折り鶴
「なぁ佐藤、学校祭ってどう思う?」
「どう思う?まぁ、ダルいかな」
「おいおい、健全な男子高校生がそれでいいのか?」
「いや、健全な男子高校生だからこそダルいんだろ。女子は必死だが、男子としては正直どうでもいい」
「重点を置く場所が違うからな」
「と言うと?」
「女子は最優秀賞を狙ってるだろ?だから他クラスに負けると泣くし、勝っても泣く。女子って面倒だな。だが、男子は自分達がいかに楽しむかを重要視するわけだ」
「なるほどな、まぁ確かに…」
「佐藤、お前…さっきから何で一人で喋ってんだ?」
「よぉ田中!これは叙述トリックってやつかな?読み手はまさか、さっきの会話が俺一人だとは思わなかったろ?」
「何のことだかよくわからんが、他人から見たら相当危ない人に見える。やめとけ」
「一応主人公だしな。さて、今日は何するかな」
「学校祭の準備だ。ほら、お前も手伝えよ」
「何するんだ?」
「山田が壁の装飾を作ってるから、その手伝いだな」
「えぇー!?面倒だなぁ、どうやって作んの?」
「折り紙で鶴を作ればいい」
「鶴ってどうやって折んの?」
「そう来ると思って、俺がお前の指導役に当てられた」
「よし、じゃあ早速教えてくれ」
「お前はバカか!!なんで出来ねぇの!?」
「お前の教え方が悪いだろ!なんだよ!『美しいカーブを描くように折る』って!」
「お前にはこのカーブが美しく見えないのか!!」
「美しい美しくないの問題じゃねぇよ!教え方が抽象的過ぎるんだよ!」
「じゃあ具体的に言えばいいのか!?紙右端の角を摘まんで、極めて美しい三日月のような曲線を描くように折ります、これで満足したかよ!!」
「なんもさっきと変わってねぇよ!むしろなんかムカつく!もう少し抽象的な方がまだ可愛げあるわ!」
「わかったよ!!右端を摘まんで曲線描けボケが!!」
「中傷的に抽象的な説明は求めてねぇよ!もういいよ!お前の見て覚えるから!」
「最初からそうしろっつーの!!」
「よし、じゃあ折るから真似しろよ」
「任せろ田中、真似するのは得意なんだ」
「おい、全然付いてきてないどころか、もう俺作り終わったぞ」
「勝手に始めんなよ!もう一回!」
「よし、準備出来たか?」
「おう、始めてくれ」
「よーい、どん」
「まずは…って速ッ!なんでもう出来てんの!?」
「いつも通り作っただけだぞ?」
「速いわ!お前二秒くらいしかかかってなかったじゃねぇか!」
「お前もこのレベルまで達してもらうぞ」
「嫌だよ!そんな人外な速度で鶴折るの!速くて見えないからゆっくりやってくれ!」
「お前そんなことじゃ世界は取れねぇぞ!!」
「取る気ねぇよ!つーかなんだよ世界って!」
「何ってお前、折り紙スピードコンテスト鶴部門のことに決まってるじゃねぇか」
「なんだそれ!初めて聞いたわ!」
「一般常識だぞ、ウチのクラスの加藤でも知ってる」
「自分の名前も漢字で書けないあの加藤が!?」
「あぁ、オリンピック並みにメジャーだ」
「マジで!?」
「ちなみにお前の分も選手登録してあるからな。頑張れよ」
「マジで!?大会いつだよ!?」
「明後日だ」
「連絡遅すぎるだろ!」
「仕方ないだろ、加藤が佐藤には言うなって…」
「なんで!?つーか加藤と佐藤って文面だと紛らわしいな!」
「お前が佐藤なのが悪い。改名しろ」
「俺一応主人公なんだけど!?」
「田中ベルゼバブなんてどうだ?」
「田中だとお前と被るわ!つーかベルゼバブってなんだよ!」
「カッコいいだろ?ちょっと名乗ってみろよ」
「え?……どうも、田中ベルゼバブです」
「よし、折り紙やるぞ」
「おま、スルーってあんまりだろ!」
「いや、だっていきなり田中ベルゼバブとか言われても…」
「お前がつけた名前じゃねぇか!」
「遊んでる場合か!!」
「俺が悪いの!?」
「お前は大会控えてんだから!!練習だ練習!!」
「鶴折れない奴にいきなり折り鶴大会出ろってのが無茶だろ!格ゲー初心者に最高難易度で押し付けるぐらい無茶だわ!」
「忘れたとは言わせねぇ!!お前それ俺にやったじゃねぇか!!」
「そうだっけ!?」
「あれは忘れもしない小2の夏…」
「根に持ちすぎだろ!」




