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Loop6

遅くなってしまい申し訳ありません!

多分これからものんびりと更新していくと思うので、気長に待っていただけると嬉しいです。

「ルゥーインに会った?」



あのあと、結局その場にいるのに居た堪れなくなってカントの下へと帰ってきてしまった。

あんなにも啖呵を切って出て行ったのにも関わらず、特に理由も聞かず普通に家へと入れてくれた。

正直いって、最初はなにコイツって思わなくもなかったし、同時に優しいんじゃないのかとも思った――そう、あの一言がなければ。


〝結局戻ってきたのですか〟


あの呆れたようでやっぱりと言わんばかりの声色がとてもとても――むかついた。イラついた。



「そう。なんか不機嫌な対応をされ、て……」



そして私は、先程あった一部始終を説明して今に至るのだが。

ちなみにカント曰く、「彼」の名前は「リト」というらしい。真名は見た目通り〝黒兎〟。

真名についても少しだけど教えてもらうことができ、なんでも真名を持っている者のほとんどはそれを忌み嫌っているがそれでもそれの遂行のため奮闘している……的なことだった気がする。


正直言ってそれ以上に聞きたいことがあったから軽くしか聞いてなかったのだ。

多分それを言ったら怒られるまでいかなくてもぐちぐちと小言を言われるのが関の山な気がするからここは口をつぐむとして。



「私、嫌われてるのかなーと思ってさ」



いまの私の知る限りにおいてはなにも不快にさせるようなことはやっていないと思うんだけどなあ……。

いや、記憶を失う前の私がなにかしたかもしれないけど。

いやいや、でもそれの尻拭いをするのが私とか嫌なんだけど!?


すべてが憶測で確証もなかったけれど、もしそれが本当だとしたらかなりのとばっちりだった。


いくら自分が悪いことをしたからといって、記憶にないものを深く反省して更生するなんて無理なことだと思う。

そりゃあできる人もいるかもしれないけど、でも、それは本当にごく一部の人だ。

記憶にないことを反省したとしても、絶対にそれは心に深く刻み付けられることはなく知らず知らずの内にまたやってしまうのがオチだと私は思っている。



「なにかいけないことしたのかなーって……」


そこで、ほんの少し期待を込めてカントのほうを見やる。

すると、そこには――。


「…………」


足をかけて優雅に椅子に腰掛けて読書をするカントの姿があった。



「ってコラコラコラ!! ちょっと!!」



反射的に先程のしおらしい雰囲気などまるでなかったかのように声を張り上げてカントにつめよる。

するとその反応が気に入らなかったのかなんなのか、どこか気ダルそうに本から目を上げ片手で首元にまで落ちた髪をかき上げて見せた。


先に言っておこう。

私は短気だ。


……多分。



「ふざけないでよ! アンタから振ったんだから最後まで話を聞くべきでしょ!?」



人の話くらい普通に聞けよ!

親や周囲の人たちから小さい頃から普通なら言われるでしょ。〝人の話を聞くときは相手の目を見て話さなくてはダメですよ〟って。特に母親から。

もし両親がいなかったとしても、……、……?


思わず首を傾げる。


私は、なにを考えた?

両親が……えっと、両親が?



「――?」


「どうかしましたか? 私の読書の邪魔をしたのですから、それに見合った反応が返ってこないと困るのですが」

「はあっ!? だからそっちが聞いてきたから言ったんじゃん! ……なのに、読書なんかして」


少しは私の話を……。


「別に読書くらいいいじゃないですか。心の狭い人って嫌われますよ?」



ここでカチンときた私は、きっと悪くないはずだ。

気付けば足で椅子の脚を半ば思い切り蹴っていた。


だけど、そんなこと意に介した風もなく視線を本から外さないカント――が座る椅子の脚を数回蹴り続けていると、さすがに無視できなくなったのか半ばうんざりしたような表情でこちらを見てきてくれた。


よし、粘り勝ち。



だが、その際にものすごく心の底から吐き出したかのようなため息を吐かれてイラっときたのはまた別の話だ。





ようやく本から目を離して私と会話をする気になってくれた(多分)のカントの表情は、誰がどう見ても不機嫌な表情だった。

だけど、後悔などという暗く後ろめたい感情は湧くことなく、ただ達成感だけが私の心を占めていた。



「さあっ、早く教えて!!」



何故だかはわからないけれど、私はあの子と少しでも仲良くなりたかった。


運命というやつなのか、それともあの独特のお人形さん具合に惹かれたのかどうかは知らないけど、それでも仲良くなりたいという気持ちだけは本物だった。これはいくら記憶をなくしていたとしても変わりようのない事実で、それをこれからも大切にしていきたいし、どうせなら仲良くなりたいと思った人のことは少しでも知りたいと思う。


……仲良くなるタイミングを完全に失った今だからこそ思うことだけれど。



「なにを、」

「ああもうっ、わかってるでしょ! ルゥーインのことだよ、あの可愛いくて人見知りな女の子のことだよ!!」



そうやって語尾を荒げて言うと、「あぁ」とだけ呟き今度こそ話してくれると思った。



「そうやって他人にばかり頼っていないで、少しは自分で歩み寄ってみたらどうですか?」

「!?」

「きっとそちらのほうが、あの子も喜ぶ……」



……?



ぽそりというレベルなくらいに小さな声でよくは聞き取ることができなかったけれど、なんとなくなら把握はできた。


だけど、それに対して私はどうすればいいのかわからなかった。


私はあの子のことを何一つとして知らなくて、正直言って仲良くなれるかどうかも曖昧だ。

あれだけ嫌われたような態度を取られて、なおかつそれでも仲良くなれると豪語できるほど私の心臓は毛深くなんかないし、底抜けにポジティブでもない。



「というわけで、ルゥーインの元へと行ってあげてはどうですか?」


「はっ?」



なにが「というわけで」なのか。

正直私にはちんぷんかんぷんで、ぶっちゃけカントの中だけで図式が完成されてそれを提示されただけのように取れなくもない。むしろそうとしか取れない。



「そうですよ! やはり、知りたいことはご自身の力でなんとかしなければ」



満面の笑みで両手を合わせてそう言い放ったセリフはどう考えても嘘くさくて。まさにいまさっき思いつきました感が物凄くするが、一理あるような気がしなくもない。

それに、少ない時間ではあったけれど、こうなったカントをどうにかできるような力は私にはない気がする。


そうやって考えながら、恨みがましくカントに視線を向ける。

すると、やっぱりカントは満面の笑みのままで口を開いた。今度は右手を人差し指だけの形に一本だけ立てた状態で。



「ルゥーインの居場所なら、きっとあの人に聞けばわかると思います」



その笑顔の胡散臭さは、きっと記憶が戻ってからも変わらぬことなく私の心に留まり続けるだろうなと、私はその人物が誰なのかを耳で聞きながら頭の片隅で思った。

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