1・ジャンヌ・ダルクは考える
「あ〜やっちゃった〜。何でこうなったかなぁ」
1431年5月30日。
ルーアン、ヴィエ・マルシェ広場。
多くの民衆が見守る中、1人の女性が高い柱に縛り付けられ今まさに火あぶりの刑にされる瞬間だ。
彼女の名前はジャンヌ・ダルク。
火あぶりを待つ中彼女は考える。
自分は人の為、持てる全て・・・いやそれ以上を尽くして戦った。
国の為に国と戦った。けれど結果は魔女の汚名と共に今死を迎えようとしている。
彼女は考える。自分はこんなにしたのに今は誰も助けてくれない。自分は特別な力などない。魔女でもない。
人というのは何と浅はかで愚かなんだろう。
自分達にないものを持っている者を排除しようとする。それが自分達の利益になるのだったら嬉々として利用するくせに。
人とは何と狡く下劣なものなんだろう。
自分は何故ここまでして命を懸けてまで何の利益も称賛も何もない事をしたのだろう。
自分が神でも聖人でもないのに。
自分はただの人だ。箒で空も飛べないし、海を歩いて渡れもしない。
しかし皆んなは魔女と呼ぶ。・・・いや皆んなはではない人間だ。
自分は人間ではない。
人間がそれを許してくれない。
人間でないのなら自分は何なのだろう。魔女ではないのは当然だ。
人間の定義、線引きは人間が決めるかというのか。
何と自分勝手な。そもそもこの争いも一部の人間の自分勝手なものから始まったものではないのか。
その先頭にいたのが自分。
自分から先頭に立ったのだから後悔はない。
というと嘘になる。
民衆が彼女を見る中彼女は考える。
これは彼女が火に焼かれ、燃え、朽ち果てるまでの彼女の思考の物語。
ジャンヌ・ダルクは考える。
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