第十四章 聖夜(後)
後ろを振り向く・・・
男が何か持っている
アニメのキャラクターの
フィギュアだ
首と左腕が取れている。
その男が不気味に笑う
僕はその男に見覚えがあった
小柄でメガネを掛け
長髪で細身の男・・・
通勤ラッシュの時の男だ
あの時、転倒した時に
その人形を
壊してしまったのか?
僕はその場に倒れこむ
背中には包丁が刺さっている
そこには大量の鮮血・・・
小柄な男は
その場にボケーと
立ち尽くしていた
女性の悲鳴と
人々のざわめき
が聞こえる・・・
意識が薄れていく・・・
目も霞んできた
手足の感覚もない
僕は何か喋ろうとした
しかし口から出るのは
ドス黒い血・・・
言葉に出来なかった
「このまま死ぬのかな」
脳裏をよぎるのは
『死』
以前は
死にたかったくせに
死のうと思ったのに
今は
死ぬのが怖い
死にたくない
生きたい!!!
待っている人がいるから
彼女が待っているから
真弓がそこで
待っていてくれるから
僕は真弓のところまで
行かなければならないんだ
身体は、もう動かなかった
すごく寒かった
だけど
涙は止まらなかった・・・
言いたいこと
沢山あったのに
何も喋れない
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・・・」
「・・・」
・・・・・・・・
関東地方は
夜から雪になっていた
街も薄っすらと
雪化粧をしていた・・・
真弓は窓辺の席に座り
ひらひらと舞い落ちる
雪を見ていた・・・
完