せな気持ちになれた。
でも、今は違う。気持ちをしっかりと伝えるんだ。
「あ、あの、園部さん!」
「なに?」
「あ、あの僕ずっと前から園部さんのこと無意識に目で追うようになっていて、気付いたら好きになってました。僕なんかが厚かましいって分かってます。でも、気持ちだけでも伝えたいってそう思ったんです。」
「……」
彼女は黙って聞いてくれている。
「好きです。付き合ってください。」
長い間、二人を沈黙が包んだ。どれくらいの時が経っただろうか。
とても長い時間に感じられたその静寂を彼女の言葉が破った。
「ありがとう。嬉しい。こちらこそよろしく」
「…え?」
それからのことはよく覚えていない。ただ幸福感と浮遊感、現実ではないような感覚に囚われていて以降それきり、目の前に迫るトラックに轢かれるまで僕はひかれたことに気づかなかった。
どうしてか僕は目を覚ましている。
━ああ、僕は助かったのか…もう死んだと思っていたのにな。こんな所で今まで人生の不運を取り返すような幸運が運ばれてくるとは…
「おぬし、死んでおるぞ〜」
突然聞こえた声に僕は驚いた。というか目の前に居るその人物にどうして今まで気づかなかったのであろう。
「僕死んでいるんですか」
僕は一人の人間 渡部龍太郎として、目の前の老人に聞いてみた。
「おお、死んじゃったぞ〜」
「そうですか。」
「まあ、経緯を話すとなぁ。あの世界では、生まれた時に幸運と不運のバランスが決まるんじゃがお主は不運の気が強すぎてのぉ。本来ならあんなに人気で気立ての良い女子と付き合えるなどあってはならん事なんじゃわ。あの娘に告白に成功したという幸運に対してバランスをとる為に不運をおぬしに運んでやったら、死んじゃったんじゃなー。ごめんのぉ〜」
やっぱり俺なんかが彼女と付き合えるという幸運はとてつもないものだったんだな…。今までの不幸な人生を基準に考えたら理解出来なくはないけど、易々と納得出来るものでもない。
それに今の状況には謎が多すぎる。
「それで、死んだら皆ここに来るんですか?」
「いや、違うぞぉ〜。おぬしの死は予想外で余りにも可哀想じゃったから。前世の不幸な人生に対してバランスとって幸運な人生を送らせてあげようと思ってのぉ。」
「は、はぁ…」
あの後、神様であるということを明かされて色々と融通して貰った。
最初は適当な人(?)だなぁ。なんて思っていたはずが話をする度に少しづつ人情味に溢れた良い方なのだとわかった。
「じゃあの、その能力とお主が望んだあの謎の環境があれば向こうの世界では困らんじゃろ。もちろんバランスをとるんじゃから来世は絶世の美男子じゃな。努力を怠らず良い人生にするのじゃよ。」
色々と皮肉混じりの応援をされた僕は
「はい。色々とありがとうございました。不貞腐れてた前世の自分に誇れる人生を送れるように精進していきます。」
目の前が光に包まれ。そのまま意識を失った。
ご愛読ありがとうございます。