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魔法騎士と召喚師の王女  作者: ジョナサン
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校内日常編 5

エインヘリヤルの組織を壊滅させて数日が経過した。これによりひと時の平和が訪れたが、学園内では依然として差別が蔓延ることになった。

幸村は三人の生徒を相手にするが・・・

後暦(こうれき)380年5月5日 アルヴァンジュ魔法学園 生徒会室

エインヘリャルの非魔法組織の事件から一週間が経とうとしていた。

幸村は三枝から褒賞を与えようと言い渡されたが断り、逆に姉である麗花に渡してほしいと頼み込んだ。

そして、エインヘリャルの壊滅の功績を三枝にして情報操作するようにも頼んだ。

「本当に良いの?幸村くん」

「ええ、私は使命を全うしたに過ぎない風紀委員ですから」

生徒会室で二人は会話していた。幸村は表立って目立つ事態は嫌う性格であり、自らは名誉も名声などに無欲である。

今回の件は三枝に全て与えることにした。

「では私はこれで・・・」

幸村はそう言い残すと生徒会室から出た。少し進んだところにフリートが壁にもたれて待っていた。

「本当に良かったのかよ?」

「ああ、これで良いんだ」

フリートは幸村こそが本当に力のある人物であることを他の生徒に知ってもらうチャンスだと思った。

しかし、幸村は褒賞を受け取らないことを聞くと半分は予想ついたものの、がっかりした気持ちが後に占めた。

「これが他の最上生に知れたら最下生を見下してしまうぜ?」

「そうなれば風紀委員が取り押さえれば良いだけのことだ」

フリートはガーランドとルーツの生徒間に溝が出来ることを恐れたが、幸村は『気にすることはない』と冷静に吐き捨てた。

「それよりも午後一の実習に集中しよう」

「そうだな。成功するまで居残りはキツいからな」


午後13時17分 魔法実習室

今は幸村の組が魔法実習室を使用している。課題は20分以内に魔法展開から魔法収束を素早く出来るかである。

他の生徒は四苦八苦しながらも課題成功して零弥も順番が回ってくると一発で合格した。幸村の番が来ると三回失敗する事態になるが本人は焦ることなく冷静に対処した。

「19分40秒。幸村さん、クリアです」

「ふぅ、やっと終わったか」

糺衣は横から監督していてクリアの言葉を聞くと幸村は疲れのため息を吐いた。

「幸村さんは実技が苦手だったんですね」

「まあ、そうだな・・・」

幸村は苦笑いしていると糺衣は小さく笑った。笑い終えると暗い顔して幸村に言った。

「幸村さんは悔しくありませんか?」

「え・・・?」

意外な人物からの言葉に幸村は驚きを隠せなかった。今までに軍からでも同じことを聞かれていたが大抵は自分の実力不足だと周りに言ってきた。

「エインヘリャルの組織を壊滅できたほどの努力や功績があるのに悔しくないのですか?」

幸村はどう言おうか悩んだ。下手に慰めでもすれば糺衣は間違いなく傷つくだろうと思考を巡らせていた。ステアでやっていることを実践してみた。

「糺衣、そんなものは着飾っても無意味なだけだ。何よりも大事にしたい人を思い続けることが最大の力になるんだ」

そう言って頭を撫でていると糺衣は顔を真っ赤にして倒れた。

「あぅ~・・・」

糺衣は目をグルグル回してると零弥がやって来てイタズラな笑みを浮かべた。

「幸村~♪一体何をしたの~?」

「少しな・・・」

幸村はやり過ぎたと反省するとお詫びついでに保健室に送っていった。

(霊視も厄介なものだな・・・)

幸村は糺衣が見えていたオーラに倒れたことに気に病んでいた。保健室に向かう途中で糺衣は目を覚ました。

「あれ・・・?」

「気がついたか」

糺衣が目を覚ますと幸村は謝ることにした。

「悪かったな。何だか変なものを見せてしまった」

「あ、あの、幸村さんのせいではありません!私が途中で倒れてしまったのが悪いんです!」

糺衣は慌ててしまい幸村のせいではないと言い繕うと僅かに笑った。

「それに幸村さんのオーラは何だかお父さんみたいな感じがして優しくて温かいです」

「お父さん、か・・・」

自らを人間兵器としか見ていなかった幸村は温かいという言葉は無縁であった。

あの日、全てが消し去ってしまった大罪は一生忘れることなく記憶から拭い去れるものではなかった。

糺衣を保健室に送り届けると糺衣は『落ち着くまで手を握っていて良いですか?』と聞かれたので、幸村は落ち着くまで手を握ることにした。


16時33分 正門付近

幸村は風紀委員の見回りとして部活動などで魔法の不正使用をしていないかを見て回った。

今回は何も無いかと思われたが三枝から全風紀委員に通信機が回った。

『正門付近にて何やら言い争いが起きています。付近にいる風紀委員は至急、急行してください』

「こちら一年の神田幸村。了解しました」

幸村は駆け足で現場となっている正門付近に向かった。到着すると周りには大勢の人たちが押し寄せてきており、奥には騒動の元凶がいた。

「だからお前たちのお陰じゃないだろう!」

「はぁ?なに言ってんの?これだからルーツは」

騒音の原因となっていたのはフリートの怒鳴りつける声であった。そしてガーランドの生徒が嘲笑う視線でフリートを見下していた。

幸村はフリートの近くに居た零弥に話しを聞くことにした。

「零弥、これは一体何だ?」

「幸村、ちょうど良かった。こいつらがあたしらに因縁つけてきたんだ」

幸村の存在に気づくと声を潜めて言った。

「具体的な内容は?」

「エインヘリヤルの組織を壊滅できたのは生徒会長なのを良いことに好き勝手にしてるわけ」

幸村は周囲を見回すとルーツの生徒があちこち居ることに気づくと呆れた溜め息をついた。

「・・・なるほど」

幸村は今までの光景と音声を渡されたデバイスに記録していて証拠品として提出する予定だった。

何にせよこの騒動を止めないと話しが進まないので間を割って入ることにした。

「フリート、大声を出すな。他に迷惑だろう?」

「幸村か、ちょうど良かった。こいつらが・・・」

「零弥から聞いた。落ち着け」

フリートの気を落ち着けようとするが本人は納得がいかない様子だった。

「おやおや、またルーツの生徒かい?」

ガーランドの生徒は幸村を見ると笑い声をあげて見下していた。

「他の生徒の迷惑となるのでここでの言い争いはご遠慮願いたいです」

「ルーツが風紀委員とは落ちたものだな」

幸村は冷静に場を落ち着けさせようと物腰低く言った。その態度といいルーツが風紀委員に居ることが気に食わないのか高圧的な態度で踏ん反り返っていた。

「ああ、そういえば幸村の名は聞いたことあるよ。あの小国の姫様の護衛をしているんだって?あの姫様も気の毒だね。人を見る目が皆無な上にこんな役立たずを護衛につけるなんて殺してくださいと言ってるようなもんだよ!あのへっぽこ姫様は!」

「お前・・・!」

フリートは殴りかかるのを我慢して睨み付けた。初めは冷たくあしらうだけだったが、その言葉を聞いた幸村は真っ先に潰してやろうと考えついた。

「待て・・・そこまで言うなら明日、試合形式でやろうじゃないか?」

「はぁ?何でルーツのお前とやらないといけないわけ?バカか?」

「ふっ・・・負けるのが怖いか?そうだろうな、負ければ見下すんだからな」

幸村は死神が取り憑いたかのように口元が釣り上がり不気味な笑いを浮かべた。

「こいつ・・・!そこまで言うならやってやるよ!泣かしてやるからな!」

「何人連れてきても構わないぞ?負けるのは貴様らだからな」

幸村は笑いながら話しを進めていくとガーランドの生徒は立ち去っていった。

後ろ姿が見えなくなるとフリートたちの方に向き直った。

「さて、今までのことを生徒会長や風紀委員長に伝えないと」

「だな。あいつらに俺たちの本当の実力を見せてやろうぜ!」

「はぁ~・・・あんたたち本当にバカね。あたしも混ぜてよ」

終始見つめていた零弥は呆れた半分ワクワクしていた。

幸村は今までの経緯を風紀委員長と生徒会長に伝えた。

「というわけで、明日の放課後に試合形式を行います」

「生徒会長の立場からして止めるべきことなんでしょうが、それでは相手も納得いかないでしょうね」

「三枝、ここは神田の実力を見たあたしたちが一番分かることじゃないか?」

亜莉沙は三枝の肩に手を置いてニヤリと笑った。三枝は諦めたと言わんばかりの溜め息をついた。

「そうね、幸村くんも存分に力を発揮してあげなさい」

「了解しました」

了解を得ると生徒会室を後にした。


19時22分

明日行われる試合形式の作戦を立てるため幸村の自宅にフリートと零弥がやってきた。相手はガーランドの生徒なのでそんなに時間が掛かることなく終わりを迎えた。

「で?3on3の対戦して最後まで立っていられたら勝ちで良いんだよな?」

「そのとうりだ」

3on3形式試合は元々は五大陸戦の6on6をアレンジしたもので、古くからある魔法騎士同士の決着つけるためにある方法である。一人の選手が多人数で攻撃することも認めていることあって、実力に差があると速く終わることもあるよくある話しだった。

「それで、相手は3on3のルールを守ると思うわけ?」

零弥はコーヒーを一口含んで疑問を投げかけた。

幸村は肩を竦めて返答した。

「まあ、勝てないと分かればギャラリーを使って潰してくるだろうな」

「おいおい、マジかよ・・・」

「ああ、マジだよ」

幸村は勝利の確信がありそうな笑みを浮かべていた。そう言うと幸村は立ち上がった。

「明日は3on3だが勝ったからと言って警戒を怠るなよ?周りに注意しよう」

「「OK!」」

フリートと零弥は親指を立て了解のサインを出した。

二人は幸村の自宅から家路に着いた。


後暦380年5月6日 午後17時26分

幸村は朝からルビー・アイギス二丁をショルダーホルスターに収めていて馴染んだかの調整も兼ねて拳銃の抜き差しの動作を姿見の前で繰り返し行った。

「随分気合が入っているな」

「当然ですよ」

亜莉沙は審判として同行することとなっており万が一にギャラリーが襲いかかっても抑止力になることは間違いないと考えていた。

「さあ行こうか」

「ええ・・・」

亜莉沙と共に裏庭に向かっていった。向かう途中でフリートと零弥と合流して裏庭に到着した。

着くと周りには大勢のギャラリーが詰め掛けていて賑わいを見せていた。

「どうだい?この大勢の観客を前にお前たちは負けるんだよ?」

「ふっ・・・それは貴様らのことだよ」

幸村は微笑を浮かべると相手も同じように勝利の笑みを浮かべた。

「それでは、ルールの説明する。試合は3on3。最後まで立っていたチームの勝ちだ。質問は?」

お互いに首を振ってないことを示した。幸村、フリート、零弥は武装デバイスをスタンバイ状態のまま合図を待った。

「始め!!!」

亜莉沙の開始の合図と同時にガーランドの生徒は魔法発動しようとするが幸村の魔法である、魔法爆散(ブラスト・ソーサリー)が真っ先に発動して相手の魔法式を焼き尽くした。

相手が魔法キャンセルして怯んでいる隙に腹部に拳銃を押しつけて小さく呟いた。

「これで終わりだ」

もう一つの魔法であるサード・トリビュートを発動し終えると相手の一人は(うずくまっ)て倒れた。

幸村がいつの間にか相手の陣地に移動していたのか分からなかった残りの二人は幸村に目がけて魔法発動しようとしたが、フリートと零弥が側面から攻撃したことにより注意が二人に向いた。

「うおぉぉぉぉぉぉ!」

フリートの得意とする物質強化魔法は自身の武装デバイスにも有効であるため、どんな魔法が発動されても武装デバイスが盾の役割を果たしている。

フリートは強烈なナックルを相手に食らわせると大きく吹っ飛ばされて木に激突した。

「ぐはっ・・・」

「これでこっちは終わりだな」

フリートは零弥の方に視線を向けると試合が終わっており、相手は右手の甲は必死に押さえていて痛みに耐えていた。

「勝者、神田チーム!!」

亜莉沙の終了の合図がされると他のルーツの生徒が三人に駆け寄って賞賛と祝福の嵐だった。

これが幸村の名が知れ渡るきっかけとなった出来事である。


試合が終えるとガーランドの三人の生徒は幸村に土下座して謝罪した。

「俺たちが悪かった!このとうり許してくれ!」

「許してくれだと?我らを泣かすのではなかったのか?」

「ひっ!許してくれ!」

幸村の気迫に圧倒されたのか怯えて目の焦点すら合わなくなった。

「姫様の侮辱した罪を贖ってもらうぞ」

ルビー・アイギスを生徒に向けてトリガーを引くと三人は粒子状となり消えた。

物質破壊(マテリアル・ブラスト)により物体などを粒子レベルまで分解すことが可能である。

人知れず消えた三人を気に止める様子もない幸村はその場を後にした。


19時22分 ヴァンフォート中心街

零弥とフリートは今回の決闘に勝ったことを祝して近くの喫茶店で祝杯を挙げていた。

「案外どうにかなるもんだね」

零弥はニッカリと笑うとカップをユラユラと回した。

フリートは暗い表情を浮かべてうな垂れていたフリートに零弥は声をかけた。

「どうしたの?いつものアンタらしくない」

「決闘の掟は知っているだろう?」

その言葉を聞いた零弥は笑うことをやめて神妙な面持ちで語った。

「知っている。決闘で負けた者は学園を去らなければならない」

決闘で負けた者は学園内で晒し者になることや魔法を使用する者としてのプライドが高いことからこの方式をとっている。もちろんそれは入学当初から伝えられているので不満はない分、学園を去らなければ恐怖があった。

「けど、あたしたちはそれを了承した上で入学して決闘したじゃない」

「一歩間違えれば俺たちは負けていたぜ?」

「それは、「幸村がいた」から?」

カップをテーブルに置くと零弥は冷ややかな声がフリートに向かった。冷ややかな声に僅かに殺気が混じっていたことを感じたフリートは言葉を震わせた。

「あ、ああ・・・」

「そこまで(おび)えなくても良いじゃない。そう思うのは当然よ」

零弥のいつもの陽気な笑いを見せるとフリートは顔を(ほころ)ばせた。

「いつか幸村に頼ることなく俺たちで勝つことできるかどうか・・・」

「あたしたちなら出来るよ。そうだ!ねえ、時間が空いたときに特訓するのはどう?」

「・・・特訓?」

零弥の突拍子もないことを言い出したことに呆然すると零弥はカップに入っていた紅茶を飲み干すと喫茶店から飛び出しって家路に向かってダッシュした。

「あ、おい!お前の分の金を払いやがれ!」

フリートは窓の外から叫ぶと遠くから「アンタが払っておいて~」と走りながら去って行った。

「ったく・・・」

フリートは渋々ながら自分と零弥の分を払って家路に着いた。


五大陸戦に続く

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