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魔法騎士と召喚師の王女  作者: ジョナサン
3/6

高校潜入編〈上〉3

いつ如何なる時代であろうとも切っても切れないものがある----それは差別。この学校では最上生の花冠(ガーランド)、最下生の(ルーツ)がある。ルーツに入れば入れ替わりが無い限り暗い未来が待ち受けている。何よりも全面的に下という虐めをも受けることになる。

本来なら幸村はルーツの立場では無いが、ルーツの立場を甘んじて受け取った。

後暦(こうれき)380年4月25日 午前8時35分 アルヴァンジュ魔法学園 本館前

幸村とステアは高校の制服に身を包んでいた。男子のブレザーは深紅と袖もとは薄めの黒色にカッターシャツはグレーとなっていて女子のブレザーは深紅でワンピースは灰色となっている。

本館前でステアは幸村を呼び止めて申し訳なさそうにして眼を潤ませていた。

「やはり幸村が新入生の祝辞に相応しいと思います・・・」

ステアは魔法実技と筆記試験で高得点をマークしており、自分ではなく幸村さまが相応しいと訴えていた。

「良いんだ。これは私に課せられた任務だからな」

涼葉に言われたことを実行したまでだとつけ足してステアの頭を優しく撫でた。

「それでも・・・!」

「ステア!」

ステアは大声を出しそうになったものの幸村に制止をかけられ行き場のない悔しさをワンピースの裾を力一杯握りしめた。

「この世にはどうしようも無いことが溢れている。君は栄誉ある花冠(ガーランド)、私は根っこ《ルーツ》だ」

右腕のブレザーに一点だけエンブレムが入る場所があり、ガーランドは八枚弁の花びらがルーツはエンブレムの場所には灰色で塗りつぶれていて何もない分け方がされている。

「っ・・・」

ステアは泣き出しそうになるが堪えて幸村は微笑を浮かべた。

「それに、たまには下から上を眺めるのも悪くない」

ステアに優しく言い聞かせるように慰めた。

「何よりもここでの私たちの立場を忘れていませんか?」

「そうでしたね、幸村・・・」

ステアは自分が小国の姫君だと言う立場に馴れていないのか幸村の名前を弱々しく呟いた。

「その調子です、姫様」

幸村はステアを優しく手を握ってフォローした。そうこうしているとチャイムが鳴り渡っていった。

「姫様、そろそろ入学式の予行練習です。私は後から参りますので」

「え、ええ・・・」

ステアを見送り本館へと姿が消えた後に幸村は辺りをうろつくことにした。

(アルヴァンジュ魔法学園・・・魔法が貴重とも言える人材を魔法騎士として育成するために建てた名ばかりの学校だが不思議と人数が多い)

幸村は本館の正面に位置する時計塔を眺めてぼんやりとしていた。途中に後ろを通りかかった女生徒二人が『やだ、あれルーツじゃない?』と蔑みの言葉を口にしたが幸村は相手にすることなく歩いていた。歩いている最中に一人の女生徒が幸村を呼び止めた。

「初めまして、貴方も新入生?」

声をかけた主は黒髪のロングストレートに翡翠の瞳をした女生徒で右腕には生徒会のつける腕章をつけていた。

「ええ、そうです」

幸村は軽い会釈をすると女生徒の右腕につけている魔法デバイスに気がついた。

「私は生徒会長の三枝由姫(さいぐさゆき)よ。困ったことがあれば何でも聞いてね♪」

(なるほど、十勇士か・・・)

以前に九重涼葉も十勇士と名乗っていたいたが、同じく十勇士の三枝由妃と名乗った女生徒は愛らしくウィンクした。

「ところで貴方の名前は?」

「自分は神田幸村です」

「神田、幸村くんね?」

青年の名前を一文字ずつ確認し終えると由妃は微笑んだ。

「ところで今は何をしていたの?」

「校舎を歩いていました」

二人は話し込んでいると由妃の後ろから女生徒が一人走ってきた。女生徒は小柄な身長で栗色のショートヘアにオレンジ色の瞳をしていた。由妃の真横に立ち止まり息を切らせていた。

「あら、実里(みさと)さん」

「ふぅ・・・探しましたよ会長。えっと・・・お話し中でしたか?」

「いえ、もう終わりましたので失礼します」

幸村は再度会釈をして立ち去った。由姫は喋り足りないのか呆然としたまま青年の後ろ姿を見送った。


午前10時30分 体育館

入学式の場所として二階建ての体育館で執り行われることになり、一階部分は花冠(ガーランド)の生徒、二階の観客席の部分は根っこ(ルーツ)の生徒が座ることになっていた。

(一階はガーランド、二階はルーツか)

幸村は左右に目線を行き渡らせて様子を窺っていた。基本的に座席の制限がなく自由に座れる形式なので適当な場所に座ると横から声をかけられた。

「あの、横は空いてますか?」

「ええ、どうぞ・・・」

声の主は黒髪のショートヘアに水色の瞳をした女生徒であった。青年の了解を得ると女生徒は隣に座った。女生徒は緊張気味に青年に話しかけた。

「とりあえずお互いに自己紹介しましょう」

「そうですね・・・」

「私は清水糺衣(しみずれい)と言います」

「私は神田幸村です」

「あたしは武宮零弥(たけみやれみ)。よろしくね」

清水糺依の隣に座っていた武宮零弥を名乗った女生徒は赤色のショートポニーテールに黒色の瞳をしていた。

「幸村さんですね?よろしくお願いします」

「こちらこそよろしく」

糺依は自己紹介を終えると握手を交わして挨拶をした。そうすると、生徒会長と新入生代表の祝辞が終わり外に出た。受け取った学生証をしばらく見ていると零弥が近寄ってきた。

「これからどうする?教室に行く?」

「ああ、そうだな。今は待ち人をしている」

手に持っていた学生証を胸ポケットにしまい零弥と糺依の方に体を向けた。

「もしかして新入生代表のステア・アテネさんですか?」

糺依はそう言うと幸村は予想外なことに驚いた。

「ああ、そうだ。よく分かったな」

「いえ、幸村さんから出ているオーラからしてそうかなと思っただけです」

幸村はそう聞いたとき全身に戦慄が走り出した。霊視(オーラ・ビジョン)はその人物がどのような人物なのかがオーラとして見える特性があるので恐怖の象徴として恐れられている。過去に殺害した経験のある人物がいれば禍々しい悪魔のオーラが現れることになる。

「ほう、オーラが見えるか、面白いな」

「あ、いえ、その・・・」

幸村は警戒心を露にして自分の秘密を悟られないように冷たく物言いをした。

(霊視(オーラ・ビジョン)か・・・これは厄介だな)

「あら、幸村くん。またお会いしましたね」

生徒会長の三枝が幸村に手を振って呼び止めた。その様子を見ていた他のガーランドの生徒は幸村をキツく睨んだ。

「生徒会長・・・」

「ん?何かしら?」

三枝は体を前屈みをして愛らしい仕草と表情を浮かべた。少し後からしてステアが出てきて幸村の元に駆け寄った。

「幸村・・・・・・」

「はい、姫様」

ステアは他の生徒が向けられている視線を心配していたが青年は怖じ気づく様子がないことを確認して安心していた。二人の会話を聞いていた三枝は二度ほど瞬きをした。

「・・・姫様?」

「そうです。この方は小国の姫様であります」

三枝は聞き間違えでないことに気づき思わず大声を出してしまった。

「えぇ!?何でこんな学校に姫様が!?」

「見聞を広めるためです」

ステアは冷めきった言葉で答えると他の生徒が一斉にステアを注目の眼差しを向けた。

「そして私が姫様を守る役目を仰せつかりました」

幸村はそう言うと周りにいた生徒がざわつき始めた。

「うそ、ルーツのくせに守るなんて・・・」

「お前みたいなルーツが偉そうにするな!」

ルーツの言葉に反応した三枝は目つきを鋭くして反論した。

「ルーツだから何だと言うのです?貴方がたは理解しようともせずに差別を口にしているのではないですか?」

幸村はキツい物言いをしたとき他の生徒は静かになり、この空気に耐えかねた幸村は三枝に一礼した後に立ち去った。

「あ、幸村さん・・・」

糺依と零弥も三枝に軽く一礼した後に幸村の後を追って駆け出した。ガーランドの物言いと視線に心配したステアはただ見守ることしか出来ない無念を抱いて幸村を見送った。


午後19時40分 アルベルト中央大陸 西側

九重涼葉から毎回地下に行ったり来たりして大変だろうと言って西側に住居を建てたから遠慮なく使えと差し出されたものである。

二人が使うにしても広すぎるほどの住居であるが、ステアは構いませんと言ったので使うことにした。

幸村は電子パソコンで自身のデバイスにプログラミングをしており、ステアは公私の区別をつけるべくメイド服を着ていた。

「幸村、コーヒーは如何です?」

「ああ、もらうよ」

そう答えるとステアはキッチンに向かいコーヒーの準備を進めた。

「幸村、本当によろしかったのですか?」

「何がだ?」

幸村は分かりきっているのか聞き返した。ステアは悔しそうに拳を握っていた。

「本当なら幸村は魔法も体術において勝てる者なんて居ないはずです」

「実技に体術は採点されないから無理だよ」

ステアの背中は幸村に預けて優しく手を握りあった。


後暦380年4月26日 午前5時20分 イースト・イバルディン大陸

早朝、幸村とステアは森にある八雲道場を目指して重力解除を発動したまま走っていた。

八雲道場に着くと同時に一人の坊主が幸村を攻撃するがガードしてそのまま組み手をやり続けていきステアはその様子を見学していた。

「ステアちゃーん」

ステアは声のする方向を見るが姿はなく、すかさず一人の坊主がステアの後方に回っていき頬を指で突いた。

「きゃっ!気配を消さないで下さい」

「んふふー」

坊主は薄気味悪い笑みを浮かべてステアの制服姿を眺めた。

「それが学校の制服か・・・良いねぇ、大人の色気が出てるね」

坊主は両手を気持ち悪く動かしてステアに触れようとしたがステアは困惑して微笑した。触ろうとしたとき幸村の手刀が坊主の頭上に振り下ろしたが両腕でガードして余裕の笑みを浮かべた。

「人妻に手を出そうとは不潔ですよ?彼女も困ってます」

「そんなつもりないんだけどな」

幸村は間合いを取って蹴りと手刀を繰り出したが全て防がれて坊主は今でも余裕の笑みを崩さなかった。

「いや~・・・本当に強くなったな。僕でも勝てなくなったよ」

自らの頭をペチンと軽く叩き軽やかに笑った。その表情を見た幸村は短い溜め息をついた。

「白々しいことを言う」

坊主と幸村の体術の組み手が行われて、幸村の攻撃を全てガードしたり流されたりして一撃は当てることは出来たが相手が一枚も二枚も上手であること改めて思い知らされて組み手は終了した。

幸村は全身土まみれと汗だらけで息を切らしていた。

「幸村さま、お疲れさまです」

ステアは純白のタオルを手渡して笑顔を浮かべていた。

「ああ、ありがとう」

タオルを受けとり汗を拭うとステアは全身土まみれの衣服を見てデバイスを構えた。

「幸村、今すぐ綺麗にしますね」

リングタイプのデバイスに魔力を注ぐと幸村の足元に魔方陣が浮かび上がり土まみれの衣服が何もなかったかのように綺麗になった。

「ありがとう・・・」

「それでは朝食に致しましょう」

ステアはあらかじめ用意していたお弁当を広げて舌鼓を打った


午前8時32分 アルヴァンジュ魔法学園 教室

幸村は自らの机の上に内臓されている電子パソコンを立ち上げていてキーボードを速打ちをしていた。その様子を見ていた糺依と零弥は不思議な表情を浮かべて糺依は何をしているのか訊ねた。

「幸村さん、何をしているのですか?」

「今後の授業カリキュラムを確認しているんだ」

「すげぇ速いんだな」

幸村は声のする方を向くと前の列にいる男が感心した声を出した。

「ああ、悪いな。今どきキーボードで入力するなんて珍しいからよ」

「慣れればこっちの方が速い」

幸村は速打ちを実践して使いやすさをアピールした。

「おっと、俺は名城(めいじょう)ヴィンフリート。フリートと呼んでくれ」

「私は神田幸村だ。幸村と呼んでくれ」

「OK。幸村、よろしくな」

フリートは気さくに応じて手を振った。そういうと横にいる零弥を指差した。

「幸村、こいつ誰だ?」

「なっ・・・いきなり初対面にこいつ呼ばわり?私には武宮零弥という名前があるの。覚えておいてね?いくら顔が良いからって調子乗らないでよね?」

フリートを挑発する言葉と笑みを浮かべて反論した。

「お前も面が良いからって調子に乗るなよ!」

フリートは席を立ち上がり大声で反論した。糺依は仲裁しようとするが聞く耳を持たずお互いに言い合いを続けた。結局、先生が教室に着いた途端に言い合いを中止してお互いの席に戻った。


午後12時33分 食堂

食堂には糺依、零弥、フリート、幸村の四人が相席して食事をしていた。話しの話題は得意な魔法についてだった。

「俺の得意な魔法は物質強化魔法だな。幸村は?」

フリートは強化系統の魔法が得意であると言って幸村にどんな魔法が得意なのか訊ねた。

「私は得意な魔法は無くてな。魔法技術に関連した仕事を目指している」

「え?魔法技師を目指しているのですか?」

糺依は半ば驚いていた。この高校に入学したのに魔法の一つを得意としてないことは異例中の異例だった。話しの途中でステアがやって来た。

「幸村・・・」

姫君らしく凛とした声で幸村を呼んだ。

「えっと・・・この人は?」

フリートは困惑しており幸村に誰なのかを聞いた。

「私の姫君だ」

「姫君!?」

フリートは持っていたスプーンを折ってしまい慌てふためいた。

「お昼をご一緒しても良いですか?」

「うん、良いよ」

零弥は座席の隣を空けて座るのを待っていた。

「それでは・・・」

「ステアさん」

座ろうとした矢先に他のガーランドの生徒が呼び止めて座るのを妨害した。

「ステアさん。向こうに座りましょう」

「え、でも・・・」

ガーランドの生徒は右腕にあるエンブレムを確認して嘲笑った。

「そんなやつに関わるなんてロクなことないよ」

「ちょっと、それどういうこと?」

零弥は立ち上がるとガーランドの生徒はバカにした物言いをした。辺りの立ち込める空気が悪くなるのが分かり糺依は仲裁するが聞く耳は持ってない。

「分からないのかな?これだからルーツのやつらは」

一塊となっているガーランドの生徒たちは嘲笑いフリートも立ち上がった。

「なんだと・・・」

今にも殴りあいが始まりそうな雰囲気でその事を察した幸村は面倒ごとが起きないようと立ち上がった。

「姫様。私はもう食事は終わりましたので、これで失礼します」

トレイを持ち上げて立ち去り、フリートと零弥と糺依も幸村の後を追って立ち去った。


17時38分 正門前

空模様はオレンジ色となり正門前ではガーランドの生徒がステアと一緒に帰ろうと言って幸村の同伴は拒否され、それなら幸村と一緒に帰るとステアは強く言ったがルーツと一緒はダメだと反対されて、お互いに険悪なムードが広がっていた。

「なぜステアさんが幸村さんと一緒に帰ってはダメなんですか?」

糺依は力強く声をだして涙ながらに訴えていた。

「ルーツと一緒にいることが間違っているんだ!」

幸村たちルーツに指を差して反論した。男子生徒はステアがルーツと一緒にいることを誰よりも嫌ってるので目の敵にしている。

「幸村・・・」

「姫様、謝る理由などないです」

「ええ・・・」

幸村の後方にはステアを庇うようにして立っていた。

「私たちは同じ新入生です。一体何に違いがあるのですか!」

「違いだと?それなら教えてやるよ」

ガーランドの男子生徒は右腕に持っていた霊銃に魔力を注ぎ魔法の打つ準備をした。フリートは腕に装着したガントレットに魔力を注ぎ攻撃の準備をした。

「はっ、それなら教えてもらおうか!」

フリートは男子生徒にめがけて突撃するが、途中で零弥が間に入ってきて金属製の小型杖メイスの武装デバイスで攻撃して両者の攻撃が不発に終わった。

「まあまあ、そう熱くならないの」

「お前、咄嗟に俺の腕を折ろうとしただろ?」

「さあ、何のことかしら?」

わざとらしく笑ってごまかして次のガーランドの男子生徒が魔法の発動しようとした。

「だめ!」

女子生徒の一人が男子生徒に向けて魔法の発動しようとしたが、男子生徒と女子生徒の魔法が砕けた。

「自衛目的以外での魔法は禁止していますよ?」

「風紀委員長の貴嶋亜莉沙(きじまありさ)だ」

生徒会長の三枝由姫と三嶋亜莉沙と名乗る人物がやってきて幸村は亜莉沙に近づいていった。三嶋亜莉沙はやや赤みのかかったロングヘアーに紫色の瞳をしている。今なおもデバイスは幸村たちに向けており魔法の発動を許さない視線を浴びせていた。


「すみません。ちょっとした見学のつもりがこうなってしまって」

幸村は貴嶋に接近していき事の経緯を説明した。一同は幸村の行動に驚いてその場から動こうとはしなかった。

「見学だと?」

貴嶋は眉間にシワを寄せて疑った。

「はい。湯川一門の乱射(マルチシュート)は有名でしたから実戦形式で見学しようと皆で決めたました」

「では、あの女子生徒の魔法はどう説明するつもりだ。明らかな攻撃魔法だが?」

貴嶋は女子生徒を見てデバイスを向けた。

「あれは閃光魔法ですよ。それも威力を最小限に抑えたものです」

「ほう、君は展開された魔法式が分かるみたいだな」

「魔法実技が苦手ですが分析は得意中の得意です」

「そして、嘘も上手だな」

目を細めて幸村に警戒心を向ける。

「嘘だなんて滅相もないですよ」

薄い笑みを浮かべて嘘ではないと事の収束を推し進めようとした。それを察した三枝は間に入ってきた。

「本当にただの見学だったのよね?」

「え、ええ・・・」

本当に気づいていたのか幸村は動揺した。

「それなら良いじゃない亜莉沙。生徒同士で教えあうのは違反ではないですが、以後気をつけて下さいね」

三枝は亜莉沙に満面の笑みを向けると短い溜め息をついた。

「生徒会長はこう仰せだ。今回は不問とする」

生徒会長と風紀委員長が立ち去ると男子生徒の一人が幸村を睨んだ。

「助けられたとは思ってないからな」

「別にそんなつもりはないから安心しろ」

「僕は湯川修一(しゅういち)だ。ステアさんは僕らと居るべきなんだ」

修一はそう吐き捨てて正門を出て帰路についた。修一の姿が見えなくなると一人の女子生徒が幸村に駆け寄った。


「あの、ありがとうございました」

女子生徒は多少緊張してモジモジしていた。

「いや、それは良いよ」

本気で関わりたくないと言わんばかりの空気を出してその場から立ち去りたいと思っていた。

「あの、私は光海(みつみ)ゆりかです」

光海ゆりかと名乗った女子生徒は茶色のショートヘアに黄金色の瞳をしていて身長は見たところ150センチ前後の小柄な体をしている。

「私は北川友理(きたかわゆり)だよ。よろしくね」

ゆりかの後ろにいた女子生徒は前に出て紹介を済ませた。少女は黒髪のショートヘアながら癖毛があちこちあり、瞳も純粋な黒色をしている。

ゆりかはやや緊張しながら幸村に話しかけた。

「あっ、あの・・・」

「・・・ん?」

少女は顔を赤らめて幸村に話しかけようとするが緊張して中々声が出せずにいた。見かねたステアは幸村の代わりに応対した。

「何でしょうか?」

「道中の帰り道ご一緒しても良いですか!」

少女はやっとの思いで声にしたが、予想外な言葉で一同は沈黙した。


18時12分 ヴァンフォート

アルベルト中央大陸の西側に位置する首都で人の往来や物流が盛んな場所でありアルベルト大陸の全てに物資を行き渡らせている拠点である。

幸村たちは繁華街を通っていき帰路につくとした。途中で零弥は幸村にある疑問をぶつけた。

「ねぇ、幸村は魔法技師の志望と言ってたけど、デバイスのメンテナンスは出来るの?」

「まあ、ある程度のメンテナンスと魔法追加は出来るが」

そう言うとフリートは零弥のデバイスを好奇な眼差しで見つめていたことに気づいて小型の杖を取り出した。

「じゃあ、これのメンテナンスはどう?」

「無理。そんな複雑な武装デバイスを下手に弄って壊したら大変だ」

「へぇ・・・これが武装デバイスだと分かるんだね」

金属杖をユラユラと辺りを泳がして袖の中にし舞い込む。

「それ自体は中身が空洞だから打撃系の攻撃に使えるな」

「じゃあよ、相手に殺傷力ないんだな?」

フリートはやや困惑して幸村に訊ねた。幸村の代わりに零弥が回答を出した。

「いや、魔力とイデアを注いだら人斬りの武器になるよ。魔力だけなら金属剣との勝負が出来る」

「そうだろうな・・・」

幸村は構造を把握していたので驚くことなかった。ゆりかと友理は途中で別れて、糺依、零弥、フリートもそれぞれ帰路についた。


幸村とステアは誰かにつけられていることに気がつき、誰もいない裏路地に歩みを進んだ。行き止まりに差し掛かると幸村はルビー・アイギスを構えた。

「最初から分かっていたんだ。早く姿を現したらどうだ?」

壁際に誰かがいるのに気がつくと壁際からナゾの人物が飛び出し魔法を発動した。

(氷系統の魔法・・・)

幸村は魔法を発動させる前に魔法爆散(ブラスト・ソーサリー)を発動すると、相手は魔法の発動に失敗した。

魔法爆散(ブラスト・ソーサリー)は魔法式を読み取り、数字配列の一部分を焼き尽くして魔法キャンセルするものである。数式に同一の数字が存在するか或いは同一の数式に同じ数字が含まれていた場合、魔法発動することが出来ない仕組みになっている。

修復するにしても高等技術の魔法を使用しないと直せないためほとんどの場合は魔法が使用が出来ない。

魔法の発動が妨げられた人物は加速魔法を使用して逃走した。幸村も後を追うべく自己加速魔法を使用した。

「待て!」

幸村は必至に後を追いかけると相手の腕にあるリストバンドに目がいった。リストバンドの中央は白色に左右は青色の配色となっている。それを見た幸村は後を追うことを中止した。

「幸村さま、一体なにが・・・」

ステアも幸村の所に駆け寄ると棒立ちの状態になった。

「いや、何もなかったよ。心配かけて悪かった」

幸村はステアの頭を優しく撫でて家路に着いた。


20時45分 幸村宅

幸村はテレビに備えつけている通信機を利用して涼葉に今までの経緯を伝えた。

『そうか、引き続き潜入調査を続行するんじゃ』

「了解しました」

幸村はテレビ越しに敬礼して相手が通信機の解除をしたのを確認して後に解除した。

「ふぅ・・・」

ソファーに体を預けて一息をついた。通話が終了したことを確認したステアはリビングに入ってきた。

「幸村さま、夕飯にしましょう。本日はどのような格好にしましょう?」

ステアはゆっくりと一回転して満面の笑顔をしていた。

「君はどんな格好しても似合うよ」

ステアの腰に手を回してぐっと引き寄せた。そうするとステアは赤面して顔から湯気が出そうになり顔を下に向けた。

「もう幸村さまは・・・」

どことなく嬉しそうに呟いた。幸村はステアの表情を見て微笑を浮かべて反応を楽しんだ。

「さあ、明日も早いから早速夕飯にしよう」

「はい♪」

夕飯を済ませて早めの就寝を取ることにした。


下に続く。

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