第十一章 疑惑
疑心暗鬼に陥っていた・・・
もう人間は信じられなく
なっていた・・・
真弓は、あの雨の日に
優しくしてくれたし
感謝している
だけど・・・・・
なんでも悪い方へ
考えてしまっていた
考えてもしょうがない
お礼だけ言って
帰ってこようと思った。
約束の日
待ち合せ場所に行くと
真弓はすでに、そこに居た
久美の時は
こんな事は無かったので
正直焦った
食事はファミレスに入った
僕は助かるんだが
ここで良いのだろうか?
この間のお礼をし
あの日
言えなかったことを
全て話した・・・
久美のこと
会社をクビになったこと
もう、お金は無いこと
包み隠さず全部話した・・・
真弓は真剣に
聞いてくれた
涙を流してくれた
こんな僕のために
泣いてくれた
だけど
何も無いと分かれば
もう連絡は
してくれないだろう
食事が済んで
レジに向かうと
強引に真弓が
会計を済ませてしまった
お金を出そうとすると
「無駄遣いするんじゃないの」
と言って出口に向かってしまった
店を出て謝礼の
お金が入っている
封筒を渡そうとしたが
「いらない」と
怒られた。
仕方が無いので
礼を言って
別れようとした時
「次どこ行く?」
「観たい映画あるんだ行こうよ!」
意外な言葉だった
何もない僕からは
逃げて行くんだろうと
思っていた。
戸惑っていると
「こっちこっち!」
と手を引かれた。
女性と手をつなぐのは
初めてだった
柔らかくて細い手だった
僕は混乱していた
この日は映画を観て
お茶を飲んで帰った
結局、僕は
1銭も払っていない
お金を渡しに行って
逆にお金を使わせてしまった
馬鹿なのか僕は
その時
真弓から
メールが来た
「今日は楽しかったよ。
また遊ぼう!」
こちらから先にしなければ
いけないメールだった
僕は何をするにも
抜けている・・・
だけど
今日は本当に楽しかった
こんな感覚は
久美の時には
感じたことは無い
そう思いながら
夕暮れの街並みを
電車の窓から見ていた・・・