ドミトリー(ブラン)
ユキがディスプレイルームを退出してから少ししてブランがコナーの元へとやってきた。
「さっきのことユキから聞いたよ。何かあったの?」
「やめてくれ、僕は本気なんだよ。」
コナーはブランが何を言おうとしているのかを先に読み取ったかのように答えた。
「コナーが自分のことだけのために動く人じゃないことは分かってる。ただ、その提案が本当の本当に本気なら僕たちのコミュン自体が自由じゃなくなるのは確実だと思うんだ。別に僕たちは現状に困ってないしこれからも昔に聞いたような不自由にさらされることは二度とないはずさ。でも、コナーがそういうことをするならこれからの自由は保証できない…。もしかしてコナー…。」
「ブランの言ってることは全部正しいよ。そう、もしかしたら僕は病気にかかってしまったかもしれない。サブコミュンでは珍しい話でもないだろう。ただ、僕がこうなったのは君の部屋にあったこの本を読んでからなんだ。」
そう言うとコナーは今の時代では珍しい紙の本をブランに見せた。コナーが彼の目を見ると一瞬瞳孔が開いたように感じた。ブランは今から千年前の文化をとても気に入っていて、彼の部屋にはその当時の重みと匂いのある紙の本や千年前に一部で流行っていたといわれている二次元コンテンツを元とするキャラクターの複製模型などが置かれていた。今のような空間技術や個人製造が発達していなかった当時では複製品が大量に流通して消費されていたと言われている。
「これを持っていると知られたらブランは僕なんかよりもよっぽど病気だと思われるだろうね。」
ブランは少し赤面しつつも冷静に言葉を返そうと少し黙った。
「僕は反秩序勢力とは正反対だよ。趣味だよ。ちなみに僕はその本はちゃんと読んでいないんだ。」
「これはいいものだよ。是非読んでほしい。」
ブランは自分の持っているモノについて他人の方がよく知っているというのがあまり良く思わなかった。反秩序的なものであることは知っていたから少し遠ざけていたがずっと興味を持っていたので、とりあえずそれを読んでみることにした。